心の変化
ラキュレスは無表情だった。何も考えていないような、そんな目だった。
「コイツら、しぶとい。」
ラキュレスは何も考えていないような死んだ目で、疑問に思った。
(なぜ、人間は私たちに勝てないと分かっているのに、向かって来るのか。)
そう考えていた。
「もう少しで、弱そうな方のドラキュラ、やっつけられそう!」
1人の女性はリングに向かってそう言った。彼女は武器を持って戦っていた。子供も戦っていた。その女性はリングに一太刀浴びせようと向かった。
しかし、もうひと足のところでリングに見つかり、逆に一太刀浴びせられた。
響は笑った。確信を持った笑みだった。
「それは、とっても簡単なことだよ。」
響は言った。
殺し屋エドガーは蓮を連れて、逃げる準備を着々と進めていた。彼は何かを畳んでいるようだった。パラシュートだろうか。
しかしそれよりも、不可解なのは蓮だ。彼女にはいつのまにかガスマスクのような物をつけられていた。煙を吸わないようにするためだろうか。しかし、エドガーがつけたとしか考えられない。
(何で響は笑ってるの。)
みつきは響に聞いたことを後悔していた。響が、自分の心を見透かしているような笑い方。自分が響に聞いた時の表情を想像するだけで、嫌気が差していた。
「もういい、聞かなかったことにして。」
みつきはそっぽを向いて言った。響は嬉しそうだった顔が元の顔に戻った。
「言っちゃダメなの?」
響は言いたげな顔をして聞いた。みつきは響の言葉を返さず、そっぽを向いたままだった。何か考えているようだった。響は続けて言った。
「まあ、言ってもいいでしょ。やるべきことは、ただ一つ!人を助けるだけだ!」
自慢げに響は言った。ずっと言いたかったのだろう。自慢げに言った割に、みつきにはあまり響かなかった。響かないというより、意味が分かっていないような感じだ。
「あ、殺し屋どこか行っちゃうよ。」
みつきの言葉に響は振り向いた。エドガーは窓を割ろうとしていた。
響は立ち上がろうとしたが、出来なさそうだった。
みつきは考えた。
(何で人を助けるの。自分の身は自分で守るのが普通でしょ。でも…)
みつきは頭がいっぱいで、周りを見ていられなかった。機体についた火は燃え、響は立ち上がれず、エドガーは逃げようとしている。みつきは選択を迫られていた。何もせずに自滅するか、それとも醜く足掻くか。
みつきは動いた。エドガーの方に向かった。その目には殺意があった。
「蓮ちゃんを返しなさーい!」
みつきは少し変わったように見えた。人のために戦うのはとても珍しかった。
(アイツは銃を持ってる。だから、銃を向ける前に、仕留める!)
とても単純な攻め方。だが、その方法は理にかなっている。エドガーとみつきとの距離はそれほど遠くない。そのため、立ち止まらずに走れば、銃を出すよりも早く辿り着ける。みつきは小さい時から短距離走が得意だったため、そこまで難しくはなかった。
みつきはエドガーの銃を奪って遠くに投げ飛ばした。そして蓮を掴もうとした。しかしあと一歩のところで逃げられてしまった。
「くそ!俺が怪我をしていなかったら。」
響は自分を責めた。
みつきは割られた窓から、山の中に降りていくエドガーのパラシュートの様子を見ていた。
「あ、みつき危ない!逃げろ!」




