其は肉に非ず
そこに君ぃぃ……
ポイントをくれぇぇ……_:(´ཀ`」 ∠):
ブクマをくれぇぇ…… _:(´ཀ`」 ∠):
感想をくれぇぇ…… _:(´ཀ`」 ∠):
鼻歌交じりに階段降りて。足を滑らせ頭蓋を割った。
よほど酷い打ち方をしたのだろう。痛みすら感じなかった。
そして気づけばここにいた。三途の川の河原にて、ただ茫然と対岸を眺めていた。
帰りたい。
ただただ、向こう側に帰りたい。
自分の死に思うことはあるけれど、それ以上に母が心配だった。
母は女手ひとつで私を育て、憧れの大学へ進学させてくれた。それだけではない。
就職後もうざったいほど連絡を寄越し、遠い田舎から不慣れな飛行機に乗ってよく会いに来てくれた。
私を愛してくれていた。
そんな母に思春期を引きずる私はありがとうの一言も言えずにいたのだ。
だから、帰りたい。ありがとうと伝えたい。
しかし、どうすればいいのか。対岸は遥か彼方。目に見えないほど遠く。
ここに橋などあるわけもなく、噂の渡し船など見当たらない。
あるのは狂ったように荒れた川に石ころだけだ。
泳いで向かうのは無謀だろう。どこに行くか分かったものではない。
そこで私はひらめいた。石橋を作ろうと。
地面を掘っては土を集め、砂利を砕いては砂にし、手ごろな石を研磨した。
それをこつこつ形にしていく。
土を掘る。砂利を砕く。繋ぎを作る。石を積む。
土を掘る。砂利を砕く。繋ぎを作る。石を積む。土を掘る。砂利を砕く。繋ぎを作る。石を積む。土を掘る。砂利を砕く。繋ぎを作る。石を積む。土を掘る。砂利を砕く。繋ぎを作る。石を積む。土を掘る。砂利を砕く。繋ぎを作る。石を積む。土を掘る。砂利を砕く。繋ぎを作る。石を積む……。
永い、永いときが過ぎ、意識はとうに擦り切れて。それでも作業を止めることはなかった。
母に会いたい一心で手を動かした。
しかし。一歩届かない。
黄泉の世界、その全てを費やせど対岸に届くことはなかった。
何もかもが消えた虚空にて、慟哭だけがあった。涙だけがあった。石橋を叩く、血の滲んだ拳があった。
私は私でなくなって。それでも残る何かは、きっと私を私たらしめていた。それ故に、私は泣く。鳴くことができた。これが私なのだ。この想いこそが私なのだろう。
ならば。ならば、それ以外は私ではない。
この髪は私ではない。
この瞳は私ではない。
この爪は私ではない。
この体は私ではない。
ああ、なんと簡単なことか。材料ならここにあるじゃないか。
かくして橋作りは再開し、残りの一歩をあっさりと埋めきった。
ああ、ようやくこれで母に会える。
眼窩は暗闇を宿し、頬の肉をそぎ落とし。
四肢をちぎって、腸を掻き出して。
ようやく会える。母に会える。
芋虫のように這いずって、血の道を描きながら帰路に就く。
待っててね、お母さん。愛してる。