086 弐章 其の参拾玖 川辺の死闘
ガイオーのブロードソードがマルボを襲う。
「僕を狙うのは……分かってんだよっ!」
マルボが走りながら杖を振りかざす。
後方の超高熱領域から熱線がガイオーを貫こうと襲う。
だが、ガイオーはマルボが振りかざした杖で察し横に飛んで熱線を避ける。
アキレス腱がキレているガイオーはすぐにはマルボを追いかけられそうもない。
勢いを止めずマルボはセッターに向かって走る。
「連発は威力が落ちる。走りながらも威力は低い。更にこれは一人分の魔力だと威力は低い。だけど瞬発魔力とシャウト効果で上乗せはある!勝算のある賭けだっ!」
呟きながら走るマルボは、大きく息を吸い杖を振りかざす。
またもマルボビームが発射されメガナーダを直撃する。
だが、メガナーダは無傷だった。
しかし、マルボは続けて次の魔法を唱えた。
「サンダー・ブレイクッ!」
上空より雷がメガナーダに落ちた。
メガナーダは一瞬怯む。
マルボは倒れているセッターのそばに辿り着くと、回復魔法を掛けた。
メガナーダが剣を振り上げる。
「守れっ!!」
マルボは回復魔法を掛けながら結界魔法を張った。
結界魔法にはシャウト効果を乗せた。
「マルボ君ごめん……」
倒れたままセッターが答えた。
「ハァハァ…セッター…結界魔法の魔法陣に精霊の強化魔法を!」
息を切らしながらマルボはセッターに言った。
「ノーム!頼む!」
セッターのブレイブハートから土の精霊ノームが出現しマルボの結界魔法を強化する。
メガナーダの振り下ろす剣は塞がれたが、メガナーダは4本の剣で連撃を仕掛けてきた。
結界魔法にヒビが入っていく。
「ハァッハァッ、何てパワーだ…強化した結界にヒビを入れるなんて…でも、まだ、手はあるっ!」
上空の超高熱領域が圧縮され小さな玉になる。
「ラーク!伏せろ!」
ラークはマルボの声に反応してマティを抱えて地面に伏した。
「いけぇぇぇぇ!」
マルボの叫び声と共に、小さな玉はメガナーダにぶつかると同時に大爆発を起こす。
「ぐぉぉ……」
メガナーダは爆炎に包まれた。
たまらず川に飛び込み炎を消そうとする。
「セッター…動けたら魔法陣に精霊の強化魔法を…」
マルボは息を切らしながら水中のメガナーダに魔法陣を拡げる。
メガナーダを中心に水が凍っていく。
「凍らせて閉じ込めるのか!流石!」
セッターの精霊達がマルボの魔法陣を強化し瞬時に川の水が凍っていく。
メガナーダは首から下が氷で埋まって身動きが取れなくなった。
「ふぅ…ラークは…」
マルボがラークを見ると、ラークはマティの胸に顔を埋め左手は尻を抱えていた。
「きゃーっ!おめえ!やっぱりオラの体が目当てだったかぁ!?」
マティは顔を真っ赤にさせて叫ぶ。
「ち、違う!俺はお前だから!」
ラーク→俺はお前を助けたいから。
マティ→俺はお前の事が好きだから。
「なっ!おめぇ、そんな事ばっか言ってると……」
マティの顔がさらに赤く染まる。
「人が生死を賭けている時に何ラッキースケベ堪能してんだ!ラーク!!」
マルボが怒鳴る。
「ちょ、お前やれって言っただろっ!」
「あぁ?人のせいにすんのか?」
マルボは目を細めて睨みつける。
ラークは涙目になって絶望した。
マティは慌てて起き上がりラークから離れる。
爆発に巻き込まれたガイオーは、なんとか立ち上がりマルボの方を見る。
「常に戦い方を考えているのか。以前よりも強くなっているようだ…だが、それはこちらもだ!」
ガイオーの剣がキィィィンと耳を塞ぎたくなるほどの高音を発して振動しだす。
「超音波の振動剣?」
マルボがガイオーを警戒する。
そのタイミングでストンと何か空から落ちてきた。
ムサシであった。
「……え?タイミング微妙じゃない?」
「む?」
「いや、ヒーローが登場するには微妙なタイミングというか……」
「むむ?拙者、先程一度到着したのでござるが、アマルテアから飛び降りたところ、マルボ殿の大魔法の爆風で吹っ飛ばされてしまったでござる」
ムサシが上空を指差すとアマルテアが飛んで旋回している。
マルボが頑張りすぎたせいで、ムサシは落下中に飛ばされてしまったようだ。
その事にマルボはひどく項垂れた。
ムサシとマルボがそんなやり取りをしているところ、ガイオーは超振動の剣をメガナーダ付近の氷の表面に突き刺す。
メガナーダ周辺の氷に亀裂が入って行く。
「甘い!」
マルボは水魔法で亀裂を水で浸し凍らせる。
ガイオーが作った亀裂は戻された。
「グオオオオッ!」
メガナーダが全身を振動させ始める。
自身で全身を覆う氷を砕こうとしているのだ。
ムサシがツカツカとメガナーダの方に歩いていく。
そして、メガナーダの頭を木刀でボカッと殴る。
メガナーダは気を失った。
「安心せい。峰打ちでござる」
「木刀に峰打ちとかあるのー?」
ラークが突っ込む。
一番やっかいそうなメガナーダという魔人も閉じ込めて気絶させた。
マティもオロオロしている。
マティは放っておいて大丈夫そうだ。
残るは片脚が使えないガイオーだけ。
「降参しろ!ガイオー!もう、お前の負けだ!」
ラークが言うと、ガイオーはニヤリと笑い出した。
「時間だ」
そう呟くと、辺りに3つの禍々しい色の魔法陣が出現した。
「来た!!魔法陣を解析したい!フォローを!」
マルボが叫び紙とペンと魔法石を鞄から取り出した。
魔法陣から龍の頭がゆっくりと出現する。
「あれが、アジ・ダハーカ……」
セッターが驚きながらその光景を見つめる。
「マティ!」
ラークはアジ・ダハーカからマティを引き離そうとするが、タローマティの意思かマティは抵抗する。
「キャメルーーッ!!」
ムサシが上空に向かって叫ぶとキャメルを乗せたアマルテアが高速で降りてくる。
すかさずムサシはアマルテアに乗り木刀から雷の刃を発生させアジ・ダハーカの頭に切りかかった。
アジ・ダハーカの一つの頭が角で受け止める。
「ぬうっ!」
ムサシの雷の刃とアジ・ダハーカの角がぶつかり合い拮抗する。
そこへ、もう一つの頭の牙が迫る。
セッターが精霊の力を帯びたブレイブハートで顎に打撃をくらわせる。
怯みはしたがやはりダメージは無いようだ。
そして、最後の一つの頭がメガナーダを氷事飲み込み魔法陣の中に消えて行った。
セッターに顎を叩かれた頭は、マティに向かって伸びる。
20メートル以上首は伸び、ラークごとマティを飲み込んでしまった。
「ラァーーークッ!!」
魔法陣を解析していたマルボが叫んだ。
「させぬっ!」
ムサシがアマルテアから飛び降り、伸びている首の上に乗る。
そのまま首を駆け上がり、頭を木刀で叩く。
衝撃でアジ・ダハーカの口が開きラークが吐き出された。
頭から落下中にムサシがもう一撃、アジ・ダハーカの顎関節に木刀を打ち込んだ。
顎が破壊され、口を開きながらアジ・ダハーカは魔法陣の中に戻ろうとする。
口の中からマティが手を伸ばして叫ぶ。
「オラ、オラはぁー!」
「マティーッ!必ず俺が助ける!だから意識を保て!必ず俺が迎えにいく!」
ラークが叫ぶ。
マティ→迎えにいく→嫁に貰う
マティは顔を真っ赤にして気絶してしまった。
そのまま頭は魔法陣に消えていった。
最後に残った頭がガイオーを飲み込もうとする。
「そう、何度も好きにはさせぬでござる」
ムサシが八相の構えのまま駆け寄る。
感じるでござる。魔神アジ・ダハーカ。強烈な悪意の塊。
並みの攻撃では大して効かぬ。
だが、アシャの言葉は真実!
拙者の剣には邪悪を無に返す力が宿っている!
不動明王像を無心で彫り続けていた、あの時の感覚をそのまま剣に!!
「二天円明流・不動倶利迦羅剣!」
ムサシの掛け声とともに、木刀が眩く光り出し、アジ・ダハーカの頭に叩きつけられた。
「ガアアアアアアアアアアアアッ!!」
アジ・ダハーカは断末魔を上げ、魔法陣の中に戻っていった。
ガイオーを残したまま。
ムサシはガイオーに木刀を突きつける。
ラーク、マルボ、セッター、キャメル、アマルテアも周りを囲む。
「くっ……殺せ……」
ガイオーが諦めた様に言う。
「はぁっ?おっさんの《くっころ》に需要があると思ってんの?」
マルボがガチギレしてるのをラークが止める。
「殺しはしない。捕虜になってもらうぞ」
「ふっ、俺達に捕虜の意味は無い」
マルボが弱体魔法の魔法回路をガイオーに直接書き込み、拘束する。
これでもう抵抗できない。
「よし。神の神殿に戻るか」
「ガイオーはどうするの?牢か何かに入れるでしょ?」
「取り敢えず、アマルテアに乗せるでござるよ。キャメルは拙者の肩車でござる」
『え~……おっさん乗せるの嫌だなぁ…』
「いいから乗せるでござるよ」
オスのアマルテアに辛辣なムサシである…
ガイオーを捕虜として捕らえ、ラーク達は神の神殿の麓まで戻って来た。
神の神殿の方では、ドゥルジとの騒動の後。
ピアニスは魔石を介してドゥルジの情報を引き出そうと、アシャとの会話を試みたが新たな情報は得られなかった。
繋がりが切れているので、せめて本体が近くないと無理とのことであった。
その後、ベルモートとワカバが神との会話に臨んだのだが、ベルモートは瞑想が出来ず、ワカバも気持ちを切り替えられず神と話す事が出来なかった。
マルボも、また神の神殿に来たいと言うので後日また来ようという話しになった。
麓で合流し一同は馬車でエビテの王城に戻る。




