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064 弐章 其の拾漆 勇者保護指令

 暫く一緒に行動する事が正式に決まったベルモートと犬娘三姉妹。

 ハンターギルドの手続きを終えてから一度冒険者ギルドに足を運んだ。


 エリニュス達の報酬はどうなったか聞きに来たのだ。

 1体3,000万ゴールド!

 計9,000万ゴールド!

 だが、そこまでの現金は急には渡せないということで、またも約束手形となった。

 ピアニスパーティと半分という事で4,500万の手形を2枚用意してもらった。


 少し早いがセッター達と待ち合わせしている飲食店に行く事にした。

 店に入ると店員が待ち合わせのお客様はもうお見えになっていると言い部屋に案内される。

 窓際の個室にセッター、ピアニス、ガラム、メビウスといる。


「お!ラーク!早いね!」

「あぁ、なんかやることなくてな」

「え?お会いする人って、この方達ですか?」


 ベルモートがセッターとガラムを見て驚いた。


「知ってるのか?」


 ベルモートは数年前にセッター達の母国であるテプラン王国に行った事があるらしい。


 神の島とも呼ばれるテプラン島は、日本列島を縦に3つ並べたくらいのかなり大きな島でどちらかというと大陸である。

 東の港街ダイコーシが有名だ。


 ベルモートが所属するリゾットから港街ダイコーシは直通船がある。

 船で二週間以上かかる船旅である。

 たまっていた休暇を全て注ぎ込んで、テプラン王国に来た理由は、ダイコーシで行われるテプラン王国武闘大会に出場するためであった。


 テプラン王国武闘大会は近隣の国ではかなり有名な大会であり、レベルの高い武闘家が集まるらしい。


 ラーク達はリゾットが属するトリカランド共和国の首都ダサラ・テポ出身だが、トリカランド共和国も非常に広大な国でリゾットとダサラ・テポはかなり離れている。


 テプラン王国武闘大会の話は初めて聞いたようだ。


 しかし、ベルモート、休暇を使い武闘大会に出場とは、なんとも真面目で熱心な青年である。


 その大会で、ベルモートは二回戦で負けたらしい。

 自分はまだまだだと思い、決勝まで観戦したのだが、その時の決勝戦がセッターとガラムだったと言う。

 その決勝戦の異次元の戦いにベルモートは非常に感動したらしい。

 優勝はセッターだった。


 ベルモートはセッター達には会えなかったが、彼らの事を知りたくてダイコーシで色々話を聞いて周ったそうだ。

 勇者セッターはその大会の2年ほど前に魔王を名乗る魔神インドラの討伐に成功していてテプラン王国で最も有名な英雄となっているのだ。


「へぇ、そんなことがねぇ。」


 ラークが感心したように呟く。


「ムサシ君の弟子も連れてくるかもって言ってたけど、そのお弟子さんが俺達の事を知ってるなんて縁があるね」


 セッターは嬉しそうに言った。


「はい。ベルモートと言います!よろしくお願いします」

「ムサシ君は確実に俺より強いからね。頑張ってムサシ君の背中を追ってね」

「はい!頑張ります!」


 ピアニスが不服そうな顔をしている。

 セッターはしまったという顔になりフォローを入れる。


「あ…ピアニスも俺より強いから…うん、まあ…一緒に頑張ろう」


 微妙なフォローであった。

 ピアニスはムサシより自分の方が強いと言われなかったのが不満のようだ。


 マルボがフォローしてくれないかなとラークとセッターはチラッとマルボを見る。

 だが、先程からマルボは眉間にしわを寄せたまま腕組みをしている。

 マルボは魔神インドラの話を聞いてからずっとこんな感じなのだ。


 インドラ

 バラモン教・ヒンドゥー教の武神。

 インドでは神々の王で民衆に信仰厚い英雄神である。

 ゾロアスター教の【教典アヴェスター】では悪魔として登場しており、インドラも魔王の一人となっている。

 ゾロアスター教ではインドラは虚偽の悪魔なのだ。


「どうしたんだ?」


 ラークが声をかける。

 ハッと我に返るマルボ。

 何か考え事をしていたようだった。

 そしてマルボは真剣な眼差しでセッターに問う。


「セッター、インドラって?」

「その話は、またにしましょう」


 ピアニスが割って入った。

 マルボがピアニスを見ると、ピアニスは真顔で頷いた。


 確かに多くの情報交換のために、この場を用意したのであって、インドラの事は置いておくことにした。

 食事と雑談を済ませてから、いよいよ本題『神の神殿』について話し合おうとした時であった。


 窓の外をギムレットが走っていった。


「あいつ、よく走ってるなー」とラークが呟き、皆も苦笑いしていた。


 すると、走り去ったギムレットが戻って来て窓の外から叫ぶ。


「ラーク!ここにいたウガ!!」

「おう、なんだ?」


 ラークが返事を返すが、それを言い終わる前にどこかに行ってしまった。


「なんだぁ?」


 全員が首を傾げた。

 すると今度はモヒートと一緒に走って来る。


 そしてモヒートとギムレットは店内に入って来た。


「ラークさん!今すぐアルファトを出てください」


 突然言われても何の事かわからない。


「どうしたんだ?」


 ラークは冷静に聞いた。


「面倒な事になったウガ。早く街を出た方がいいウガ」

「だから、どうしたんだ?」


 ラークは再び質問する。


「帝国が勇者の保護指令を出しました!」


 モヒートの言葉に、その場の全員の顔色がさっと変わった。

 保護と聞くと聞こえが良いが、実際は勇者の所有権を主張するためのものだろう。

 孤児である5歳の勇者キャメルの身柄を帝国が確保しようとしているのだ。


「先に情報を我々警備保障ギルドがつかみました。今なら指令が行き渡る前に出て行けると思います」


 モヒートは必死に説明する。


「街を出るって行っても、神の神殿までの道のりの殆どはブラッサン帝国領内だよ?」


 マルボが言う。


「全て返り討ちにしてみせるでござる」


 ムサシは力強く宣言する。

 ケントも頷く。いや、穏健派の君が武闘派にならないで。

 それは戦争になってしまうから……

 ムサシなら数百人使者が来ようが全て返り討ちで倒せるかもしれないが、流石に他国と全面衝突はまずいだろう。


 ラークが悩んでいると、セッターが言った。


「いいんじゃない?俺達の国に来れば」


 ラーク一同唖然。何を言ってるのかと全員が思ったようだ。


「定期船の出航は2時間後ね。手続きも準備も間に合うけど、2時間何とかなる?」


 ピアニスがモヒートに向かって聞いた。


「警備保障ギルドの一員ですが、私はトリカランド共和国の国民です。キャメルちゃんを帝国に渡すわけにはいきません。」


 モヒートが答える。


「待て、待て、ちょっと、落ち着け。なんでそう簡単に話がまとまるんだよ」


 慌てるラークにセッターが答えた。


「俺達の国の神の神殿に行けばいいじゃない」

「「「え!?」」」

「やっぱり知らなかったんだ。テプランにもあるの。神の神殿。というか世界中に6ヶ所あるわ」


 衝撃の発言がピアニスによってもたらされた。


「一つだけ聞かせてくれる?ワカバさん、あなた本気で強くなる気ある?」


 突然ワカバに対してピアニスが問いかけた。

 真剣なピアニスの視線を受け、突然話を振られたワカバは驚いて固まっている。


 だが、少し考えてワカバは口を開いた。


「正直、分かりません。必ず強くなる覚悟というのは持ちきれてないと思います。ただ、私に出来る事があるならやれるだけやってみたい気持ちはあるつもりです」


 ピアニスはそんなワカバを見て微笑みながら言葉を続ける。


「それでいいと思うわ。人間の覚悟って《自分は変わり続ける》って覚悟でいいと思う」

「変わり続ける覚悟でござるか」


 ムサシは何か気付きを得たように呟いた。


 そしてピアニスはラークを見る。


「あなたの決断に任せる」


 ピアニスのその一言は、これからの運命を決めるものだった。

 ラークは、しばし黙考してから重い口を開く。


「分かった。行こう。テプラン王国へ」

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