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060 弐章 其の拾参 ラスボス出現?アンラ・マンユ

 時間は少し遡る。


「それじゃ、僕達も行きますか」


 ちょっと休憩していたマルボが立ち上がった。


 雑貨屋主人を殴り倒した後、ラーク達が駆けつけてきた。

 そんな大事じゃないよ。とマルボは言ったがキャメルはムサシの所へ急げと言う。

 マルボから状況を聞きたいラークであったが、キャメルの勢いに押されてラークはキャメルを抱えたままムサシの所へ行くことになった。

 セッターはピアニスから少し状況を聞きラークを追いかける。


 すぐさまケントとワカバが駆けつけてきた。

 キャメルが先に行っている事を知りケントがラーク達を追いかける。


「ワカバさん、この子達を見ててもらってていい?」


 ワカバにジン達3人の事をピアニスが頼んだ。


「もうすぐギムレットが来るはずだし、すぐ終わると思うから」


 マルボが続いて言った。

 ワカバはこの数日間かなり訓練を積んでいるし、今までの努力も実を結びつつあるが、まだまだアーサーヴィルが無いと戦えない。

 今の状況では、自分が足を引っ張ってしまうことを理解しているので素直にマルボの言葉に従った。


 マルボは探知魔法を起動し、ムサシ達の位置を確認する。


「……」

「どうしたの?マルボ」

「ピアニス、さっき嫌な感じしたよね?」

「リッチが魔法を使うちょっと前の事?」


「うん、探知魔法を広げたら霧のような悪意の魔力が1つに集まっている」

「急ぐよ!」


 ピアニスが声を掛けマルボは頷き二人は走り出した。


◆◆◆◆


 ムサシがアンラ・マンユの精神攻撃から目を覚ました頃、すでにラークとセッターがアンラ・マンユと戦っていた。


 勇者であるセッターの動きは凄まじく、アンラ・マンユに次々と攻撃を与えている。

 だが、相手は仮初の姿とはいえ、悪魔の中の悪魔アンラ・マンユ。

 攻撃をその巨体で避けたり瞬時に繰り出す結界魔法でガードしたりもする。

 ラークの動きも尋常ではなかった。

 アンラ・マンユの幾度となく繰り出される精神攻撃を感知スキルで見極めているのだ。

 時には味方を範囲外に突き飛ばしたりもするが、アンラ・マンユの精神攻撃の気配を感じ取り、それを仲間に伝えることで他の仲間の安全を確保する。さらに自分も常に前線でアンラ・マンユと相対し闘っている。


「この蛇、洒落になってないが、タイミングは分かった」

「蛇が口を開いた時かい?」

「それが精神攻撃の発動のようだ」


 ラークはチラッとムサシを見て続けて話す。


「ムサシの戦闘再開にはもう少し掛かりそうだな」

「この蛇は洒落にならない悪意を感じる。先に決めよう」


 セッターはそう言ってアンラ・マンユに仕掛ける。


 セッターの武器は勇者専用の精霊トンファー《ブレイブハート》という。

 トンファーとは攻防一体の武器である。

 長さ45センチメートル程の棒の片側端近くに、握り手となる垂直の短い棒が付けられている。

 握り手を持った状態で、腕から肘を覆うようにして構え、攻撃を受けたり、そのまま突き出したり、長い部位を相手の方に向けて棍棒のように扱う事が出来る。

 それらは手首を返すことで半回転させて瞬時に切り替えられ、さらには回転させて勢いを付けつつ相手を殴りつけることも出来る。

 金属製トンファーに精霊石を埋め込んだ武器がブレイブハートという武器になる。


 前に出たセッターに続き、ラークも前に出る。

 巨大な蛇に対して、2人で戦っているのだが、初めて一緒に戦う2人の相性が良く絶妙に連携が取れている。

 ラークもレベルが高い上に元々器用な為、すぐにセッターとの連携を身につけたようだ。

 だが、アンラ・マンユも強い。

 まだ、ダメージは与えられないようだ。


 そこに、マルボとピアニスが到着した。

 マルボは周りを見渡し状況を確認する。

 ピアニスは一瞬で前衛に躍り出るついでにアンラ・マンユに攻撃しセッターの脇に下がった。

 攻撃は結界魔法で塞がれたが、反撃が来る前にピアニスは離脱している。


「こいつは精神攻撃をしかけてくる!5メートル以内に長くいるな!」


 ラークは参戦してきたマルボとピアニスに叫んだ。


「セッター、何か感じる?」

「強烈な悪意の魔力が集まって、あの蛇に集約した」

「そう、あれに集まったのね」


 ピアニスはセッターと会話をし、後方のマルボの所まで下がった。


「マルボ。悪意の風はあの蛇に集まったみたいよ」

「ラークッ!!」


 ピアニスの言葉を聞きマルボは声をあげる。


「漂っていた強烈な悪意の魔力ならもう周りには無い!この蛇だけだ!」


 マルボが何を知りたいのか察し、ラークが答えた。

 ラークはしっかり感知スキルで周辺の状況を探っていたのだ。


 突如、蛇が震え出し体にヒビが入っていく。

 ヒビの隙間から光が漏れ出す。

 ラークが構わず短剣を伸ばし槍にして攻撃するが、蛇の周りの結界魔法で塞がれた。

 セッターが叫んだ。


「何か起こる!!下がるんだっ!」

「マルボの所に集まれっ!」


 ラークが続いて叫ぶ。


 マルボはケントの後ろで結界魔法を張り、ピアニスとセッター、ラークも急いで駆け寄る。


「何か起こったら魔法陣を強化して」

「了解だ」

「かしこまったでござる」


 ムサシも動けるようだ。


「魔法陣を強化って?」


 ピアニスが聞くと、ラークが答える。


「魔法陣に強化魔法を流せ。マルボの術式は強化魔法で強化されるように組んである」

「うわ!それは凄いね!」


 セッターが感嘆の声を上げたが、今はそんな場合じゃないとピアニスに睨まれた。


「蛇が…脱皮する?」


 マルボは結界魔法を掛けながら蛇を見ている。


「守るより先に倒した方が良くない?」


 ピアニスは呟く。


「いや、あの結界魔法は強力だ。今のうちに対策を考えた方がいい」


 セッターが続けて言う。


「さっきまで漂っていた強烈な悪意の魔力は精神体みたいなものだと思う。精神体が集まってあの姿になったのかな?」


 セッターがこの場に来た時には大蛇がいただけなのでエリニュス達の存在は知らない。


「ムサシ。あの女魔神があれになったの?」


 マルボに聞かれてムサシが答える。


「あの魔人達は自分達の事をエリニュスと言っていたでござる。突然頭の蛇が喋り出しエリニュス達は蛇に吸収されたでござる」


「エリニュス…その後は?」


「蛇はアンラ・マンユと名乗ったでござる」


 アンラ・マンユの名を聞いて全員が驚く。


「だが、あれは仮初の姿と言っていたでござる」

「仮初?本体ではないって事?じゃあ今脱皮して本来の姿になるって事?」


 マルボが聞いてくる。


「いや、あそこにいる存在が本体じゃ無いって事だと思う。本体は心臓らしいからね」

「さすが、ラスボス。ここで倒せる存在じゃ無いって事だね」


 セッターの言葉にマルボが言った。


「アンラ・マンユはラスボスじゃないと思う」


 ピアニスが続く。


「なんでそんな事言えるんだ?心臓が本体ってなんだ?」


 ラークの質問にピアニス・セッターが答えるが、またも皆が驚嘆する事になる。


「「神の神殿で聞いたから」」


「「「えぇーーっ?」」」


「なんと、神の神殿でござると?」

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