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046 幕間 其の弐 お店を発展させよう

《トレジャーハンター》

 これが俺の解放されたジョブだった。

 解放と同時にみなぎるほどのパワーを感じた。

 体が軽い。

 だが、それ以上に感覚の鋭さが増した気がする。

 まるで猫になった気分だ。

 トレジャーハンターのスキル、感知スキルが使えるようになった。

 見る、聞く、嗅ぐ、触れるとは別の感覚で人や物を感じる事が出来るのだ。

 そして魔力の流れも感じる事が出来た。

 早速バリバーのおっさんに魔法の使い方を教えて貰おう。


「え?俺、魔法使えねーよ」

「はぁ?」

「だから、俺、魔法使えないの!生活魔法くらいしか使えないの!」

「あんた、10歳になったら新しい魔法とか創って功績上げて冒険者になれって言っただろ」

「それは例えだ。学校行け!学校に行けばちゃんと習えるぞ」

「わかった」

「あれ?あっさり納得するの?」

「おっさんの言う事は正しい。学校でしっかり勉強するさ」


 バリバーのおっさんはもっとゴネて欲しかったみたいだ。

 奥さんに先立たれ、子供達は独立し、弟子達も一人前になり、寂しかったのかもしれない。


 この世界の学校は受けたいカリキュラムを選択し、それを受講する事になっている。

 5歳以上であれば年齢も関係無く、学びたい時に学べるのだ。

 ただし、お金がかかるけどな。


「母ちゃん、俺、学校行かせてくれるか?」

「好きなだけ行きなさい。どれだけカリキュラムを選んでもいいわ。この店が儲かっているのはラークのおかげなんだから」


 ウチの食堂は以前の10倍のスペースとなっていて、従業員も10人以上いる。

 お客も増えているし、繁盛している。

 繁盛の決め手になったのはお土産お菓子だ。


 俺が3歳になって暫くしてからの事だ。

 店が繁盛し過ぎて、人手不足でこのままでは両親共に倒れてしまうと思った。

 従業員を雇おうと相談した所、「コネも無いし、どうやって人を集めたらいいんだ? 募集して来て貰えるもんじゃないぞ」と父ちゃんに言われてしまった。


 確かに、この世界では解放の儀式により才能が解放される。

 その為、その人の資質が解り、職に就ける確率が高いため、なかなか人は集まらないようだ。

 でも俺には前世の知識がある。

 ヘッドハンティングが出来るんじゃないかと思い、近所の商会や店、工場なんかを見て回った。


 そして、ある事に気がついた。

 教会に名簿がある。

 教会に勤めるシスターや神父が、解放の儀式を受けた人の名簿を作っているのだ。

 これは良い情報を手に入れた。

 教会の名簿は自由に見れる。

 個人情報保護なんて無いのだ。


 大都市であるダサラ・テポの中心地区の教会の名簿は数十万人分あった。

 その中から、条件に合いそうな人をピックアップしていく。

 ピックアップしたリストを作り、母ちゃんに相談した。


 実は、父ちゃんは《料理人》のジョブだが、母ちゃんは《経営者》であった。

 この世界のジョブは才能があるというだけで、ノウハウが無ければ使えない事がある。

 料理の才能があっても、レシピを知らないと作れない。

 経営の才能があっても経営術を知らなければ、ただの愛想のいい接客になってしまう。

 あの不味い料理でそこそこ客が入っていたのは、母ちゃんの接客力だったようだ。


 母ちゃんに相談すると流石に理解が早い。

 母ちゃんはすぐに父ちゃんに相談して、言いくるめた。

 経営心理学を無意識に会得しているのだろう。


 他の店からヘッドハンティングなどしなくても、孤児院のレアジョブの子供達をスカウトする事で、人材の確保に成功した。


 12~14歳の少年少女達で、将来性がありそうだ。


「ラーク、この《パティシエ》というジョブは何が出来る人かしら?」


 母ちゃんがリストを見ながら聞いてきた。


「それはお菓子専門の職人だよ。独占市場間違い無しのジョブなんだ!」


 この世界では、ジョブが解放されても何が出来るか分からないジョブが結構ある。

 レアジョブはノウハウの蓄積が少ない為、使いこなせない事があるのだ。

《パティシエ》はお菓子作り全般に才能を発揮する。

 だが、この世界のお菓子は《料理人》が作る事が多く《パティシエ》が何ができるか知れ渡っていないのである。


 食堂の定食にお菓子を付ける。

 お菓子単体も店で販売する。

 お土産に買って帰る。

 そんな感じで、《パティシエ》のスキルを使えば、凄く儲かると思う。

 母ちゃんは俺の説明を聞いて納得した。


 そんなわけで、12歳から14歳までの少年少女達を4人連れて来た。

 みんなまだ幼さが残る少年少女達だ。

《パティシエ》《料理人》《接客》《ホテルマン》の4人だ。

 この世界で《接客》と《ホテルマン》に何の違いがあるのか分からないが、両方連れて来た。

《パティシエ》の女の子の名前はクリコ。

 お菓子のレシピが無いので、俺とクリコは一緒に試行錯誤しながら、新しいお菓子を作っていった。


 俺は前世の記憶があるが、お菓子の知識は無い…


 いや、ある!

 ポテトチップとかポップコーン。

 この世界で見た事無いぞ!

 取り敢えずポテトチップとポップコーンを売り出した。

 両方とも材料費は安い為利益率半端ねー。

 4人雇ったにも関わらず、すぐに店は手が足りなくなるほど忙しくなったが、父ちゃん母ちゃんと4人と俺で頑張った。


 店が終わった後、遅い時間にクリコと新商品の開発をした。

 ある日偶然カラメルが出来た。

 砂糖と水で煮詰めるだけの簡単な物だが、俺も作り方は知らなかった。

 砂糖水でポテトチップを煮込んでみようと思い、砂糖水を熱していたが、ポテトチップを入れ忘れていた。

 暫くして、ふと気付いて慌てて入れようと思ったらカラメルが出来ていた。なんとなく出来てしまった。

 パティシエのスキルが自然に発動したのかもしれない。

 そして、俺とクリコはカラメルポップコーンの開発を始めた。

 なかなか上手くいかなかったが、試行錯誤の上、バターとミルクを混ぜたものを焼き上げる事で完成した。

 こうして出来上がったカラメルポップコーンはバカ売れだった。

 定食のデザートとして付けると、若い女子を中心に人気爆発になった。

 更に店の宣伝効果を見込み立ち話してる近くのおばちゃん達に試食用として配ると、あっという間に噂が広がり、その日から毎日行列ができた。


 もう店の広さが足りない程に人が押し寄せてきて、店の回転が悪くなり過ぎたので、仕方なく場所を変えた。

 こうしてウチの店は大繁盛したのであった。


 この世界は才能があっても知識が無ければ活かせない。

 考え方が間違っていれば意味がない。

 そして行動しなければ何も起こらない。だから、今目の前にある事を一つ一つやっていこう。


 というわけで、俺は学校に行く事にした。


 語学・魔法学・魔物学を中心にのカリキュラムを選択した。

 数学とかは俺の方が出来たので必要なかった。

 この世界でも基本十進法なので、計算も楽だった。

 後々マルボに聞いたのだが、複雑な魔法式は一進法、二進法、十二進法を応用しないと出来ないらしい。

 そんな事を言われても分からないし、この世界の数学ではそんな事教えてくれないので、全く意味がないのだけど。

 後《運動学》も選択した。

 てっきりトレーニング理論とかそういうのを学ぶのかと思っていたが違った。

 この世界には魔法がある為、身体強化や魔法を使う上での体の使い方等を教わる事や魔物との戦い方を主に、体育に近い内容だった。

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