212 伍章 其の参拾玖 今から本気出す
魔石の魔力は膨大な光の魔力を流す事で解消された。
マルボの魔法陣にムサシを含め全員で魔力を込める。
膨大な光の魔力で巨大魔石は浄化された。
これにより、街全体も浄化された。
マルボ、ムサシ、シャーナ、クリス達はは警備保障ギルドへ。
崩壊した施設はシャーナが簡易的に土魔法で建て直した。
ラークとリジュール、エール達は、コンドー・トシを探し出してシロの回復魔法で回復させる。
そして、警備保障ギルドへ。
「なんだ?瞑想してるのか?」
ラークが来ると、ムサシ達は瞑想していた。
数十人がムサシを前に胡座で目を瞑っている。
少し不思議な光景にラークは戸惑う。
マルボがムサシに誘導瞑想を頼んだのであった。
マルボは瞑想が苦手である。
思考を止める事ができない。
心を落ち着かせる為。
モヒートやギムレット、警備保障ギルドの者達も一緒に目を瞑っている。
モヒートに、シャンテが魔神の群勢側だった事を伝えた。
動揺が大きかったようだ。
警備保障ギルド職員たちには、シャンテがこの街の惨劇の首謀者の一人と説明したようだ。
誰もが心を痛めていた。
そのため、全員がムサシの瞑想を体験することになった。
空間はムサシの線香の香りで落ち着いている。
とても静かに時間が流れている。
穏やかな声でムサシが語りかける。
瞑想を促す。
様子を見ていたコンドーが胡座をかき目を瞑る。
トシとリジュールが続き、ラークも加わる。
涙を流す者もいる。
啜り泣く声が聞こえる。
長いようで短いような瞑想の時間。
瞑想を終えた者達は、安らいだ表情をしている。
マルボが立ち上がる。
声を掛けるのに躊躇う一同にマルボが先に口を開く。
「皆、ごめん。それと、ありがとう」
ラークが声を掛ける。
「大丈夫なのか?」
マルボは微笑で返す。
「大丈夫とは言えないかもしれない。自分でもよく分からない。でも、二度と会えないはずの相手だからさ。また会って問い詰めてやるとこから始めようって思う」
ムサシ・ラークが静かに頷く。
「それじゃぁ、後はゲンマールだな」
ラークの言葉に一同が頷いた。
◆◆◆◆
第一王子ゲンマール。
昨夜、急遽ブラッサン帝国の兵を引き連れ、舞い戻ってきた。
この国の“英雄”になるために――悪神と手を組み、混乱を利用して。
アカ・マナフの影響で混乱が極まるデリンキーヤの街。
ゲンマールはまるで“救国の王子”を演じるように、
物資の配給や怪我人の保護を兵に命じ、民衆の前に姿を現していた。
混乱に寄り添う慈悲の王子――
その皮を被り、民意を手中に収めるために。
「全て自作自演。この国を奪うための演出――腹立たしいな……」
「だが、国民はゲンマール王子が悪神達と手を組んでいるなんて夢にも思うまい。混乱の中で見た光景を信じるのは仕方がないことだ」
コンドーとトシはゲンマールの船に向かいながら苦虫を潰したような顔で呟く。
深夜決行の作戦。
コンドーとトシが国外へ出るため。
シャーナが一時的に国民の英雄を担うため。
ゲンマールにシャーナが要注意人物であると思わせるため。
数年後、新たな英雄としてジャスティが
凱旋できる土台を作るため。
数時間前――
「俺、今日からラーク君達に同行する事にしたよ」
ムサシの瞑想が終わった後、皆で打ち合わせを始める前にリジュールが告げる。
コンドーとトシが少し驚いた顔をする。
「どうしたんだ?ソウジ。もちろんお前はお前で新しい人生を歩まなきゃならないが……」
コンドーが問う。
「前世と決別。いや、卒業かな。切り捨てちゃいけないけど縛られてもいけないのが前世だと思ってるんだ。それに……」
コンドーとトシの目を交互に見て続ける。
「コンドーさんとトシさんとの繋がりは切れる事は無いし、今後も二人の力になるつもりだよ。それにこの国の事だって大事だ」
コンドーとトシが微笑む。
「国の事は大事だけど、もっと根本的な事と向き合う為にラーク君達に同行したいんだ」
「そうか。悪神達との戦いに直接向き合うのか」
「いや。もちろん悪神達と戦うけど――」
リジュールはマルボを見る。
「向き合うのは自分自身とかな」
ムサシがマルボの横で小さく頷いた。
「そうか。ならば何も言うまい」
コンドーは微笑んで答える。
「ソウジ。今度は俺より先に死ぬんじゃねぇぞ!」
トシが言う。
「期限付きにしてよ。八十年後トシさんまだ生きてるの?って思いたくないから」
「ソウジ!てめぇっ!」
いつもと変わらないリジュールとトシが可笑しくて皆笑う。
「よし。作戦を練るぞ。コンドー・トシを問題無く国外に出す事と、シャーナに国民の支持を集める事だ」
「よろしくね。ラーク君」
「あぁ、だが、リジュール。お前は今回の作戦は、ほぼ見学だ」
「え?」
「俺達の本気を見せてやろうと思ってな。俺達の自己紹介も兼ねる接待だと思ってくれ」
ラークが悪い顔で笑う。
「ほう。本気でやるのでござるな」
ムサシが悪い顔で同調する。
「なるほどね。やられっぱなしは腹の虫が収まらないからね」
マルボが悪い顔で悪い顔でニヤリと笑う。
クリス達は、その様子を見て震えた。
◆◆◆◆
ラーク達の計画1―
ラーク達は急遽物資を他の街からかき集めた。
レッドコメットに取り付けた荷車にいっぱいの食料。
昨夜の魔神襲来・隕石落下はすでに他の街にも伝わっていたため格安で購入することができた。
なお、資金はラークが持つギルド手形を安く手放すという裏技。
そして全て救援物資購入に充てる。
おかげでラーク達の所持金は手形まで併せてゼロ。
しかし、大量の救援物資を手に入れてデリンキーヤの街に戻ってきた。
ラーク・マルボ・ムサシが本気を出せば1時間も掛からないのである。
そして、これをシャーナを筆頭にエール・ティア・フロンに配らせる。
当然――
「あぁ…女神様が…女神様がぁぁ…」
泣き崩れる者、嬉しさで気絶していく者と民意を集めていく。
「あの子達が街の悪意を引き受けてくれたらしい……」
「あの子達がいなかったらもっと酷いことに……」
エール・ティア・フロン達にも人気が出る。
エール達は実際には助けられた側なので震えながら物資を配っている。
そして荷車をリジュールが運ぶ。
身体の負担も心配であるが、アカ・マナフ悪の思考の影響は無くなったので今は落ち着いているようだ。
この物資配給行進を続けながら港へ、ゲンマールの船付近に進むのであった。
ラーク達の計画2―
コンドーとトシの国外脱出作戦。
コンドーとトシは潜伏したジャスティ王子と合流したい。
しかし、国内最強と言われる二人が何の理由も無く国外へ出た場合、ゲンマールに怪しまれるのは必至。
そこでコンドーがゲンマールと取引を行う作戦に出た。
「覚悟は決まったか?コンドーさん……」
「俺を哀れんだ目で見るな……」
同情気味に声を掛けるトシに、嫌そうな顔で答えるコンドー。
「俺が会話は手助けするから、心配しないでくれ。コンドーさん」
悲しそうな顔で頷くコンドー。
言葉の意味は分からないが、マルボの最後の言葉が胸を打つ。
「それじゃぁ、頼むよ!ロリコンドーさん!」
悪い笑顔で言ったマルボと、その後ラークが言った「それは酷いぞ」と言う言葉……。
あれは何だったのだろうか……
ラーク達の計画3―
ラーク・マルボ・ムサシ。
そして、クリス・マニエル・シルクの幼女3人組までゲンマールの船付近で待機。
マルボの光学迷彩結界魔法により誰も気付く事は無い。
クリス達幼女3人組にも役割がある。
マルボからタマネギを渡されるクリス達。
「いいかい。難しかったらそれを使うんだよ」
コクリと頷くクリス達。
「コンドー達が船に入って行く!始まるぞ!」
ラークが感知スキルで動きを伝える。
コンドーがゲンマールの部屋へ招かれる。
ラーク達の作戦が始まる。




