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202 伍章 其の弐拾玖 ミスリード

 ムサシはギャラクーダの外法鬼陰流・破魂の矢を受け、燃え上がる体を魔力を放出して消した。


 この時、ラークの分身技をムサシは利用した。


 ラークの分身は膨大な魔力を放出し、その場を素早く離れることで瞬時に分身が生まれる。


 ムサシのそれは分身と言えるレベルの高度なものではないが、一定の動作であれば瞬時に出来るレベルにはある。


 燃え上がる体なら分身ほどの精度で無くとも視覚的には誤魔化せると踏んだのだ。


 ギャラクーダ・源為朝。


 この男は完全に外道ではない。


 剣を交えてムサシは感じる。


 血の絆を感じつつ、甥であり弟弟子であろう源義経に対しての情を感じた。


 最後に言葉を交わしたい。


 しかし、ムサシは今すぐにでもディーネの所へ駆けつけたい。


 一瞬躊躇い、立ち去ろうとした時……


「おい、まだ終わってねぇぞ」


 身動きももう取れないギャラクーダが言う。


 ◆◆◆◆


 ラーク・マルボとビーゼ・ナナエムの戦闘は、ムサシ・ギャラクーダの場所の近くで行われていた。


 ラークの感知スキル範囲に入るか入らないかの距離。


 約500メートル。


 縦横無尽に空を舞うマルボの超高熱領域結界魔法。


 時折発射される熱線を避ける。


 魔神を宿したビーゼ・ナナエムといえども直撃を受ければ大きなダメージ。


 3つ飛ぶマルボファンネル。


 だが、突如一つが姿を消す。


 そして、もう一つ。


 さらにゆっくりともう一つが消える。


 ビーゼとナナエムにはマルボの考えが見えない。


 ただ、黙ってマルボの方を睨む。


「不思議?わざわざ消した意味があるのかって」

 ニヤリと笑いマルボは続けて言う。


「答えは、ラークの武器交換の時間稼ぎでしたっ!」

 人差し指でマルボがラークを指すと、ラークの魔法剣が薄っすら白い影を作り出している。


 白属性・光属性

 本来、魔法属性ではなく、人間には攻撃として意味がない属性。


 しかし、魔神を宿した魔族にとってはデバフ効果が高い。


 ラークの魔法剣は属性を変更できるが、ネジ式の柄頭を外し魔法陣の書かれた紙を入れ替える必要がある。


 その工程をマルボが時間稼ぎをしていた。


 土属性であれば聖剣すら斬ってしまう程の強烈な魔法剣。


 光属性を選ぶのは殺したくはないラークの甘さであろうか?


 光の魔法剣のセットが終わり、ラークが前に出る。


 ムサシ・マルボのような転生者であれば、何かあると考え慎重に対応する。


 しかし、魔族とはいえ、この世界の住人。


 人間同士の戦いには慣れてはいない。


 手玉に取れる。

 と、ラークとマルボは考えているだろうか。


 実は、ビーゼとナナエムは転生者との戦闘経験がある。


 2年程前に転生者との戦いで命を落としかけるほどの経験をし、その後修行に明け暮れ現在に至る。


 ラークに向かいビーゼが迎え撃つように前に出る。


 ラークが突如止まる。


 フェイントだ。


 ビーゼの背中をナナエムが掴んで後ろに下がらせる。


 ナナエムはその力を利用して前に出て、ラークに袈裟斬り。


 だが、そこにラークがいない。


「――っ!!」


 突如ビーゼが空中から魔法剣で斬られる。


 その瞬間、ラークは空に跳んだ――


 が、すぐに斬られた――


「僕の結界魔法が土台の空中殺法!」


 気付くと、空中に1平方メートル程の結界魔法が大量に展開されている。


 ラークはこれを足場にしているのだ。


 光の魔法剣で斬られたビーゼは見た目では分からないが、魔力を大きく減らされてしまっている。


「くっ……だけど、結界魔法だったら私達の足場にもなるんだよっ!」


 ビーゼとナナエムもマルボの結界魔法を足場にしてラークに空中戦を仕掛ける。


 高速で繰り広げられる空中戦と思われたが……。


「!?」


 足場になると思った結界魔法がナナエムの足が抜ける。


「ほらよっ!」

 ナナエムがラークに斬られる。


「何が?」


「残念。それは幻術魔法でした」


「くっ!」


 幻術魔法が混ざっている事を知り慎重に跳ぶナナエムとビーゼ。


 ドゴッ!


 ビーゼが空中で何かにぶつかる。


 その隙をつかれラークに斬られる。


「そこには光学迷彩結界魔法魔法があるんだな〜」


 マルボが楽しそうに解説する。

 キッとマルボを睨むナナエムが、その隙にラークに斬られる。


「くっ!何故だっ!奴は何故、その結界魔法を容易に判断できるっ?」

 ビーゼの問に、ラークが後ろから答える。


「俺が感知スキル持ってんの忘れてるのか?」

 またも、ビーゼが斬られる。


「くっ!ならばっ!」

 ナナエムがマルボに向かって斬りかかる。

 が、突如ナナエムに熱線が降り注ぎ左脚を貫通する。


「あぁぁっ!」

「!?」


 消えたと思っていたマルボファンネルの一つが空中で姿を現した。


「これも、一つは光学迷彩で消しただけなんだなぁ」


 ◆◆◆◆


「さて、聞きたい事があるが、まだ喋る気は無いか?」

 膝をつきながらも、ラークを睨みつけるビーゼとナナエム。


 何度も光の魔法剣で斬られ魔力は枯渇している。


「仕方ない。ギリギリまで魔力を削いで牢屋行きだな」

 ラークが魔法剣でビーゼを斬ろうとする。


 キィィィン!


 と金属音。


 ラークの魔法剣が何かにぶつかる。


「光属性には光属性で対応しないと駄目よ」


「なっ?」

「何してんのっ?」


「ごめんなさい。ラークさん。私、ずっと前に堕ちてるんです」


「何を言っているんだ……フィオナ……」


 ラークの魔法剣を止めたのは、フィオナであった。


 立て続けに、ビーゼとナナエムに回復魔法が掛かる。


「私の魔法では魔力は回復できませんが、怪我は大丈夫ですね」


「!?」

「なん……だって?」


 ビーゼとナナエムに回復魔法を掛けたのは、警備保障ギルドのシャンテであった。


 ラークとマルボの思考は完全に停止する。


 ほんの少し前まで一緒に行動していたフィオナと、魔法と生活の森へ同行していたシャンテが、今ビーゼとナナエムに力を貸している。


 立ち上がるビーゼとナナエム。


 その時――


 街全体を覆うように巨大な魔法陣が展開される。


 魔法と生活の森で解析を試みていた古代魔法。


 街全体を奴隷化する術式。


「なんだ……?」

 ラークが呟く。


「ラーク。問題無い。この古代魔法は僕がギミックを施してある。

 自動で浄化魔法が掛かるから、奴隷化は無効化される」


「そうか……なら……」


「うん。状況確認を……」


 逆にラークとマルボに冷静さを与える事になった。


 しかし――


「マルボ。お前は肝心な事を見逃している。

 ――魔法はスキルに従属し、

 スキルは魔力に従属する――

 という事を」


 突如後ろからの声。


 振り向くと、そこには――


「ヴェスパー?」

 ラークが疑問符と共に名を呟く。


 その、ヴェスパーの姿をした男は、

 ゆっくりと、ビーゼ達の元へ歩いていく。


 ビーゼ・ナナエム・フィオナ・シャンテは跪き首を垂れる。


「!?!?」


 ヴェスパーの姿をした男は、歩きながら――

 首に指を差し込む。


 そして――

 スパイ映画の如く――

 マスクを脱ぎ捨てるように、ヴェスパーの顔を破り捨てる。


 現れたのは、冒険者の青年。


 そう、多くの謎の中心となっていた冒険者の青年。


 もう一つの謎であったヴェスパーは、

 同一人物だった――


「ま、まさか……」

 マルボが声を震わせながら呟く。


 古代魔法陣は街全域に奴隷化魔法を掛けた瞬間、浄化魔法に切り替わっている。


「浄化魔法は正常化するための魔法だが、光の魔力を大量に流す事が前提となる。しかし、闇の魔力を大量に流せば――闇属性の浄化ということになる」


 青年は魔法陣に手を添える。


「アカ・マナフ!悪の思考!」


 マルボが仕掛けた浄化魔法は、闇の浄化魔法として街を包み込んでいく。


 跪いたままフィオナが言う。

「おめでとうございます。ヴァルテイン様。実験は成功です」


「ヴァルテイン?ヴァルテインだって?」

 ラークがマルボを見て言う。


 だが、マルボは膝から崩れ落ちて放心している。


 ヴァルテイン。


 マルボが前世で親友の佐藤健吾と作った会社の名前だ――



お読みいただきありがとうございます。

本日もう一話投稿予定です。

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