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199 伍章 其の弐拾陸 ビーゼとナナエム

 キッとマルボを睨みつけるビーゼとナナエム。


 美しい顔。

 魔族の赤い瞳に睨まれるマルボ。


「いいっ!異世界感充実だ!」

 何故か感動している。


「おいおい。油断すると死ぬぞ」


「ちゃんと分析してるよ。パワーとスピードは向こうがだいぶ上。連携性は圧倒的に向こう。運動性はラーク、魔力は僕。そして戦術ははるかにこっちが上だ」


 そう言うとマルボは杖をビーゼ・ナナエムに向ける。


 ウォーターボール。


 ドッジボール程の水の玉。


 一発、二発、三発……


  連射される。

 軽く避けるビーゼとナナエム。


「フッ」と笑みを浮かべてビーゼがマルボに向かって駆ける。


「――っ?」

 マルボの手前で滑ってバランスを崩す。


 ウォーターボールの水溜りを氷魔法で凍らせていた。


 そこに巨大な氷塊が降ってくる。


「!!」


 ナナエムが間に入って剣撃で破壊する。


 砕け散る氷塊。


 滑りを防ぐ氷面を突き破る踏み込みも戦闘センスが良い。


 だが――


「トルネード!」


 ビーゼとナナエムを中心に竜巻が発生する。


 砕け散った氷塊がビーゼ・ナナエムを襲う。


「ぐぅ!」

「がはっ!」


 そのまま竜巻は地面に向かい、ビーゼとナナエムを叩きつける。


「容赦ねぇな……」


「いやぁ、機動力じゃ勝てそうもないからね」


 ◆◆◆◆


 すぐさま起き上がるビーゼとナナエム。


「防御力も結構高いね」


「おい。お前らの目的は何だ?この国で何を企んでいる?」


 ビーゼ・ナナエムはラーク達を睨んだまま返事は無い。


「まっ、簡単には喋らないよね」

「倒したとこで、どうやって情報を引き出すか」


「私達を倒せると?自信家ね」

「そもそも。何で私達を敵視するのかしら?」

 薄笑いでビーゼ・ナナエムは言う。


「うわっ!自分達から攻撃してきてよく言うよ」

「お前らがブラッサン帝国の船とグルなのは分かってる。あの船が魔神と繋がりがあるのもな」


 ビーゼ・ナナエムもラーク達が持つ情報を聞き出す為の策か?

 ラークも警戒して応える。


「あら?お金で雇われただけかもしれないじゃない」

「私達、魔神なんて知らないわね」

 ひょうひょうと返すビーゼ・ナナエム。


「何にせよ倒してからゆっくり聞けばいいさ」

「そうそう。後でこのオジサンにエッチなことされちゃうからね」


「しねーよっ!アホーーーーっ!」

 マイペースなマルボとラーク。


 笑みを浮かべるビーゼとナナエム。


「あれ?笑ってるよ。満更でも無いみたいだよラーク君」


「おまっ…」


「じゃぁ、決定的なものを見せてあげる。魔神との繋がりをね」

 ビーゼとナナエムは剣を横一文字に構え逆の手を添える。


「テンマ様より受け継ぎし我等が秘剣」


 ラークとマルボは構え警戒する。


「人間五十年…」


「下天の内をくらぶれば…」


「夢」「幻の」「「如くなり」」


「なっ!」


「「第六天魔衝撃!」」


 ◆◆◆◆


 第六天魔衝撃


 チョパイ島にて出会った織田信長を思わせる少年の放った技だ。


 人間五十年〜と敦盛を歌うたびに魔力を増大させて乗せる剣技。


 闇を凝縮したかのような漆黒の波動がラークとマルボを襲う。


 砂煙が舞い、ラークとマルボが居た場所は地形を変えるほどの威力で抉れている。


「あっぶなー!ムサシの必殺技の練習に付き合ってなかったら死んでた!」


「ほんと、手伝って良かったな」


 マルボが瞬時に多重結界魔法を張り、ラークが魔力を魔法陣に流した。


 ムサシの羅翔磨剣の練習に付き合った結果。


「いやーレッドコメットと同線上で良かった。あんなのくらったら粉々だよ」


「粉々……」


 数十億ゴールドの予算をかけたものが粉々とか想像するだけでもゾッとするラーク。


「ちっ!」

 ビーゼが舌打ちをしてナナエムともに構える。


「一応、女の子だから遠慮してたんだけどね。これは知ってる?」


 マルボが球状の結界魔法を発生させる。


 大量の地面の土を掬った結界魔法は上空へと浮かびあがる。


 結界魔法内は超高熱領域となり、土は1,000度以上に加熱される。


 高熱粒子魔法『マルボビーム』


 超高熱領域を見て一瞬たじろいだナナエムを見た。


「知ってるようだな」


「こちらの情報も結構漏れてるってことだね」


「溜めが必要な向こうより遠距離戦はこちらが有利だな」


「だね。マルボビームを連発すれば近づけさせずに倒せる」


 ビーゼが眉間に皺を寄せている。


 ナナエムも同じ表情。


「ふっ。連発は出来ないと聞いている」

 ニヤリと笑みを浮かべるビーゼ。


「それは以前の話だよ」

 更に超高熱領域結界を2つ浮かべる。


「!!」

 そして3つの超高熱結界は高速で動き出す。


「マルボファンネルッ!」

 高熱粒子の熱線が連続でビーゼ・ナナエムを襲撃する。


「ファンネルとは漏斗の事だ」

 ラークが呟く。


 ◆◆◆◆


 キサバ国の首都デリンキーヤ。

 昨夜ヘカトンケイル3体の出現により街は天災級の被害を受けた。


 街の被害は甚大で、崩壊した家屋が多く、瓦礫が至る所に散乱しており修復にはかなりの時間を要するだろう。


 そんな崩壊した街中を走っている集団がいる。


 新政府外交官と兵士達だ。


「はぁっ。はぁっ。もう……もう無理だっ!」


「何を泣き言を!取り敢えず統治庁へ戻るんだ!」


「そうじゃないっ!俺達は終わりだっ!俺達の目指す政治はもう終わりだ!」


 外交官の3人が叫び言い争いを始める。


「この世界で英雄を作らないなんて土台無理なんだっ!必ず英雄は現れるんだっ!」


「よせっ!馬鹿者!」


「英雄を作らない?何だ?何の事を言っている?」

 兵隊長のギブソンが聞く。


「一兵士が口を挟むなっ!」


「貴様らが弱いから国民共は不満を垂れるのだっ!」


「隊長風情がっ!我々どれだけ苦労してきたと思っているっ!」


 ギブソンは罵られることへの怒り以上に、不穏な内容への違和感が先に立つ。


「……待て、お前達は……、我々は……何を目指しているのだ?」


「はっ?この国を良くしていく為であろう」


「国を平和に維持するには英雄など不要なのだ!奴等は国を乱す原因になる!」


「なぜ、そんな事を思っていたのだ?俺達の国の象徴である英雄アクダクトが居たからこそ、この国は平和を保ってきたのではないかっ!」


「英雄が居なければ、この国はもっと豊かになったんだっ!」

 真実を知ったギブソンは唖然とする。


「この国の軍隊が弱いのも、育成が遅れているのも、全てその思想なのか?英雄不要論とでも言うのか?」

「ふんっ!弱いにも程がある。最低限の力もつけられない愚かな者どもが」


「貴様のような弱者が兵隊長をやっているのが問題なのだっ」


「軍人を強化しない理由がそれだとっ?狂ってるっ!」


「狂ってはいない。この国の政治を知らないが故の妄言だ」


「アクダクトが導いてくれた革命だっ!」


「だから我等が処分した」


「なっ……」


「英雄が居れば民は考える。考えれば統治は困難になる。民を数字として管理してこそ国家は安定する」


「国民は英雄を望んでいるっ!それをっ!」


「民が何を望もうと関係ない。選択肢を増やせば混乱が生じる。混乱は支出と不満を生む。秩序は効率だ」


 兵士の一人が膝から崩れて呟く。


「俺は……俺達は何をしていたんだ……今まで何のために……」

 外交官が歩みを進めようとしながら言う。


「お前らも処分してやる。底辺兵士どもめ」


「いいや。証人として命は保証されるな」


「!?」


「真犯人としてお前達が拘束される」

 ギブソンの後ろの瓦礫から現れたコンドー・トシである。


「クラージュ……」


「すまないなギブソン。以前から失礼な態度を重ねたことを謝罪する」


「あと、これまで隠れていたのもな」


「ク、クラージュにエッジ……」


 外交官の一人は膝から崩れ落ちる。


「抵抗しても意味はない。投降するんだ」


「「……」」


 外交官の長が統治庁へ向かって駆け出す。


 ――が


 一閃。


 コンドーの一振りで長は倒れる。


「峰打ちだ。死んではいない」


 とは言うが峰打ちとはいえ、一般人がコンドーの一振りを受けたのだ。


 生死を彷徨うのは言うまでもない。


 ◆◆◆◆


「ギブソン。聞きたいのだが、ヴェスパー将軍はどうしている?」


「あぁ、政府外秘だが……ひと月ほど前に他界された」


「メガナーダって奴は?」


「メガナーダ?何だそれは?」


「そうか。君は知らないのだな。英雄候補を暗殺する刺客だ」


「そんな事まで行われていたのか?」


「まぁ、そういう事だな」


 コンドーは外交官の長を担ぎ一同中央統治庁へ向かう。


 外交官2人は兵士に連行される形で移動。


 兵士達は項垂れてはいるものの歩みを止めず進んでいく。


「少し急ぐか」

 コンドーは足を速める。


 ヴェスパー将軍はひと月前に亡くなったという話し。


 外交官達の情報はどうなのであろう。


 現将軍はメガナーダはヴェスパーからの紹介だと言う。


 外交官と共に、現将軍と合わせて詰める必要がある。


 時間が惜しい。

 コンドーとトシは統治庁へ急ぐ事にした。

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