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014 壱章 其の拾肆 伝説の序章

 ヘカトンケイルはその一部始終を見て動揺している。

 自分が吸収しようとしていたドライアドが勇者の精霊石に宿ってしまったからだ。


 その動揺は隙となり、ムサシは隙を見逃さない。

 一気に距離を詰め跳び上がると、木刀でヘカトンケイルの左脛を薙ぎ払う。


 バキンッ!


 その一撃でヘカトンケイルの脛は砕けた。

 バランスが崩れたヘカトンケイルの左膝を咄嗟に数体の腕が支える。


 マルボはキャメルとケントに結界魔法を掛けながらヘカトンケイルを観察している。

 どうやってあの数十体の腕を操っているのか?


 離れている物体を操作する為に、何かしらの力で意思を伝えているのは間違いない。

 魔力を送っているのか?電波を飛ばしているのか?

 発信側は頭部から生えている一本の角だろうか?


 では、飛んでいる腕側はどうなっているんだろう。

 掌に目がある事と本体の死角でも腕を動かせる事から視覚情報を脳に送っている事は間違いない。


 つまり腕側にも送受信の機能があるはずである。

 魔力は解放の儀式を行った者であれば感じ取る事が出来る。

 魔力を感じる事は魔法の才能が無くても出来るし訓練次第で鍛える事も可能なのだ。


 マルボは大魔法使いである。

 当然魔力を感じる能力にも長けている。

 魔力で本体と腕の送受信を行っているとは思えない。

 その魔力は感じないのだ。

 であれば、電波で送受信を行っていると仮定した。


 すぐに出せる弱い雷魔法を妨害電波として腕に放つと、腕はビリリと一瞬痺れるがすぐに元に戻る。

 強い電気を流せば腕の動きを止められる!

 それにマルボが気付いた時であった。


 残り50体ほどになった空中に浮く腕は全て拳を握った。

 拳を握ると掌にある目からの視覚情報は遮られることになる。

 腕からの視覚情報を遮ることでヘカトンケイルは脳の処理機能を別の機能に切り替えたのである。

 ヘカトンケイルの膝が白く輝きだした。


「回復魔法を使ってる!」


 観察していたマルボはヘカトンケイルの回復行動に気づいた。

 回復をさせまいと追撃を試みるムサシに高速に飛ぶ拳が襲う。

 ムサシは飛び退き避けたが、ヘカトンケイルの脚はもう治っていた。

 更に数十体の拳がムサシを襲う。

 難なく避けるがヘカトンケイルとの間合いは開く一方であった。


「厄介でござるな。なかなか近づけぬでござる」

「何か手は無いか……そうだ、キャメルはどうなった?」


 ラークが振り返るとキャメルは青い輝きを放ちながら空中に浮かんでいた。


「って?何で飛んでるんだよっ?」


 この瞬間ラークの[突っ込み]スキルのレベルが10に上がったのだが、戦闘中のため気が付かなかった。

 なお、この先この突っ込みスキルのおかげで戦闘が左右されるようなこともない。


「風魔法だよ。たぶん精霊のマントの効果だと思う」


 マルボが答える。


「このマントには他のドライアドの髪の毛も編み込んでありますから、私を介して精霊達の力を余す事無く使えます。さぁご命令を」

「うんっ」


 キャメルが右手を差し出すと目の前に赤い魔法陣が現れた。

 魔法陣から巨大な火の玉が撃ち出される。

 右手を指し出しながら左手を差し出した。

 今度は茶色の魔法陣が現れ大きな岩が撃ち出される。

 火の玉と岩の玉がヘカトンケイルに直撃する。


「合体魔法も出来る?」

「もちろんです。キャメル様」


 赤い魔法陣と茶色の魔法陣が重なり燃える岩石が撃ち出される。


「沢山だして、あいつをやっつけて!」

「はい!」


 無数の燃える岩石がヘカトンケイルを襲う。

 流石のヘカトンケイルもこれはたまらないようだ。

 だが致命打にはなっていないようである。

 ヘカトンケイルは本体の腕を交差させてガードしている。


「よし、今なら僕も攻撃に参加出来る」


 片膝を付いて地面に片手を添えマルボが黄色い魔法陣を出現させた。


「ほら!ラーク!役に立つチャンスだよ!強化魔法で魔法陣を強化して!」

「あ、あぁ」


 あまり役に立っていなかったラークが慌ててマルボの隣に行き、黄色の魔法陣に手を添え強化魔法を魔法陣に流した。


 魔法陣の光が更に強く輝く。

 間をおかずケントもマルボの魔法陣を強化する。


「くらえっ!サンダー・ブレイク!!」


 マルボの掛け声と共に雷がヘカトンケイルに降り注ぐ。


 ヘカトンケイルはマルボの雷魔法により麻痺して動けなくなっていた。

 そして腕の動きも空中で止まっている。

 マルボの狙い通りであった。


 そこにムサシが追い討ちをかける。

 空中で止まっている腕を階段のようにして駆け上がっていく。

 ムサシは一刀を両手で握り上段に構え高く跳び上がった。

 両手から魔力を注いでいるのか木刀は眩しいほどに黄金に輝いている。

 空中から振り下ろされた一撃は、ヘカトンケイルの頭を木っ端微塵に粉砕した。

 ヘカトンケイルの体はゆっくりと後方に倒れて行った。


「あらぁ〜……キャメルの攻撃でも打撲程度のダメージなんだけど……」

「ムサシさんの攻撃、砕け散ってますね……」

「もう考えるだけ無駄だって、ムサシはああいう奴なんだよ」

「結局ほとんどムサシ1人で倒しちゃったね……」


 地上に着地したムサシに駆け寄っていくキャメルを見ながら3人は呟いた。


 この日ラーク達は魔神ヘカトンケイルの討伐をはたす。

 ほぼムサシ1人で倒したようなものではあるが、ラーク達も無傷での達成となったのだった。


 ラークはムサシの後ろ姿を見詰めていた。


 剣豪宮本武蔵。

 日本で一番有名な剣客の名前である。


 宮本武蔵は剣術において従来の流派や伝統にとらわれず、独自の剣術「二天一流」を確立した。

 従来の固定概念や常識にとらわれず、新しいアイデアや方法に挑戦しイノベーションを起こした人物である。


 そんな宮本武蔵の事を思うと、この世界でもイノベーションを起こすのだろう。

 彼がこの世界にいるのであれば間違いなく名を残していくのは間違いない。

 その実力は既にこの世界でもトップクラスの戦士である。


 だが、ムサシは名を残す為に戦うのではないのだろう。

 転生者であり、この世界でも飛びぬけた才能を持って生まれたムサシである。

 前世の宮本武蔵の時は名声を求めていたのかもしれない。

 だが、今のムサシはラーク・マルボ・ケントと同じように自分の力を世のために使いたいと思っている。


 ムサシの冒険はここから始まる。

 その冒険の一つの目標地点は『神の神殿』を目指す事である。

『神の神殿』では自分の本心から知りたいと思う事を教えてくれると言われている。


 そこはゴールではない。

 彼らは自分の使命を知る為に目指すのだ。

 いわばスタート地点に立つ為でもある。


 この世界に神がいるのなら、神は何故自分達に才能を授けてくれたのか。

 転生者としての能力を与えてくれたのか。

 きっと理由があるはずだ。


 その才能や能力を与えるべき者は自分達ではなく、他の誰かでも良かったのだから。

 他の誰かが転生してきても良かったのだから。


 どの世界でも特定の才能を持った者は生まれるものである。

 その才能は世界の為、社会の為、集団の為に使うべきであり、自分の為だけに使うべきではないはずだ。

 その事を今世のムサシはよく知っている。


「とんでもない奴が仲間に入っちまったな」


 日は傾きはじめ、腰に手を添えて立つラークの影は地面に長く伸びて行った。


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お読みいただきありがとうございます(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゜


面白いと思えたら是非【高評価】と【ブックマーク】をよろしくお願いします。


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