8 唐突ですが、特殊能力に開眼です
外に飛び出したより巨大で凶悪な怪物。
そいつがいる外には下手に飛び出せなくなった。
仕方ないのでビルの中にいるしかない。
その方が幾らか安全だからだ。
しかし、それもいつまで続くか分からない。
死体が寄り集まって出来た巨大な怪物は外に出ていった。
しかし、戻ってこないという保証は無い。
それにだ。
ビルの中から怪物が消えたわけではない。
他の階にも怪物に化けた元人間がいるかもしれないのだ。
残念ながら心配は的中する。
非常階段から怪物が入ってくる。
他の階から移動してきたのだろう。
それを見てヒロキも動き出す。
先々について悩んでる場合ではない。
まずは目先の問題を解消して、この場を生き残らねばならない。
幸いというか、怪物はこの階にいた連中と同じだった。
見てくれは獣じみた人間といった風情。
知能は一応あるのだろう、階段から他の階に移動してきたのだから。
ドアを開くだけの智慧もある。
しかし、頭に血が上って凶暴化している。
それが怖さでもある。
人間以上の力を全力で使ってくる。
しかし、付けいる隙でもある。
冷静な判断が出来ないのだから。
飛びかかってくる怪物。
それに向けて手近にあったものを投げつけていく。
ボールペンにホチキスにハサミにカッターなどなど。
ただの文房具を顔面めがけて飛ばしていく。
なんならコピー用紙も。
相手の視界を塞ぐためだ。
殺傷能力などなくても良い。
欲しいのは、相手が動きを止める瞬間。
視界が塞がれて躊躇いが発生するところを狙う。
分厚い筋肉に覆われてても、決して防げない急所を。
その時、目に不可解なものが見えた。
怪物の体の各所に様々な点があらわれる。
なんだ、と思うがすぐに理解する、
本能的に察知する。
そこが急所だと。
狙い目になるつけいる隙だと。
そこにめがけてナイフを突き刺す。
呆気ないほど簡単にナイフは肉の厚みを貫通していく。
その一撃で怪物は絶命した。
同じような点は他の怪物にも見える。
それらも同じようにナイフを繰り出して倒していく。
驚くほど簡単に怪物は倒れていった。
「なんだこれ」
倒れた怪物が塵芥になって消えていく。
それを見ながらヒロキは驚いく。
いきなり見えるようになった不思議な点について考えながら。