7 死体は強力な怪物に変化・進化しました
動いて一カ所に集まった死体。
それらは崩れて塵芥になり、一つにまとまる。
別々の個人だったものが一つに融合した。
それは練り込まれるようにうごめき、盛り上がっていく。
「まずいよな……」
崩れさって一つになって、大きく盛り上がっていく。
そんな元死体を見て、ヒロキは危険を感じていった。
よからぬ何かが生まれていく。
そんな気がしてならない。
なのだが、逃げる気が起こらなかった。
怖いは怖いが、何が起こってるのかを見ておきたかった。
しっかり見届けないとまずいとも思っていた。
そんなヒロキの前で、一つになった粉状の死体が形を作っていく。
大きく厚みのある体をした人型の怪物に。
姿形は変化した連中と変わらない。
しかし、大きさは一回り大きくなってる。
背丈は三メートルほど。
体の厚みも大きく、筋肉が太く盛り上がってる。
そんな分厚いからだの上にのっかる頭もいかついものだった。
先ほど倒した変化した連中に似ている。
基本的な形は人間のものだが、口の部分だけが犬のように突き出している。
それが職場の中にあらわれた。
さすがにこれは相手に出来ないと思ったヒロキは外に出た。
死体の合体した怪物では、出入り口をくぐれないと思ったからだ。
幸い、怪物は出入り口の方には向かってこなかった。
窓へと飛び込み、そこから外に飛び出していった。
六階にある会社で使ってた部屋から地上まで。
人間なら大けがは避けられない高さだ。
それを平然と飛び降りていく。
ヒロキはそれを出入り口の外から見ていた。
安心と苦悩をおぼえながら。
死体から出来上がった怪物が外に出ていった事に安心を。
すぐにそいつが襲いかかってくる事はない。
だが、外に出たという事は、見るからに凶悪な怪物が徘徊してるという事になる。
どうにかこの場所から脱出しようにも、怪物を倒さないといけない。
憂鬱にもなろうというもの。
「あんなの、どうやって倒せっていうんだよ」
体格も体力も大きく人間を凌ぐのは間違いない。
それを一般的な体力しかもたないヒロキが倒せるとは思えなかった。
更に懸念がある。
そんな怪物が一匹だけとは思えない。
他の場所でもおそらく同じような怪物が出現してるだろう。
そんな怪物がそこかしこをうるといてる。
これで迂闊に外に出られなくなった。
扉が開いていても、ビルの中に閉じ込められてるようなものだ。
「まいったな」
どうすればいいのか全く分からない。