6 死体は死なない、なぜなら既に死んでるから
動き出した死体。
それらは一カ所に集まっていく。
ヒロキはその一体に向かい、ナイフを突き刺した。
効果があるかは分からない。
だが、急所を狙って突き刺していく。
何が起こってるのかは分からないが、放置したらまずい事になる。
そう思ったからだ。
根拠はない。
だが、死体が勝手に動いてるのだ。
それも、一カ所に集まろうとしてる。
何かしらの思惑や意図がなければそんな事をしないだろう。
それが何かは分からないが。
止めないとまずい事になる、そう思うには充分だ。
だいたい、いきなり人間が怪物に化けたのだ。
そこにある意味や意図、理由や原因は分かってない。
分からないからこそ、これから何が起こるか分からない。
確実に言える事は、ありえない事が今後も起こってもおかしくないという事。
これから先、更に様々な事が起こっても不思議は無い。
今、死体が動いて一カ所に集まろうとしてる。
それも更に良からぬ何かの前兆かもしれない。
なんとかして止めたかった。
なのだが、止める方法がない。
死体をいくら壊しても動きは止まらない。
心臓を突き刺そうが、喉を切ろうが無駄だ。
既に死んでるものをこれ以上殺す事はできない。
頭や手足を破壊できれば違うのかもしれないが、それは出来ない。
ナイフでは頭蓋骨を砕く事はできない。
手足も切り裂くのは難しい。
どうにかしないと、と思っても打つ手が無い。
どうにもならないうちに死体が一カ所に集まる。
そこで死体は崩れおちていった。
体が分解され、塵芥のようになる。
それで終わってくれれば良かったが、そこから更に変化が起きていく。