54 光り輝くおぞましい世界で
政府関係者に見つかること。
今のヒロキ達にとってこれが一番の面倒だった。
本来なら保護を求めるべきだろう。
だが、今のヒロキ達にはそれが最善とは思えない。
むしろ、面倒と厄介の中に飛び込むようにしか思えなかった。
行けば確実に確保される。
そして、様々な制約を受けるだろう。
行動の自由はまず存在しない。
それが良いこととは思えなかった。
それに、その他大勢と一緒というのは色々面倒が起こる。
泥棒に勢力争い、地位や権力闘争などなど。
手にしたものを奪われるのは当たり前になる。
人間が集団になると起こる問題が必ず発生する。
災害からの避難先であってもこれは変わらない。
そんな馬鹿げた所に入るつもりはなかった。
何が悲しくて、自ら収容所に入らねばならないのか?
監獄に好んで入る者はいない。
何より大きな問題は、人があつまってる事だ。
色々変化したこの世界では悲惨な事になる。
「誰かが怪物になったら終わりだろ」
集団の中にはそうなる人間が確実に発生する。
それはもう怪物の巣といってよい。
まだなってないだけで、いずれそうなる。
そんな所に出向いてどうするのか?
「まず間違いなくそうなるよ」
ヒサトモも自分の濃緑を使って断言する。
「そうなる人間の気配がある。
まだなってないけど、そのうち怪物になる」
なら、出向くわけにはいかない。
とはいえ怪物から解放した者達を見捨てるのも気が引ける。
放置したとて何の問題もないが。
「途中まで見送ってやろう」
見つからない限界の所までは付き合う。
そこからは自分でどうにかしてもらう事にした。
「面倒だな」
何をするにしても厄介がつきまとう。
色々な変化があらわれてからこんな調子だ。
これからもこの状態は続くだろう。
そう思うと気が滅入る。
思わず空を見上げる。
輝く光の幕が目に入る。
こんな状況でなければ綺麗だと思えたのかもしれない。
しかし、空に輝くオーロラはこの世界が変化した証だ。
だからだろうか、毒々しいまでに禍々しくおぞましいものにしか見えない。
光と共に悪意をを振りまいているように思えてしまう。
明るく照らし出される世界。
見通しは悪くは無い。
しかし、決して安穏と出来るわけではない。
光に浮き上がる世界は、間違いなく地獄なのだから。
そんな世界の中で生きていくしかない。
明るく照らし出されているのに、先が見えない中で。
憂鬱にもなろうというものだ。
2章はこんなところで終了
気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を




