51 残念だけど敵なんだね
「それで────」
髪を掴みあげて拳を叩き込む。
何度も、何発も。
レベルが上がり、人間を超えた力を使って。
「この女は────」
女はそれに耐えている。
コンクリートなど簡単に破壊できるほどの打撃でも。
怪物化して耐久力が上がってるからだ。
しかし、ユウマのレベルは怪物化した女よりも高い。
そのレベル差がユウマを有利にしている。
「こんな世界になって────」
単にレベルの差があるだけではない。
もともとの能力でもユウマが上回ってる。
これは素質という部分での話だ。
仮に同じレベルであっても、ユウマの方が能力が高い。
個人差というものだ。
「怪物が出てきて────」
もともとの能力が高いので、怪物になってる女を簡単に凌駕できる。
一対一で戦っても負ける事はない。
不利を覆すような特殊な能力でも持ってない限り。
「今度は人間から怪物に鞍替えか────」
女にユウマから逃れられるような能力はない。
彼女が持ってるのは、基本的に交渉系の能力。
そして、精神に働きかける能力。
主に魅了。
言葉で相手を煙に巻き、精神を操作して好意を抱かせる。
「挙げ句に────」
好意を増幅させると言った方がよい。
言葉で相手に好感を抱かせてから、その気持ちを増幅させる。
もとより好意のない者には何の効果もない。
「自分も怪物になったと────」
今のユウマに好意などあるわけがない。
他の者にもだ。
あるとすれば嫌悪感。
それを増幅したら敵意や殺意しか残らないだろう。
「そんな奴に────」
そもそも怪物である。
人間ではない。
人としての姿や形を残してるとしてもだ。
本質的な部分で別の存在になってる。
明確なる人間の敵となっている。
「容赦なんかするかよ!」
倒すべき敵。
明確な敵。
生かしておけない存在。
生きてる限り、人間に害を為し続ける。
だからユウマは一切の容赦をしなかった。
これまでの恨みや怒りもある。
交際してると思っていた、大事な恋人だと思っていた。
だが、そう思っていたのはユウマだけ。
相手からは数多く確保した存在の一人。
そこに好意はあるのだろう。
だが、愛は無い。
生存戦略としては間違ってはいないのかもしれない。
だが、恋人と思っていた女が求めていたのは伴侶ではない。
愛する者では無い。
寄生先だ。
生活のために必要なものを手に入れる手段。
現金を持ってくる存在。
自分が生きていくための道具。
それが欲しいだけなのが今日分かった。
ヒサトモのおかげでそれが分かった。




