5 周りは怪物だらけ
怪物が死んで消えて、ビルの中には殺された者達の死体だけが残る。
あらわれた怪物を倒して、どうにか安全を確保した。
しかし、問題が消えたわけではない。
ここはビルの中だ。
外に出るには下に向かわねばならない。
他の階層を通らねばならない。
そこにいるかもしれない怪物との遭遇を考えねばならない。
さすがに多くの怪物を掻い潜っていくのは難しい。
それに、外に出ても安全とは言いがたい。
窓から見てみれば、外にも怪物が出回ってる。
そこにわざわざ出向くのは危険だ。
今はまだ建物の中にいる方が安全に思えた。
とはいえ、いつまでも安全ではないだろう。
しかし、どうしても疑問が出てくる。
どうしていきなり人間が怪物になったのか?
そうなる理由や原因が分からない。
兆候も特になかったのだ。
「なんでこうなってんだ?」
口から疑問が漏れる。
人がいきなり怪物に化ける。
ありえない事だ。
どんな理由や原因があればそうなるのか。
さっぱり分からない。
分からないが現実に起こってる。
だから否定は出来ない。
こんな事ありえないと言って現実逃避はできない。
実際にそこにありえないものが存在してるのだから。
ヒロキはそういった現実逃避をしようとは思わない。
常識から外れてようが、実際にそこにあるなら認める。
信じられないといって目を背けたりしない。
事実として存在するなら、そこにちゃんとあると受け入れる。
でないと対策をたてる事もできない。
現実から目を背け、夢や幻を信じても無駄だ。
空想をもとに考えて、意味の無い事をやらかすだけである。
まず、目の前に怪物がいる。
人間から変化した存在がいる。
それをしっかりと受け止める。
そんな怪物が周りに大量に出回っている。
その中でどうやって生き残るか?
「どうすっかな」
一匹ずつならどうにかなる。
だが、何匹も襲ってきたら対処出来ない。
話し合いも出来そうにない。
怪物は問答無用で人間に襲いかかってる。
そんな連中と共存は出来ない。
となると、戦って勝つしかない。
人間よりも強力で、ためらいなく人を襲う凶悪な存在に。
「どうしろってんだよ」
ぼやきが口から漏れる。
だが、そう言ってばかりもいられなくなる。
ヒロキの周りにある死体。
それらが動き出す。
立ち上がり、あるいは這いつくばって集まっていく。
「……え?」
さすがにこれには驚くしかなかった。