47 そこに彼女は確かにいた
そこには確かに見たくもないものがあった。
ユウマの恋人が捕まってる怪物の集団。
住宅街の中にある中学校。
そこを占拠している怪物共は、荒れ狂う狂乱の宴をひらいていた。
校庭に人間が集められていた。
テントや粗末な屋根が作られ、そこに押し込まれてる。
大半は男だ。
女は校舎の方にいた。
怪物と共に。
怪物の娯楽になっていた。
…………ならばまだ救いがあったかもしれない。
怪物は割と豊かに暮らしていた。
集めさせたのだろう、食糧などを貪ってる。
校庭の労働用の人間、男達がひもじい想いをしてるのとは対照的に。
校舎内にいる女達はその余録にあずかっていた。
怪物のお気に入りなのだから当然だろう。
そこに悲壮感や悲痛な表情は見えない。
怪物にはべって楽しんでいる。
表情や仕草、態度がそう見えるだけではない。
ヒサトモの超感覚的知覚による考えや心の読みとり。
ヒロキの直観に探知・察知。
そして、ユウマとコウシロウも目覚めてきた行動予測。
これらは程度の差はあっても相手の気持ちを読み取る能力である。
それがおおよそ全てを見渡すのか、一部に限定されてるかの違いがあるだけ。
そんな能力に目覚めているから分かってしまう。
彼女らは心から怪物といる事を喜んでると。
喜んで怪物にこびへつらってる。
側に侍ってる。
怪物が独占してる豊かさが目的というのもある。
しかし、それ以上に怪物という絶対的な強さを持つ存在に心酔している。
中には校庭に押し込まれた者達の恋人や妻もいる。
しかし、それらが彼氏や夫を振り返る事は無い。
彼らのために、少しでも食糧を確保するためにやむなく、という者は居ない。
校舎の中にいる女達は、怪物の側にいる事を求めている。
仕方なくでもなんでもなく、心の底から。
予想していた事だった。
他の怪物の集団でも同じような事が起こっていた。
ここも例外では無いというだけだ。
その中に、ユウマの恋人もいた。
ただそれだけの事だ。
「やろう」
ユウマが声をかけていく。
いたましそうな顔をするヒロキ達に。
「どうせ片付けなきゃならないんだ。
さっさとやっちまおう」
そう言ってから少しだけ間を置いて、
「あんなの見てるのも辛いからさ。
早く片付けたいんだ」
「…………分かった」
ヒロキはそう応える以外に何も出来なかった。




