26 いったい何処へ?
この日、怪物が出現した。
人間が化けて人に襲いかかった。
数は多くはない。
ヒロキの会社では数十人のうち数人が怪物になっただけ。
10人に1人くらいだ。
人間のままの者の方が多い。
しかし、その人間の姿を全く見なかった。
どこかに隠れてて表に出てないだけかもしれない。
だとしても、一人も見ないのは不思議だ。
とはいえ、不思議も何もないとも考えてしまう。
怪物は強い。
生身の人間を素手で殺せるほどだ。
そんな怪物によって、ヒロキの会社の人間も次々に殺された。
数匹の怪物によって大半がだ。
ヒロキはたまたまナイフを持ち込んでいたからどうにかなったが。
丸腰だったら死体の仲間入りをしていただろう。
なので、怪物の近くにいた者達は皆殺しになった。
そうなってる可能性が高い。
その場を生きのびる事が出来ても、逃げた先にいた怪物に殺されるかもしれない。
今の時点まで生きのびてる者はかなり少ないのかもしれない。
生き残ってる者も簡単に表に出てこれないだろう。
怪物が消えるのを待って身を潜めてるしかない。
対抗できるだけの力を持ってるならともかく。
ヒロキのように怪物を倒してレベルを上げねば厳しいだろう。
そういう状況だろうから、他の人の姿が見えないのはしょうがない。
しかし、全く誰の姿も見ないというのもおかしなものだ。
一人くらいは外に出ていても良いはずだ。
ヒロキのいるのはオフィス街だ。
都心ではないが、日中はかなりの人がいる。
その人が全くいないというのは異常だ。
「全滅したのか?」
否定できないほど現実味のある可能性だった。
それに、怪物の姿も見えないのが怖い。
ヒロキもそれなりに倒したが、それで全部という事は無いはずだ。
10分の1の確率で怪物になるなら、かなりの数がいる事になる。
その姿を車を手に入れたあたりから見てない。
「どうなってんだか」
いればいたで鬱陶しい。
しかし、姿が見えなければ不気味さをおぼえる。
どんな行動をしてても不安を与えるのが嫌なところだ。
とはいっても、心配してても始まらない。
今はただ、生きていく事だけ考えてるしかない。
「明日もあちこち回るか」
必要な物資を確保するためにだ。
この先、奪い合いになる前にさっさと行動する事にする。




