21 突撃してくるだけなら楽なのだが
怪物達はバカではない。
空き缶が落ちる音を聞いて集まってきた者達。
それらの全てがヒロキに襲いかかったのではない。
何匹かは近くにいる怪物達に呼びかけにいった。
大声を出して呼び集めてきた。
そして、大量に集めてヒロキの所へと戻ってきた。
ヒロキに襲いかかるために。
また、馬鹿正直に出入り口や階段、非常口から飛び込みはしない。
壁を這い上がってくるだけの身体能力があるのだ。
ならば、窓を割って侵入した方が楽だ。
非常口などと違い、それこそ壁一面に侵入口があるのだから。
一度に大量に中に入る事が出来る。
ヒロキの見てないところで、怪物はそんな動きをしていた。
人間に比べれば衝動的な部分はある。
しかし、決してそれだけでないのは明白だ。
「やりやがった」
窓から大量に入ってきた怪物への感想だ。
予想外だった。
意外だった。
人間としての常識で考えていた。
普通、窓から侵入するなどと考えない。
そんな事が出来る人間はいない。
だが、相手は怪物だ。
根本的な能力が異なる。
人間に出来ない事をやってのける。
それが分かってなかった。
失念していた。
おかげで不意を突かれてしまった。
非常口から来てる者達との間に挟まれる。
前後をとられた。
「まずいな……」
さてどうするか?
悩みどころである。
とはいえ時間はない。
一瞬にして答えを出さねばならない。
怪物の『行動予測』から隙間を探すが、抜け道は無い。
『探知・察知』でも、相手の動きから完全に逃れる事は出来ない。
そんな中で、『直観』が一つの方向を示していた。
そこに行くのか、と思ったが迷ってる場合でもない。
理屈や理論をすっ飛ばして答えを出すのが『直観』だ。
頭で考えてもしょうがない。
答えはやってみるまで分からない。
後で振り返って考えてみるまで分からない。
今はただただ信じるしかない。
信じて動いていく。
(でも)
動きながら考える。
そこにいる怪物を倒し、わずかにある隙間をぬいながら進み。
(本当にここかよ)
辿り着いた角の隅。
そこを背にして怪物に向き直る。




