2 その日、全てが変わった
「どうなってんだよ」
ヒロキはぼやきながらそれを見ていた。
突如叫びだし、身もだえしていく隣席の者。
前々から嫌味ったらしい態度が気にくわなかった奴だ。
そいつがいきなり叫んで立ち上がった。
他の席でも同じ事が起こっていた。
そこそこ広いオフィスビルの一室。
30人ほどが詰めるその場で、数人の人間が絶叫を上げていた。
周りの者は何事かと思ってそれを見ている。
そんな彼らの前で、叫んでいた者達の姿が変化していく。
筋肉が異様なほど発達し、肉の厚みを増していく。
背丈も伸びて、身長が頭一つ二つ分は増えていく。
当然着ている衣服はちぎれ飛ぶ。
更に頭もそんな体躯に合わせるように変化していった。
素っ裸になったその体躯を、勢いよく生える剛毛が覆っていく。
背中や手足は体毛によって隠されていく。
口の部分が犬のように大きく前に張りだす。
顔つきも骨がはりだし、筋肉が硬く盛り上がっていかつくなっていく。
姿形は人間とは言いがたいものになっていく。
怪物。
室内にいた数人がそう言うしかない姿に変わる。
それが終わったのか、口から吐き出されていた悲鳴が終わる。
だが、それで問題が解決したわけではない。
怪物となった者どもは、近くにいた者達に襲いかかっていった。
襲われた者が吹き飛ばされる。
文字通りに壁に叩きつけられ、床に落ちていく。
それを見て、大半の者が出入り口に殺到していく。
しかし、この部屋の入り口は一つ。
一気に殺到したから団子状態になる。
そこに怪物が襲いかかる。