15 強力な怪物は倒したが、それが全てではない
手間はかかったが巨大な怪物を倒した。
苦戦はした。
だが、思った程ではない。
「こんなもんか?」
どうにも納得しがたい気分になる。
思った以上に上手くいってる。
喜べばいいのだろうが、疑問の方が先に出て来る。
体格差や身体能力を考えればこんなに上手くいくはずがないと。
「やっぱり、レベルでも上がってんのか?」
馬鹿げた想像だと思うが、そうでもなければ説明がつかない。
そもそも、弱点が見えるようになってるのが異常だ。
更には敵の行動予測まで出来るようになってる。
普通は出来ないことが出来ている。
「何か関係があるのかねえ……」
窓際に立ってオーロラを見上げる。
それすらも、この異常事態に関係してるように見える。
実際、死体が怪物になる瞬間に降り注いできていた。
無関係とは思えない。
ただ、おかしな事が起こり続けてる状況だ。
続けて更に異常な事が起こってもおかしくはない。
世界はかなり変わってしまったが、それが終わってるかどうか。
もしかしたら、まだ変化は継続中なのかもしれない。
そう考えるとうんざりする。
「やんなるな」
これ以上、おかしな事は起こって欲しくなかった。
そう思うが、周りの状況がヒロキの思い通りになるわけもない。
怪物はそこらをうろついてるし、いつでも襲ってくる。
窓際から地上を見れば、何匹かがうろついてるのが分かる。
そいつらがヒロキを見つけて襲ってくるかもしれない・
幸い、ヒロキが立ってる所は視界に入らないのか、気付く事もなく通り過ぎていく。
怪物が上を向かない限りは安全だろう。
ただ、生きてる人間の姿は見かけない。
怪物がうろついてる中に飛び出すわけもないが。
そもそも生き残りがいるのかどうか。
怪物の戦闘力を考えれば、生存は絶望的に思える。
どこかにいるかもしれないが、それらを見つけたり助ける余裕もない。
危機に陥ってる者達は多いだろうが、それらは自分で頑張ってもらうしかない。
ヒロキには、助ける理由も義理も義務もないのだから。
そういった事は、漫画やアニメに出てくるようなヒーローの仕事だ。
あるいは警察や自衛隊などの仕事だ。
利点があるならともかく、一般人のヒロキが無理して誰かを助けねばならないわけではない。
人間を凌駕する能力を持つのが怪物だ。
そんなのと戦うような危険をおかす理由などヒロキにはない。
ただ、今ならうろついてる怪物をどうにか出来る気はしている。
それらを見下ろすヒロキの目には、そいつらの強さが分かる。
『レベル8』
その数値がヒロキには見えていた。




