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1 ブラックな日々に別れを告げるため
「……やってやる」
真名賀ヒロキは決意を胸に会社に向かっていった。
鞄にナイフを忍ばせて。
色々ともう限界だった。
専門学校卒業後に入った会社。
そこは見事なまでにブラックだった。
ろくでなしが上司で、同僚はクズ。
仕事は押しつけられ、始発・終電は当たり前。
残業と休日出勤の給料は支払われず。
経費は全て自腹。
さすがにこんな状況に耐えるつもりもなくなった。
腹いせも兼ねて、この日全てを終わらせるつもりでいた。
このままだと会社に殺される。
だったら道連れで何人か巻き込まないともったいない。
ついでに、これまでの人生で面倒をかけてきた連中もと思っていた。
ブラックなのは会社だけではない。
これまでの人生もブラックまみれだった。
家族に隣近所に学校にと。
良い思い出なんかありはしない。
あってもそれが行動を止める理由にはならなかった。
そんなヒロキが会社に到着した時。
それは起こった。