終章
「あそこの、君嶋医院のご夫妻って仲いいわよね」
「ねえ。二人で仲良く買い物してるところとか、一緒に手を繋いで歩いてるところ、よく見るもの」
「医者でお金持ちで夫婦円満だなんて、羨ましいわあ」
「子供ももう長男は高校生なのにね。私の息子と同い年なのよ」
「へえ。あの二人の子供だから、それはもう素晴らしいんでしょう?」
「ええ。性格もいいし、やっぱり血筋かしらねえ」
「でも、ねえ」
「あら、そちらも思うところがあるの?」
「も、って言うと?」
「どこにも角を立てなくて、こうやって近所の評判もいいんだけど、なんかねえ。皆言ってるのよ」
「私だけじゃないのね。そう。何か、おかしいのよ」
「そのなにかっていうのが、結局いつもわからないんだけど」
「そう、こう、おままごとのような」
「目に見えないぎこちなさがあるのよね」
「……あ。あれ見て」
「公園で子供が人形と遊んでいるけど、それが?」
「ううん、と。何となくあれに似てるなあ、って」
「言われてみれば」
「……」
「人形遊びって、人間が人形を操っているように見えるけど、違うのよね」
「え?」
「人間が人形のことを見ているとき、人形も人間を見ているのよ」
「よくわからないわ」
「だから、人形と人間に主従関係なんてないのよ。どっちもお互いを見つめている。人形はいっぱいあるし、人間もいっぱいある。けれど人形は買われた瞬間からその人だけのもので、人間も買った瞬間からその人形のもので、だから、えーっと……」
「何を言ってるのかしら?」
「うーん、とごめんなさい。よくわからなくなっちゃったわ」
「……あ、もうこんな時間。娘の迎えにいかないと」
「そう。それじゃあまた後で」
「ええ。それじゃあね」
ご愛読ありがとうございました。
こちらは以前昔に私が書いた小説を載せたものです。
5年ぶりくらいに読み返したのですが、中々衝撃的な内容でした笑
作者としても推敲しながら、読者として楽しんでしまいました。
感情がぐちゃぐちゃになりますね。。笑
読者の方も思うところがたくさんあると思いますので、是非、感想などをお書きください。




