プロローグ
誰かの声がする、グチャっと音がする、その音はグチャっとする音は周りから沢山聞こえていたが、どんどん遠くの方に行っている様だ、でも俺は何も出来ない、目が見えないので何が起きているのかすら分からない状態だ。
俺の名前は東田雪彦、中学生だが学校に行ける金もなく肥やしを運んで生きる糧を得る途中に、米国の戦闘機に見つかってしまった、本来なら早く隠れなければいけないが俺はその戦闘機の妙な形に魅入ってしまう、その戦闘機は不思議な形をしていた、その米国の戦闘機は胴体に四角い穴が開いているのだ、そして逃げ遅れた俺はその米国の戦闘機の機関銃に体を撃ち抜かれた、俺の血と肥溜めの糞が交じり合った地面に俺は倒れて意識を失った、おそらく俺の今の状態は意識が戻って耳だけ通じる状態になっていると思われる。
「あら?、アナタは目が見えないのね、ごめんなさいね私が召喚したのに不完全な状態で召喚してしまって、さぁ、手を繋ぎましょう、私の見ている景色を繋げてあげる、これでどんな状態か判るはずだわ!」
その声はとても可愛らしく、子供が大人ぶって話している様な感じがした、そして暖かくて柔らかな感触が伝わってきた、俺はその感触を思い出す、この感触は手と手を繋いでいる感触に似ている、だが何かいつもとは何か違う感触だった。
「さぁ、見えるでしょう、もう少し目立たない場所に行きますよ!、しっかり手を繋いで離さないでね!」
手を繋いだ瞬間、俺の目の前には鬱蒼とした林が見える景色が広がっていた、そして泥だらけの人の形をした奴が見えた、俺はビックリして驚くとそいつもビックリしていた、何なんだコイツは!、そして笑い声が聞こえた。
「ウフフ、自分の姿を見てビックリしないの!、さぁ、雨が強くなってきたわ、早く雨から凌げる場所を見つけないと体が溶けてしまうわよ!、さぁ、頑張って歩いて、苦しくても我慢してね!」
俺は躓きそうになりながら俺に手を繋いでくれている声の主に付いていく、物凄く歩きづらいのは俺の見ている景色が俺の体ではなく声の主の見ている景色なんだと思った瞬間、俺は自分の体が泥だらけの人の形をした奴という設定の夢を見ているのだと思うことにした、どうにかして辻褄を合わせた結果、考えた結論がそれだった………、とにかく夢の世界を夢が覚めるまで楽しもうと思う事にした。
「ふう、どうにか雨を凌げる場所が見つかってよかったわ!、わっ、蝙蝠の死骸ね!、びっくりさせないでよ!」
どうやら洞窟を見つけた様で、其処に一時的に避難するようだ、そこには蝙蝠の死骸が在って俺はそれを避けようとしたのだが、俺の見ている景色は俺の手を繋いでくれている声の主な訳で、俺の本来の体である泥だらけの人の形をした奴は盛大にスッ転んだ。
「きゃぁ、だ、大丈夫!、ケガしてないかしら………」
痛い、いや、ケガの痛さとは違う、風邪で寝込んだ時に近い感じの痛さだ、風邪の痛さは頭が痛いとか、体がだるいとかだが、今の俺は風邪で頭が痛い状態に近いが頭も含めた全身が痛くて全く動けない、痛くて目を閉じたくても俺の手を繋いでくれている状態だと目が閉じれないので、仕方なく俺は手を離した、そして真っ暗になる、体から痛みが和らいできて、目を開けると俺と同じ様な泥だらけの人の形をした奴が其処に居た、そしてその泥だらけの人の形をした奴は服を着ていた白い色が目立つドレスを………。
「ど~おぉ、ん、アナタいつの間にか目が付いてるわ!、一体どうして?、最初からもしかして在ったのかしら?、そういえば此処には蝙蝠の死骸が在ったのよねぇ~、無い!、確かに此処にあったのに!」
そいつは俺の心配をした後、直ぐに蝙蝠が居ない事を気にしだした、そして俺はどうやら目が見える様になったらしい、俺がドレスを着た泥人間を見つめていると、ドレスを着た泥人間も俺の眼をじっと見つめて何かを見つけた様に俺に話しかける。
「アナタの目ってその体の大きさに比べると小さい気がする!、もしかしたらアナタは蝙蝠の死骸から、蝙蝠の目を取り込んだの……、そして自分の物にした、自分の体と合成した……、もしもそうであるならアナタはとんでもない能力を持っているわ!」
「君は誰……、此処は何処なの……」
「わぁぁぁぁ!?、アナタって喋ることも出来るのね、凄いわ、……わ、私の名前はブリターニャ、アナタを召喚した者よ!」
「召喚?、此処は何処なの、もしかして米国か?」
「米国?、良く分からないけど違うわよ、この場所の名前はアルビオンよ!」
「アルビオン?、良く分からないが米国の何処かだろうな……、俺は捕まったみたいだな、こんな子供を捕まえるなんて、米国ってのは何を考えているんだ!、この体は何だ!?、君も俺もボロボロじゃないか!、人体実験の道具にされて、俺をこれから大日本帝国の軍隊と戦わせるつもりなのか?、鬼畜な米国らしいやり方だな!」
「アナタ何か勘違いをしているみたいだけど、此処はベイコクという場所では無いし、ベイコクという場所も聞いた事が無いわ!」
「米国を聞いた事が無い!?、いや、米国というのは国だぞ!、知らない筈がないだろう!」
「知らないわ、ベイコク国?、王国なのかしら、それとも帝国なの?、とにかく此処はベイコクという所とは全く関係は無いから安心してね!」
「米国とは無関係なのか……、俺はどうすればいいんだ!、米国と無関係という事は大日本帝国と仲良くできる可能性があるのか?、もしその可能性があるなら俺は何でもする!、教えてくれ俺はどうすればいい?」
「とにかくアナタは私の部下という状態だから、私の言う事を聞いて欲しいわ!」
「分かった、それでブリターニャ、これからどうするんだ?」
「雨が止んだら、すこしこの森の高台に登って街の様子を見てみたいの、だから今は休んでいてね!」
「分かった、それじゃ雨が止んだら起こしてくれ、俺は寝る」(スヤァ
「いやいや、普通は部下がって………、眠るの早っ!、それにしてもこの子には何処か別の世界で生きてきた記憶があるのね、ゴメンね、こんな地獄の様な所に呼び出してしまって………」
俺はこの夢の世界が終わる事を願いながら、眠りに着いた、そして俺を優しく起こす声で目が覚める。
「ねぇ、起きて、ねぇ、もう雨が止んだから起きて!」
「夢じゃなかったのか………、いや、まだ夢の続きを俺は見せられているのか!?」
「寝ぼけてないで!、まだよく分からないみたいだから付いて来なさい、この世界を眺められる場所まで行くわよ!」
「この世界か……、よしっ、行こう!」
俺は夢を見続ける地獄から抜け出す為眠りに入ったが、まだ夢から俺を目覚めさせてはくれないらしい、俺はブリターニャと共に森の高い所へ登って行くと、遠くの景色が見える様になってきた、沢山の明かりが見えるがよく目を凝らして見てみるとその明かりは家が燃えている明かりだった、そして大きなお城が燃えているのがよく見える場所でブリターニャは立ち止まり俺に話す。
「ねぇ、アナタは名前があるのかしら、もし無いのであれば、私がアナタの名前を考えて名前を付けてあげるわ!」
「いや、俺にはちゃんと名前があるんだ!、俺の名前は東田雪彦だ、東田が名字で雪彦が名前だ!、だから俺の名前は雪彦だ!」
「ユキヒコ?、不思議な名前ね……、たぶんアナタの居た世界の言葉なのね、そのユキヒコという名前はアナタの居た世界ではどういう意味なの?」
「雪は寒い時に空から降ってくる冷たくて白い奴だよ、今も降っている……コレの事だ!」
そう言って俺は夜になり寒くなってきて降り出した白い雪を掌の上に乗せてブリターニャに見せた、いつもなら直ぐ溶けてしまう白い雪の結晶は今の俺の泥で出来た手の掌の上では、溶けずに残っている、ブリターニャは頷いて更に俺に質問する。
「ユキヒコのユキの意味は分かったわ、じゃあヒコはどういう意味なの?」
「えっ、彦?、彦の意味ぃ~!?、えぇぇ~、彦の意味かぁ……」
「ど、どうしたの?、意味が無いなら別にいいのよ、意味が無いけど付いてる名前っていう、そういうのもあるらしいわ」
「いや、一応意味はある、姫が男の場合が彦だ!、だからブリターニャがお姫様だったら、ブリターニャ姫だけど、そのブリターニャが男だったら、ブリターニャ彦になる、まぁそんな感じで男の子に付けられる名前だ!」
「えっ、アナタ男の子だったの?」
「そうだけど、何か問題でも、まぁ今は性別なんてどうにもならないけどね!」
「フフ、そうね!、こんな体だもんね、それにしても私が男の子だったら、ブリターニャ彦になるのね!」
「いや、彦は別に王族に産まれた男の子に付けられる名前じゃないから、と、とにかく彦の意味は何と無く伝わったかなぁ~、まぁ、男の子の名前だよ!」
「分かってるから大丈夫よ!、それよりさっきブリターニャがお姫様だったらって言ってたけど、本当に私がお姫様だったらどう思う?」
「どうした?、大丈夫じゃないんじゃないのか?、おかしな事を言ってるぞ!」
「フフフ、ねぇ、私はあの燃えているお城に住んでいたんだよぉ、私はお姫様だったんだよぉ、信じて貰えないかもしれないけどぉ……」
ブリターニャは笑みを浮かべながら燃えている城を眺めていた、笑っていると思っていたが、ブリターニャは瞳からは涙が流れていて、悲しみを堪えて居るのが分かった、俺はブリターニャに城の名前を尋ねる。
「ねぇ、ブリターニャ!、おのお城は何て言う名前なの?」
「あのお城の名前はロンディニ城、私が生まれ育ったお城だった……」