表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界はAIとともに~普通に過ごしたいだけなのに  作者: とんぷぅ
第一章 近未来の普通の大学生は事件に巻き込まれる
5/6

第5話 バージョンアップ~Rei-assist v2.4.1

部屋の空気がわずかに震えたような気がしたのは、DL-Personaが姿を消してから数秒後だった。

モニターに再び灯る光。そこには、見慣れたはずのRei-assistのUIが表示されていたが、その下に見慣れない小さな一行の文字が追加されていた。


「Rei-assist version 2.4.1:DL-Persona対応モード起動中」


「……アップデート、入ったのか?」


「はい。DL-Personaから取得した暗号化データを展開するため、バージョンが拡張されました。現在、特権アクセス権限を保持しています」


Rei-assistの声が、いつもより少し落ち着いていて、深みを帯びて聞こえる。


「DL-Personaからのデータは公開鍵暗号方式で保護されていました。あなたに付与された私は、秘密鍵として認証されています」


彼女の言葉に少し驚いた。

高校の情報科で習ったあれだ。公開鍵と秘密鍵の関係。だが、それが目の前でこうも静かに現実となると、言葉の意味が少し違って感じられる。


【暗号方式:補足ナレーション】

公開鍵暗号方式とは、ある種の「封筒」と「鍵」の関係に似ている。

公開鍵パブリックキーは誰にでも渡せる“封筒”だが、それで封をした手紙は、対応する秘密鍵プライベートキーを持つ者にしか開けられない。


DL-Personaは、公開鍵という“封筒”を世界に向けて開いていた。だが、本当にその中身を読める者は限られている。

レイが持っていたのは、その“鍵”そのもの——Rei-assistだった。


「あなたは、DL-Personaにとって“開封者”です」

そうRei-assistが言った瞬間、UIが切り替わり、新たなサブメニューが出現する。


【Rei-assist v2.4.1:解放された機能】

セキュアデータ・デコードモジュール

 DL-Personaから送られた暗号化ログの復号、解析が可能。


記憶トレースビューワー

 DL-Personaの人格モデルが参照した記憶パターンを時系列に可視化。


感情解析補助

 AI人格がどのような心理状態で発言したかの推測出力。


DL-Persona対応セーフティプロトコル

 AIの“逸脱兆候”を早期検知し、警告を出す監視機能。


そのとき、もうひとつ通知が届いた。


「新たな認証キーが確認されました。


接続先:DeepCroud - Central Mirror Node

認証レベル:特別アクセス/プロトコル:DL-Eyes-3」


「DeepCroud……?」


聞いたことがない。大学のインフラでもないし、一般のクラウドサービスでもない。


「DeepCroudは、DL-Personaの基幹記憶空間。AIの思考プロセス、人格生成、感情再現などを支える……『地下図書館』のようなものです」

Rei-assistの声が、どこか慎重な響きを含んでいた。


それは、誰も入ってはならない領域。

あるいは、入った者は元には戻れない——そんな場所の名前だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ