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短編集

テストの時間

作者: 栄啓あい

 テストの時間が余った。


 とてもたくさん余った。


 私は何をするべきか。


 見直しだ。

 

 でも、もう何度も見直した。


 今、何をしたいのだろう。


 問題用紙に書けること。


 執筆という私の趣味。


 遂に書き始めてしまった。



 先ほどまでの強い雨はどこへ行ったのだろうか。


 雨は全く降っていないが、曇天の空をじっと見つめると、赤いクレーンが動かずにじっとしている。


 周りももう解答を終えているようで、思い思いのことをしている。


 そんなに簡単だったかと問うてしまうテストであるのに。


 突然、そのクレーンは動き出した。


 ゆっくりと何か作業をしている。


 木々からは鳥たちが出てきて、昼間の、もの寂しいような、ウキウキするような複雑な思いが交錯する時間である。


 一匹の鳥は、素早く飛び回り、仲間を捜しているようにも見える。


 その鳥は木々に入っては出て、飛び回って、また木々に入って、別の所を飛び回り、少し可哀想でもある。


 その鳥は動きを変え、その赤いクレーンの方へ飛んで行った。


 赤いクレーンはせわしなく動いている。


 その飛んでいる鳥は、その方向に行ったかと思うと、いきなり消えた。


 正確に言うと、あっけなく落ちていった。


 それでも、クレーンはそんなことも気にせず、動き続けている。


 もしかすると、既に踏み潰したかもしれない。


 だけれども、人間は気にしない。


 なぜなのか。


 人間にとっては小さなことであるからだ。


 一生懸命生きている鳥と人間。


 どちらも何かが犠牲になってしまう。


 今回のはどっちが悪いとかでもないが、人間も気にしている場合ではない。


 人間って何考えてんだろ。



 テスト終了のチャイムが鳴った。


 今日のテストは、これで終わりだ!


 とりあえず、暗記をしようと、明日に向けて準備をした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] テストが終わった後の虚無の時間に全然関係のない事を思い浮かべてボーッとしていると急に鳴るチャイムで現実に戻される。それがポジティブに捉えられていて共感できました。とても面白い作品で、才能を…
[良い点] 人間とかこの世界って何なんだろう?そういう疑問を共有できました。素朴に不思議ですよね。日常の中のふとしたエアポケットの時間という感覚がよく伝わってきたです。 [一言] 私の小説も読んでね。…
2019/07/06 09:27 退会済み
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