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サイドストーリー: 「おかえり」

瑛理の過去を軽くまとめたサイドストーリーです。

私の両親はとても忙しい。2人とも仕事人間で、あまり一緒にいた記憶がない。

でも、幼い私は寂しいとは思わなかった。

なぜなら、両親の代わりにそばにいてくれた人がいたから。


お父さんの弟だというその人は、弟にしては歳が離れていて、私にとってはお兄ちゃんという感じだった。

両親に代わって、保育園の送り迎え、ご飯の支度、お風呂、添い寝など、私の我がままをすべてかなえてくれて、甘えさせてくれた。

そんな生活がずっと続くのだと思っていた。



ある日、彼は私の前からいなくなった。


お父さんに聞いたところ、遠くの大学へ行ったのだと知らされた。

しかし、当時8歳と幼かった私は、現実を受け止めきれず、泣きわめいて駄々をこねた。


「あたしがわがままばかり言ったから!?いい子にするから!!言うことなんでも聞くから、帰ってきてよぉ!!!」


と叫び、ふさぎ込んでしまい、両親を困らせた。


大切なものは失ってから気付くとよく言うけれど、本当にその通りだと思った。

あれが、私の初恋だったんだな、と今になって思う。



それから、私は努力をした。猛勉強をして、トップクラスの成績をとり続け、料理や掃除など家事もこなした。


全ては、次に彼に会ったときに恥ずかしくない自分でありたいから。


両親に隠れて彼の住んでいるところを調べて、こっそりとその近くの高校を受験した。

バレたときは怒られると覚悟したが、両親は自分たちが仕事ばかりで私にかまってこなかったこともあり、私の意思を尊重してくれた。



そして、私は今彼の家にいる。


休日は家からほとんど出ないというお父さんからの情報のもと、しつこくインターホンを鳴らし続け、彼が出てきたときは、思わず涙が出るかと思った。

しかし、泣いてしまっては、ただ彼を困らせるだけだと思って精いっぱい笑って見せた。


やっと会えたのだ。今度ばかりはもう離さない。

あのころとは逆に思う存分甘えさせてあげ、依存させて離れられなくしてやるのだ。

離れていた7年の歳月は大きいけれど、それはこれからの日々で取り返していけばいい。

これは、私の『初恋』という名の7年越しの戦い。





彼が玄関のカギを開けて扉を開く。



私は、今日も、感謝と彼への大切な想いをこめて笑顔で告げる。


「おかえりなさいっ!」

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