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5.お風呂上がりと髪

彼女がお風呂場へと消えたあと、俺は気合いを入れて立ち上がり、洗い物をするために台所へと向かった。


食った後ってどうしてもダラダラしちまうんだよなぁ。

それも料理をしなくなった理由の一つか。


シンクの前に立つと、お風呂場からシャワーの音が聞こえる。


・・・ホント、家に誰かがいるって不思議な感じだよな。


でも、自分一人だと怠けてしまうが、誰かがいるだけでやろうと思えてしまう。

それも悪くはないな、と苦笑しつつ洗い物を片付ける。


調理に使ったものは既に洗ってあり、お皿や箸だけだったのですぐに洗い終えてしまう。


終えてから再びソファでダラける。


スマホをイジリながら数十分後、彼女がお風呂から上がってきた。


「康介さーん、お風呂空いたよー」

「おう」

と返事しつつ彼女をチラリと見ると、ドキッとしてしまう。


濡れた黒髪、火照った顔、薄ピンクのパジャマ。

そこにいるのは無防備な女の子。


恋愛感情に関係なくドキッとしてしまうのは男の性というヤツか。


彼女はこちらへ歩いてくる途中で何かと閃いたようにハッとなり、トテテッと駆け寄ってきた。

「ねえ康介さん!髪の毛乾かして!」

「あん?ドライヤーなら洗面所にあったろ。使うなら勝手に使え」

「むー。そうじゃなくて!康介さんに乾かして欲しいのっ!昔みたいにっ」

「はぁ・・・」

ため息をつく。


たしかに昔は、仕事で忙しい兄夫婦に代わって色々と瑛理の面倒を見ていた。

ご飯を作ったり、髪を乾かしたり、一緒に寝たり。

両親がいない間の寂しさが紛れるなら、と彼女が望んだことはできる限り叶えてあげた。


しかし、それも俺が高校生までの話だ。

当時は俺が18歳、瑛理は8歳。なんの問題もない・・・はずだ。当時の俺がロリコンでない限りは。


しかし今は25歳の俺と15歳の瑛理。お互いに色々と成長しているし、昔と同じようにというのは無理があるのではないだろうか。

俺の考えすぎなのだろうか。彼女は何を考えているのだろうか。


「どうしたの?早く早く!」


いつの間に取ってきたのか、彼女の手にはドライヤーが握られている。え、お前瞬間移動とか使えちゃう系?


「してくれないなら、明日から康介さんのご飯は食パンの耳になります!」

思わず笑ってしまう。食パンの耳って・・・。


でも、こうしている分には、まだまだ子供だなぁと思う。

ま、今日くらいは仕方ねえか。

瑛理の手からドライヤーを受け取り、ソファに横向きに座って後ろから髪を乾かしていく。

髪同士が絡まないように手櫛で丁寧に髪を梳いていく。


俺のボサボサな髪と違って、こいつの髪は昔と変わらずサラサラだなぁ。

いつまでも触っていたいようなこの手触りを保つために、こいつも苦労しているのだろうか。

髪を乾かしながら、彼女の顔をチラッと覗き込んでみれば、むふーっとご満悦の表情を浮かべていた。


「ほれ、終わったぞ」

と言ってやると、彼女はそのまま後ろに体重を預けてくる。

「ねえ、このまま頭撫でて」

つい苦笑してしまう。これも昔と変わってない。

「はいはい、仰せのままに」

俺は寄りかかる彼女を後ろから支えるように左手で抱えながら、右手で彼女の綺麗な髪を丁寧に撫でる。


「んっ・・・」

「おい、変な声出すなよ」

「だって、気持ちいいんだもん。私、康介さんに撫でられるの好き。やっぱり、ここに来て良かったぁ」

「そうかよ。まだ来て初日だけどな」

そう素っ気なく言ってみせるが、顔が熱を持っているのが自分でも分かる。

こいつに顔を見られないような体勢で良かった。


しばらく撫で続け、顔の熱が引いてきたところで終了する。このままやってたらこいつが寝るまで続きそうだし。


「さて、俺も風呂入ってくるかな」

「えへへ、ありがとう!また明日もやってね!」

え、これ毎日恒例になるんですか。聞いてないです、はい。

俺は返事をせずにそそくさと風呂へと逃げた。



彼女の髪は触り心地抜群だし撫でるのは嫌いではないが、毎日となると俺の色々なモノが耐えきれるか心配だ。

とりあえず風呂に入って煩悩を消そう。

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