4.初めての女?
車を走らせること数十分。途中にあったファミレスで遅めの昼食を済ませてショッピングモールへと到着した。
「康介さんって運転できたんだね!」
「まあな。大学の長期休みの時に免許とったしな。・・・誰かを隣に乗せたのなんざ初めてだけどな」
後半は独り言のようにボソッと行ったのだが、瑛理の耳にはしっかりと聞こえていたらしい。
「え!?ってことは私が初めての女ってこと!?」
「変な言い方すんな!車に乗せたってだけだろ!」
「えへへ。でも康介さん彼女いないんだもんねっ」
なぜそのことを・・・ってそういえば兄貴と電話した時にそんなことも言ったっけか。
あの時、俺に彼女がいたらこいつはどうしていたんだろうか・・・。
ま、そんなこと今更考えても仕方ないか。
その後、どうでもいいような話をしながら買い物をしていった。
布団や、彼女の服をしまうチェスト、教科書などをしまうカラーボックス、調理器具に食器、食材、雑貨・・・。
同居人が一人増えるだけでこんなに必要なものが増えるのか。
2時前にここに着いたのに、気づけば6時になろうとしていた。
途中、休憩を入れたとはいえ、歩き回ってヘトヘトだ。
帰宅する頃にはゾンビのようになっていた。俺、こんなに体力無かったっけ・・・。
何往復もして車から荷物を運び、全て家に入れ終えた瞬間、ソファに倒れ込んだ。
「・・けさん・・・・康介さん!」
ん・・・?なんかいい匂いがする・・・。そういえば腹減った・・・。
意識がぼんやりとしながらも目を開けると、かわいらしい少女が顔を覗き込んでいた。
なんで家に女がいるんだ・・・?俺いつの間に結婚した・・・?夢か・・・?
そう思って彼女に手を伸ばす。
頬を触るとくすぐったそうにしながらも受け入れて、さらに手を重ねてくる。
少し赤くなった顔もかわいいな・・・。
「もう、寝ぼけてるの?ご飯、冷めちゃうよ?」
急速に意識が覚醒する。
俺はガバッと跳ね起きた。
「きゃっ!」
いきなり起きたので、驚かせてしまったようだ。
「す、すまん。寝ぼけてた」
「ん、いいよ。ちょっと恥ずかしかったけど、嬉しかったし・・・。ご飯、支度できたから食べよ?」
なんで俺ソファで寝て・・・ああそうか、買い物から帰ってそのまま寝ちまったのか。
テーブルの上には、瑛理が作ってくれた夕食が並んでいる。
ご飯に味噌汁、炒め物、サラダ。
さっきのいい匂いはこれか。炒め物から漂う匂いが食欲を刺激する。
「今日はあんまり時間がなかったから簡単に作ったけど、召し上がれ」
そう言って彼女も隣に腰をおろす。
「「いただきます」」
二人で手を合わせてから口に運ぶ。
豚肉とナスとピーマンを味噌で炒めたのか。
味噌汁も少し薄めの味付けで俺好みの味だ。
「うまい」
素直に感想が口から出る。
「えへへ、ありがとう。おかわりもあるからいっぱい食べてねっ」
普段はそこまでたくさん食べないが、美味しい料理ともなれば別だ。
しっかりおかわりをして完食した。
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした」
「料理もうまかったが、家で誰かと一緒に食うなんて久しぶりで不思議な感じだな」
「ふふっ、これからは毎日一緒に食べられるよ」
「お、おう。そりゃ楽しみだな」
「お風呂も沸いてるけど、すぐに入る?」
「いや、先に入ってこいよ。その間に洗い物しとくから」
「えっいいよ!洗い物も私するから」
「いやいや、作ってもらったんだから洗い物くらいさせろって。これからも作ってくれるんだろ?」
「むぅ。それは作るけどー。・・・分かった。じゃ、先にお風呂入ってくるね」
彼女は若干拗ねながらも納得して風呂場へと向かっていった。