3.サラリーマンの食事情
「で?荷物はそんだけか?」
俺は瑛理の持っていたスーツケースを見て尋ねる。
引っ越してくるのにそれだけということはないだろう。
男ならまだしも、女というのは色々と必要なものが多いと聞く。
「あ、ううん、今日持ってきたのは、とりあえず必要最低限のモノだけで、残りは近いうちに宅配便で送ってくれることになってるの」
「なるほどね」
さて、とりあえず瑛理がここに住むことになった以上、やることが色々とある。
俺は切り替えは早いほうなのだ。
まずは生活するスペースだ。我が家の間取りは2DKで、ダイニングキッチンとは別に2部屋ある。
その片方はリビング的な生活空間、もう片方はベッドがある寝室、といった具合で生活していた。
しかし、瑛理も15歳の女の子。
自分の部屋というわけではないが、着替えとかするにも困るし、部屋は分けたほうがいいだろう。
ついでに掃除もしなきゃな・・・と思ったところで疑問が一つ。
「瑛理。お前布団とかは?」
「ん?ないよ?だって持ってきたら向こう帰った時に寝るとこなくなっっちゃうし」
「おいおい、そんな当たり前のように言われてもな。どうやって寝るつもりだったんだよ・・・」
「ん、まあ康介さんと一緒に寝ればいいかなって」
「アホか。一緒に寝るわけねえだろ」
「えー」
冗談でも一緒に寝るとかやめてほしい。
昔と違って、15歳にもなれば色々と成長している。男と一緒に寝るというのがどういうことか考えてほしい。
「ともかく、そっちの部屋をお前にやるから、片付けるぞ」
「え、そんなのいいのに」
「お前は良くても俺が困るんだよ。着替えとかどうすんだ」
「私、康介さんになら見られてもいいよ?」
こいつ、一発殴ってもいいだろうか。
「いいよ?じゃねえよ!お前もう15だろっ。恥じらいを持て。恥じらいをっ!」
二人で協力して軽く片付けと掃除をする。
とはいっても、元が男の一人暮らしだ。大してモノがあるわけでもなく、すんなりと終わる。
ふぅっと一息つくと、グゥーとかわいらしい音が聞こえた。
音の発生源を見ると、顔を赤くした瑛理がいた。
「だ、だって今日は朝早かったし・・・」
聞いてもないのに言い訳をしている。
時計を見ると午後1時を過ぎたところだ。普段の俺ならばそろそろ起きようかというところだが、今日は突然の来訪者のために早起きしたせいでお腹もすいた。
「買い物もしなきゃならんし、ついでに飯食いに行くか」
「えっ、わざわざ食べに行くの!?私作るよ?」
「作るにしても食材なんかなんもねーよ。男の一人暮らしなめんな」
「えー!じゃあ今までごはんどうしてたの!?」
「昼はコンビニか会社の食堂だし、夜はなんか食って帰るかカップ麺だな」
「それじゃ体に悪いよ!」
そう言われても独り身の男なんてたいていそんなもんじゃないか?
俺だって最初の頃は料理しようとしてたけど、だんだんと面倒くさくなってしまい、外食に頼るようになった。
「むー・・・よし、これからは私がご飯作ってあげるから、カップ麺禁止ね!」
「え、お前料理できるの?」
「失礼だよ康介さん!お父さんもお母さんも仕事で忙しかったし、私が料理してたんだよ?」
「ほー、そりゃ楽しみだな」
誰かの手料理なんて社食以外では食う機会なんてないしな。
とりあえず着替えて寝癖を軽く直して出かける準備を整える。
色々と買う必要があるし、ショッピングモールだな。
買うものを頭の中でリストアップしながら家を出た。