18.はじめての・・・
「康介さーん、早く早くー」
俺は今、瑛理と一緒にとある大通りに来ていた。
先日、瑛理が風邪をひいた際に、もっと労らなくちゃな、と思って
「どこかいきたいところあるか?」
と聞いたところ、TVでやっていた街でお散歩デートしたいとのことだった。
デートね・・・。まあこいつの気分がよくなるならそれでもいいか。
ちなみに、風邪は翌日も休むとその夜には元気いっぱいに回復していた。
会社では、後輩の保坂が
「いいな~。私も看病されたいな~」
とほざいていたが、池田に
「安心しろ。お前バカだから風邪ひかないだろ」
と言われていて騒いでいた。
朝食を家で軽く済ませて、電車を乗り継いで来て時刻は10:30。
まだお店が開くかどうかという時間なのにも関わらず、周りには多くの人がいた。
「はい、康介さん!」
と瑛理が手を差し出してくる。
なんだ?と思っていると、
「はぐれちゃ困るでしょ?だから手つなご」
と言ってきた。
そんな小学生じゃないんだから・・・と苦笑しつつ手を握ってやる。
瑛理はご機嫌なようで、手を引っ張って通りを進んでいく。
まずはクレープ屋さんに向かったが、その種類の多さに驚いた。
俺のイメージでは、いちごやバナナにクリームが入ってるだけだったが、実際はアイスやプリンが入っているもの、和風な抹茶や黒蜜、さらにはツナやポテトサラダ、唐揚げというものもあって、どれも美味しそうに見えた。
瑛理は一番人気のイチゴ&クリーム。俺は迷った末に照り焼きチキンを選んだ。
食べながら、通りを歩いていく。
「康介さん、それおいしい?」
「ん、ああ。なかなかウマイぞ」
「えーいいなー、ちょっとちょーだい!」
「いいなーってお前も食ってるだろうが・・・」
と言いつつも食べかけでいいなら、と渡す。
瑛理はかぶりついてもぐもぐ食べると
「へー、いつもデザート系しか食べないんだけど、こういうのも意外と美味しいんだね」
と驚いていた。
瑛理は自分のを差し出して、こっちもあげる!と言い出したが、俺は遠慮しておく。
カスタードはけっこう好きだが、生クリームはあまり好きじゃないんだよな・・・。
食べ終わると、瑛理に連れられて服屋や土産物屋などいろんなお店をまわっていく。
瑛理もやはり女の子で、服屋だけで1時間以上滞在した。
試着したクラシカルな雰囲気のグレーのワンピースがとても似合っていて、
「買ってやるよ」
と申し出ると、とても喜んでいた。
お昼はちょっとお洒落なイタリアンレストランでピザやパスタを堪能した。
たまにはこういう外食もいいけど、やはり瑛理の料理のほうがなんか安心するな。と思ったのは内緒だ。
それから午後も店を見て回ったり公園で一休みしたりとして過ごした。
そろそろ帰るかと思ったが、瑛理がどうしてもいきたい場所があるというので、それに付き合う。
瑛理に引っ張られて連れてこられたのは、ゲームセンター。
ここに来たかったのか?と疑問に思うも、中に入っていく。
クレーンゲームを見ていくと、瑛理が有名な猫のキャラのぬいぐるみの前で立ち止まった。
「・・・かわいい」
「欲しいならやってみたらっどうだ?」
とすすめてみた。
数回プレイするも、ぬいぐるみは駄々をこねるように転がるだけで、一向に出口に向かってこない。
やがて拗ねてしまう瑛理に苦笑しつつ、代わってやる。
「こういうのはな、コツがあるんだよ」
そういってアームを動かすボタンを操作していく。
アームが降りていくと、その先端はタグがついている輪っかに引っかかり、そのまま出口へと持っていく。
景品取り出し口から取って瑛理に渡してやると、つい今まで拗ねていたのが嘘のように満開の笑顔を見せた。
「わあ!ありがとう康介さん!ずっと大事にするね!」
そう言ってくれれば、取った甲斐もあるというものだ。
「あ、ねえ、康介さん!あれやろうよ!」
そう言って瑛理が指さしたのは、所謂プリントシールと呼ばれるものを撮るためのモノだった。
「あんなん撮ってどうすんだよ・・・」
というも、いいからいいからと瑛理に引かれて連れ込まれてしまう。
瑛理が手早く操作をしていくとすぐに撮影の時間になる。
音声でポーズを指示されるのだが、これは・・・。
「おい、こんなんやるのかよ」
瑛理が選んだのは、カップルコースで、最初に指示されたのは、二人の手でハートを作るポーズ。
高校生がやるのはまだいいが、俺みたいなヤツがやるもんじゃないだろ・・・。
「いいじゃん!ほら、早くしないと時間が」
そう行っているうちにカウントダウンが始まってしまったので、しかたなく瑛理に合わせてポーズをとる。
いろんなポーズをとらされて、最後の一枚。
「最後は普通に撮ろ?」
と瑛理に言われて、安堵する。
そう、俺は完全に油断していた。
カメラの位置が少し低いため、若干かがんで待つと、撮影の瞬間、頬に柔らかい感触がした。
驚いて瑛理を見ると「えへへ、隙アリ!」と笑っていた。
機械から出て、落書きは瑛理に任せる。
今日一番疲れたかもしれない・・・。
こういうのは俺じゃなくて彼氏でも作って来ればいいのに。
そう思ったのだが、なぜか胸がズキンと少し痛んだ。
なんだかんだで、ここまで毎日投稿してしまった・・・。
「ぼっち」も書きたいし、リアルがわりと忙しいので、ちょっとペース落ちるかもです。




