2.選ばれたのは、同居でした。
テーブルで向かい合って座るふたりの間には沈黙が漂うばかり。
コップに注いだお茶を一口飲む。
『選ばれたのは○鷹でした』ってフレーズがあるくらい有名なお茶だ。
今日も安定の美味しさ。
小さくため息をついてから口を開く。
「で、どうしたんだいきなり」
そう聞くと、彼女は横にずれてから三つ指をついて頭を下げる。
「今日からここでお世話になります。不束かものですが、よろしくお願いします」
お茶を噴きそうになった。
「え・・・?は?ど、どういうこと?」
「あのね、私来月からこの近くの高校に通うの。それでお父さんと相談して、康介さんにお世話になることになったの!」
待て。近くの高校に通うのはいいが、それが何故ここに住むことになるんだ。
「帰れ。うちのアパートはペット不可だ」
「ひどい!せっかく来たのにその言い方はないでしょ!?」
頬を膨らませて怒ってますアピールをする瑛理。かわいいけど、今はそんなことどうでもいい。
俺はスマホを取り出して兄に電話をかける。
「どういうことだ」
兄が電話に出た瞬間に挨拶もせずに聞く。
「お、もう着いたのか!というわけでよろしくな!」
「説明しろ」
短く低い声で言うと、俺の怒りが伝わったのか、説明を始める。
要約するとこうだ。
瑛理が近くの高校に合格して通うことになったのだが、兄の家から通学するには遠すぎる。
かといって女の子の一人暮らしは危険だからさせたくない。
そこで、白羽の矢が立ったのが近くに住む俺、というわけだ。
「理解はしたが納得はできねえ。なんで事前に言わなかったんだ」
「だって言ったらお前拒否するだろ?」
当たり前だろ。何が悲しくて一人暮らしの邪魔をされなきゃならんのだ。
「そもそも年頃の女の子を男の部屋に住まわせるとかなに考えてんだ。心配じゃねえのか」
「いやー別に康介なら平気かなって。それに、瑛理がそうしたいって言うんだから仕方ないだろ」
なんだそれ。どんだけ娘に甘いんだよ。
その後、文句を言い続けるが、暖簾に腕押しといった感じで受け流されてしまう。
最終的には瑛理の小遣いとは別に家賃などの必要経費の半分を兄が負担するということで俺が折れるのだった。
「はぁ・・・」
電話を終えて大きくため息をつく。まぁ15歳の少女からしたら25歳なんてオッサンだ。
そんなヤツとの生活なんてすぐに嫌気がさして出ていくだろう。そう思って瑛理を見る。
「これからよろしくね、康介さん!」
またも花が咲いたような笑顔を見せる瑛理。
こうして2人の共同生活が始まったのだった。