サイドストーリー: 心を照らすお日様
楓が家に来たときの瑛理目線のお話です。
今日はGW最終日。
先月入学した高校でできた友達が遊びに来る。
彼女・朝比奈楓は、同じ中学出身者がおらず、一人でいた私に初めて話しかけてくれた女の子。
お日様のように笑う、とてもかわいい私の友人。
それからお互いのことを色々話しているうちに、つい口が滑って康介さんと一緒に住んでることを漏らしてしまった。
あれは失敗だったな・・・。
今度からは気を付けないと。
GW明けにテストがあると知るやいなや、楓は私に勉強を教えてほしいと頼み込んできた。
彼女は運動は好きだが、勉強はあまり得意ではないようだった。
場所をどうするか聞くと、楓は
「瑛理のウチがいい!つ・い・で・に、瑛理の『大事な康介さん』も見てみたいなぁ!」
言い方がわざとらしい。明らかにそっちが目的だろうに・・・と苦笑する。
楓には、私の康介さんへの気持ちがバレている。
彼女いわく、瑛理は康介さんのことになると表情が変わるから分かりやすい、とのこと。
そんなに分かりやすいかなぁ?
自分の表情というのは分かりづらい。不便なものだ。
結局、康介さんが許可したら、という条件のもと、OKを出すのであった。
まあ、康介さんに話したけど、完全にオフモードで生返事だったんだけどねっ。
前日にあらためて話したらびっくりはしてたけど拒否はされなかったから、嫌というワケではないんだろうけど・・・。
そして、当日。
来て早々、楓がニヤニヤしており、なにを言い出すのか気が気でなかったので、自分の部屋に引っ張り込んだ。
「せっかく康介さんいるのに、別々でいいの~?」
と聞いてくるが、誰のせいだと思っているのだ。
「ほらほら拗ねないで!拗ねた瑛理もかわいいけどっ!」
「そうやってイジワルする楓には勉強教えてあげませんっ」
「うう、そんなぁ・・・後生や、堪忍しておくれ~」
そう話していると、スマホに通知が来る。
見ると、康介さんからで、会社の同僚の人とご飯を食べに行ってくるとのこと。
気を使ってくれたのかな・・・。
本来なら、玄関で見送りたいところだが、今日は楓もいるし、康介さんの気遣いを無駄にしないためにも「いってらっしゃい」と返信するにとどめた。
しかし、康介さんがいなくなった途端、楓が盛り上がってしまった。
「ここが二人の愛の巣かあ!」
「ちょ、ちょっと!愛の巣とか言わないでよ!付き合ってるわけじゃないんだし・・・」
顔が赤くなっているのが自分でも分かる。熱い。
「えー。でも、瑛理は康介さんのこと好きなんでしょ?」
「・・・うん」
「じゃあさ、康介さんとそういう関係になりたいと思わないの?」
そう問われて、胸にズキンとした痛みが走る。
「思わな・・・くもないけど・・・、でも・・・康介さんに拒否されて、今の関係も壊れて・・・一緒にいられなくなるのは・・・嫌だよ・・・」
想像しただけで涙が出そうになる。
「あー!もう!かわいいなあ瑛理は!でも、今のままでいいの?ずっとこのまま何も変わらないままでも?」
「・・・・・・」
「康介さんってさ、眠そうな顔とボサボサの髪で普段は見えないけど、よく見ると実はイケメンだよね」
私はビクッ!と反応してしまう。
そうなのだ。普段は眠たげな眼差しなのに、集中する時などの真剣な顔や、優しく微笑む顔を見せられると胸が高鳴ってしまうほどカッコいい。
それは昔も今も変わらない。
「そんな康介さんをさ、誰もが気づかないわけじゃないよね?特に会社の人とかさ、毎日見てれば、気づく人が居るかも知れない。
そして、その人が告白して康介さんと恋人になったら・・・。そう考えたことはない?」
私は呆然と楓の話を聞いていた。
そんなこと、考えもしなかった。
でも、少し考えれば分かることだ。
私は、康介さんが帰ってきた後、家で一緒にいられるだけで幸せだと思っていた。
しかしその実、家での大半の時間は睡眠に割り振られてしまう。
そして、休日以外の一日の起きている時間の大半は康介さんは会社にいる。
もちろん、康介さんの勤める会社にも女性はいるだろう。
その女性が康介さんに好意を持ったら?
そしてもうひとつ、気づいた、気づいてしまったことがあった。
それは・・・
私は康介さんだけずっと想ってきたし、康介さんしかいないけれど、その逆は違う。
康介さんにとっての恋人は、私である必要性がない。
そして、康介さんに恋人ができてしまったら・・・。
私はここにいることなんてできないのだろう。
スカートに落ちる雫を見て、私は自分が泣いているのに気づいた。
ふわり、と。なにかが私を包んでくれた。
泣きながら顔を上げると、楓が私を抱きしめていた。
「ごめんね。瑛理を悲しませるつもりで言ったんじゃなかったのに・・・」
「・・・うん。・・・私・・・どうすればいいんだろ・・・」
「大丈夫。まだ康介さんに彼女ができたわけじゃないんだし。瑛理が今気づけただけでも一歩前進だよ!」
「・・・そうなのかな」
「そうだよ!告白するのは早いかもだけど、一歩踏み込まなくちゃ!」
「ふみ・・こむ・・・?」
「そう!康介さんに瑛理が異性だってもっと意識させるの!」
「・・・ふぇ?」
その後、勉強そっちのけで、楓が帰るまで作戦会議が続いたのであった。




