9.出不精の気まぐれ
「康介さんは、お休みの日ってなにしてるの?」
今日は土曜日。今までの俺なら惰眠を精一杯貪っているのだが、今日は瑛理にしっかりと朝起こされて、朝食を摂っている。
その最中に瑛理の口からこんな質問が飛び出した。
「ん?休みの日はだいたい寝てるな」
「えーっ。どこか行ったりしないの?」
「しねえよ。何が悲しくて休みの日に出かけにゃならんのだ。どこ行ったって人でいっぱいだしな」
「えー。つまんないのー」
「別に瑛理まで付き合う必要はねえだろ。学校で友達できなかったのか?」
「そんなことはないけどさー」
「俺に気を使わなくていいから、友達と遊んできたらどうだ?」
「そういうのじゃないもん。私が一緒にいたい人は私が決めるんだもん」
拗ねたような顔でそんなことを言われ、不覚にもドキッとしてしまう。
一緒にいたい人・・・ね。
懐かれてるのは悪い気はしないが、そこまで一緒にいる必要もないだろうに。
「・・・じゃあ、どっか行くか?」
「え!?ホント!?」
せっかく朝早く起きたし、俺一人ならともかく、こいつといっしょなら外出もまあいいか。
俺も甘いなあ。子供を持つ親ってのはこんな気持ちなのだろうか。
「ああ。どっか行きたいとこあるか?」
「じゃあね!私、水族館行きたい!」
「いいけど、どこの水族館だ?」
絵理が口にしたのは、ここから車で2時間といったところにある、有名な水族館だ。
まあ、まだ早い時間だし、別にいいかと思い了承する。
瑛理は、やったー!と喜び、さっそく支度をすると言って部屋にいった。
さて、俺も支度するとしますか。
と言っても着替えるくらいだけど。
着替え終えて部屋から出てきた瑛理は、俺の前でクルッと1回転して、「どう!?」と聞いてきた。
「ああ、似合ってるよ」
と無難な答えを選んだのだが、それでも瑛理は嬉しそうにはしゃいでいる。
「康介さんってさ、髪いじったりしないの?」
「別にする必要ないからな。面倒くさいし」
「えー。もったいないなぁ。少しいじるだけでも変わるのに」
「はいはい、また今度な。そろそろ出るぞ」
「はーい!楽しみだね、デート!」
デートって・・・。まあ楽しそうにしてるとこに水を差すのも悪いし、いいか。




