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深紅のゼラニウム

作者: 金芳 奏

 大切にしてもらいたい。

 それが私のただひとつの願い。


 嫌われるのが怖い。

 だから、みんなに優しくしたの。

 それがいけなかったのかな。

 だから、みんなに寄り添えないのかな。寄り添ってもらえないのかな。

 そうだよね。みんなに同じような言葉を、表情を向けてたら、みんなも私にそうするよね。

 仕方ない、私が悪いんだもの。

 嫌われないように優しくしてたって、それはしっかり優しくするのとはちょっと違うよね。大切にしてはもらえないよね。わかってても、そうした私がいけなかったの。


 弱い私が嫌い。

 だから、いつも笑顔でいたの。

 何があっても、いつでも笑顔を取り繕っていたの。

 それがいけなかったのかな。

 だから、みんなと壁を感じちゃうのかな。壁ができちゃうのかな。

 いつも笑顔でいたら取り繕っているってわかるものね。笑顔と違う顔を隠してるって疑っちゃうよね。

 仕方ない、私が悪いんだもの。

 弱い私を見せないために笑顔でいたって、それは弱い私を見せる強さがなかっただけだものね。大切にしてはもらえないよね。私がいけなかったの。


 良くされるのが怖い。

 だから、私の悪いところを示したの。

 褒められても、優しくされても、でも…って、そんなことないって、悪いところを示したの。

 それがよくないってわかってても。

 だから、みんなを戸惑わせたり、困らせてたんだよね。

 良くされるのを受け入れる勇気が、強さがなかったの。でも、そんなことしてたら、みんなから大切にしてもらえないよね。


 大切にしてもらいたい。

 それなのに、大切にされない証拠を集め続けてた。

 だから、みんな曇った言葉を届けるの。

 だから、みんな遠い表情でいるの。

 そして、それが当たり前になってしまう。

 でも、全部私が悪くてどうにもできない。

 全部、私の弱さが招いたことだもの。


 優しくて、諦めの悪い誰かが私を救ってくれないかな。許してくれないかな。


 そんな儚い願いを心の端っこに置いてるの。

 でも、そんな人はいないとわかってる。


 私には、その儚い願いを自分で捨てる勇気すらない。


 だから、心の端っこに置いて、その儚い願いが何かのきっかけで落ちてなくなることを願ってるの。

 きっと、その誰かがいつか見つかると信じてる。



 その誰かが私だと、どこかで気づいているのに。


  私を救えるのは、許せるのは、私しかいないと知っているのに。


 誰か私に、「私を許してあげて」って、「私を救ってあげて」って、言ってくれないかな。


 私の声が、私に届いてくれないかな。

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