弱さと首切り
ようやく二話目が投稿できた……_(:3 」∠)_
ローブは白く輝いており、それを科学で証明するのはとても骨が折れる、と思った。
無駄に光っているせいで目が痛い。普通にダサいし、俺なら絶対に来たくない。
多分、着眼点自体が他の人とは違うのだろう。人と接しない分、ラノベに手を出していたせいでその知識量は他の人とは比べられないと思う。
他の人を見れば周りをキョロキョロするだけで、この場の状況を理解している者は数名のみ。
俺と同じでオタクと言われている人たちだ。あまり接点はないから詳しくはわからないが。
もう少し話をしておけばよかった、なんてことを考えていた時に、ひときわ輝くローブを羽織った人が声をあげた。
「えー皆さん、単刀直入ですが皆さまには勇者になっていただきたいのです」
大きく野太い声は俺たちがいる部屋で反響を繰り返す。
ラノベではありふれた一言だ。でも実際、言われてみるとそんなことも言ってられなくなる。
「ふざけんなよ! 無理やり連れてきた癖して!」
水木のその言葉。共感することを嫌だ、と思いはするが同じ意見だ。
そんな小説を読む、書くだけで体験しなければわからないだろうが、俺はとても怖いと思っている。
それは読んでいただけで、その話がサクセスストーリーになると知っていたから。
でも大体のことがわかるとはいえ、もし俺だけが強くなかったら。俺は生きていくことができないような気がする。
そんな恐怖だ。体験してみてわかる。小説の主人公たちも、こんなにドキドキしていたのだろうか。
最初に水木の言葉で室内が怒号で響き渡ったが、それも次第に収束に向かうだろう。
この中にあいつらのような、圧倒的有利な状況にいる人たちを言い負かせる人など、ここにはいないのだから。
それは間違っていなかった。数分と経たずにリーダー格の水木は、うまく丸め込まれ反対意見を言うものもいなくなってしまう。
ローブの人が続けた言葉は至ってありきたりな言葉だ。
魔王や帝国の手によって、この国は滅亡の危機にあるから助けてくれ、だそうだ。でも、なんでそうなったのか、なんて詳しい話をしてくれるわけもない。
見え見えの嘘だ。魔王は共通の敵だとしても、帝国を怒らせたのは王国の祖業のせいかもしれない。
つまりはきな臭くて信用できない。
それに俺のスローガンとは反する。ただ幸せに生きたいだけだ。戦闘面は仲間とかに任せて、自堕落と産業面で生きていきたい。
まあ仲間が一人もいないのだが。
「それでは次はステータスの儀を執り行いたいと思います。皆さま、順にこちらに並んでいただきたい」
王国優位な話は終わったようだ。
俺は前ら辺に位置取りながら、他の人が並びきるのを待った。学校自体がそういうのを重視して何度も行っていたため、時間はそうかからず一列できあがる。
よく見ると出席番号順だ。俺も無意識のうちにそうしていたのかもしれない。
まず一番最初に青山という男がステータスの儀を行った。
ただローブの人が目の前の人と握手をして、ステータスを教えるだけ。いや、青山を見ていたら、その後に指でなにか動作をしていたな。
まあ、良い。金倉洋平だから俺の順番ももうすぐだ。できれば普通のステータスでありますように。
そしてその願いは儚くも散った。
俺の番になり握手をした瞬間にニヤリと笑ったローブの人。目の端に現れたステータスを見て俺はなぜかを悟った。
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カナクラヨウヘイ
職業 1.召喚士LV1
種族 人族LV1
体力 10
物攻 10
物防 10
魔攻 10
魔防 10
俊敏 10
幸運 200
固有スキル 召喚
スキル
称号 異世界人、???、ハズレ勇者
補足 この世界における成人男性の十分の一のステータスです。
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俺はラノベでいうところの、いじめられっ子特有のステータスを持って異世界に来たようだ。
「……この方を奥の方へ」
ローブの人の小さな声が聞こえた。それに反応して俺の手を取り、室外へと連れていく他のローブの人たち。
室内で心配そうに見ている、朝倉さんの顔だけが頭から離れなかった。
室外へ出てみるととても綺麗だった。
窓は西洋の雰囲気を醸し出す枠組みをつけたガラス製。それだけで周りの全てのものが、高いことはわかることだ。
と、考えればここは王城か別荘か。そこら辺でやるのが妥当だろう。
俺は二人のローブの人に連れていかれている。数分は歩いているが長い廊下の終わりは見えない。
十分程度歩いて、ようやくその場に着いた。
大きな門だ。そして周りの部屋よりも高そうな外見をしている。
ローブの人二人が少し萎縮したところを見ると、ここには目上の人がいるのだろう。
トントンと軽く叩かれた扉の外側から声が聞こえた。
「入って良い」
ローブの人の片方は両手を使い丁寧に扉を開ける。
俺を中心として中に入り、もう片方のローブの人が同様に扉を丁寧に閉める。
その中にいたのは俺が予想していた通り、頭に王冠をかぶりヒゲを生やした太ったおっさん、もとい王国の王様であった。
「ふぅーん、その子が今回の失敗作か。いっつも一人はいるんだよね。本当に女神様はどうしてこんなことをしたのか」
王の近くにいた一人の若い女が声をあげた。言葉の節々で他人を見下している人だということは判断できた。
そして王は俺を一瞥してすぐに、
「……もういい。そいつは斬首刑。最初っからそんな奴はいなかった。……話は終いか?」
それで興味を失ったようだ。何も言うことはなくなった。
だが連れてきて早々に首を切られるのか。しかもただ俺を一回見ただけで。
……腹立たしい。でもそれ以上の言葉は出ない。
死にたくない、と思わなくもないが、ここまで何もない状態でこの世界に来ていたら死んだ方がマシかもしれない。
どうせ、元の場所に戻れてもいじめられて終わりだ。
これほどまでに覆らない死が近くにあれば諦めがつくのだな。最初で最後の体験だろう。
その後、俺はその部屋から連れ出された。向かったのは地下、しかも数分ほど歩かされた上で、だ。
メイドのような存在を見かけはするが、挨拶すらローブの人にしない。それがこの場のマナーなのだろう。
そして刻一刻と近付いてくる死。地下へ降りる階段が首吊り台をイメージさせる。
その間、ローブの人たちはなにかを言っていたかもしれない。返事をする余裕もないが。
階段を降りきってすぐの扉の前に数人の兵士らしき人が立つ。見届け人だろうか。
扉が開き一人の兵士が先に入っていく。甲冑をつけた顔も見えない兵士だ。
そのまま扉の中へと押され、松明の火すらない暗闇に閉じ込められた。
中にいるのは俺と先に入った兵士だろう。
どのように首を切られるのか、そんなことを考えていた時に俺の意識は潰えた。
刑が執行したことによって。
出だしはトントンと早く展開されます。次回から主人公の異世界での生活が描かれるので少々お待ちを。
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