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プロローグ 〜ジミオ編〜

第1問 ヘイセイ21年1月の時点で、ニホンの首相だった人物の名前を述べよ。


 ーー首相ってことは偉い人なんだな。確か、誰かが友人の友人から異世界の偉い奴にじょーじわしんとんって奴がいるってのを聞いたって話していたのを小耳に挟んだことがあったな。それに違いない。


第2問 2007年に放映されたもっとも面白かったアニメ作品を述べよ。


 ーーあにめ……とは何なんだ? 勇者様が鑑賞するような作品なのだから、よっぽど高貴な趣味なのだろう。でも、もっとも面白かったってどういうことだ? 主観が入ってないか、この質問?


第3問 ヨシノヤのメニューに載っている品物を三つ挙げよ。


 ーーメニューってことは料亭だな。勇者さまが通っていたような料亭なんだから、さぞ豪華な食べ物を振舞っていたに違いない。金の羊のステーキとか、甘王果(バレンジ)のフルーツケーキとか。


 カツカツと羽ペンが紙の上でタップダンスを繰り広げる。ほぼ白紙だった質問用紙のほとんどが、綺麗とは言い難い筆跡で埋まっていく。そして、ついに最後の質問欄に答えが書き込まれると、男は用紙を力強く握りしめながら勢いよく席から飛び上がった。

 男が差し出した用紙は、銀色に輝く鎧を全身に纏った兵士に渡され、兵士はそれを部屋の奥に置かれた木の箱の前まで運び、中に落とした。


 自分の答案を最後まで見届けた男は意気揚々とテスト会場を後にした。確信が持てた答えは少なかったものの、ほとんどの質問の意図が正しく読み取れたおかげで、全ての質問に答えることができたと喜んでいたのである。


 そして、翌日ーー


 昨日のテスト会場で監督役を勤めていた兵士が、各試験参加者の成績が書き記されたスクロールを持って村の広場へ訪れた。

 次々と名前が呼び上げられていく。今の所、合格に必要な5問正解者は現れていないが、それは特に珍しいことでもない。勇者になれる素質を持っていないことを知っていながらも、何かのまぐれで受かってしまうのではないかと野心する不届き者が、毎年このテストを受けにくるからである。ちなみに、この男もその中の一人だった。

 同一人物が複数回テストを取れないようにすればいいのではないかと思うかもしれないが、それだと歳を取ってから前世の記憶が蘇った人物がテストを受ける機会を失ってしまう可能性がある。それに参加者からはそれなりのお金を頂戴しているので、運営側も特に断る理由がないのだ。


「ジミオ・コトーナ」


 自分の名前に反応し、男はぶるっと震えてからゴクリと唾を飲み、ガッチリと身構えた。


「全問不正解。失格」


 男は地面の上に崩れ落ち、えーんえーんと年不相応に泣きじゃくり、大きな水たまりをその場に残して走り去っていった。

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