謎の共有アプリをインストールされました。
遅くなりましたが、第8回目です。
どうぞ良しなに。
結局、獣道は発見できなかったが多くの奇怪な現象は発見できた。
飲料だけでなくお弁当箱も回復? したので、もし、毎回回復するようであれば栄養を気にする必要はなくなる。
食に色を付けることはできないが、野草よりも遥かに美味であるし、野草自体はお弁当箱に飽きてきたら偶に口にするくらいでいいだろう。
もし、効果が永久的に続かないようだったら今と変わらない状況になるだろうから、こまめに食材は探そう。
早速拠点に戻り、カバンの異常性を調べてみた。
中には、本日採集した野草がカバンの可能な内容量より遥かに多く出てくる。
全部出し切るとカバンの3倍ほどだった。
一度カバンを締めて、再び開けてみる。
中には先ほどと同じ光景が。
しかし、取り出した野草が消えることはなく、山積みになっている。
もう一度、カバンの中身を取り出し新しく山積みにしていく。これで2山だ。
カバンを閉めて、開ける。元通りだった。
(消費したものだけでなく、出しただけで元通りになるようですね。ならば、次は――)
一度出した野草の山を今度は1山分カバンに入れなおしてみる。
入れてみてもカバンにかさばった雰囲気はない。
カバンを閉めて、開ける。元の量と入れた分の野草が確かにある。
入れた1山分を再度取り出して山積みにし、カバンを閉め、開ける。
(なるほど、入れる量が増えると持続効果があり、消費したとしても増量した分回復するようです)
数字的に考える。つまり、元々カバンの中に10入っていたとして、そこへ10追加する。
入れた分は減ることも増えることもせず、入れただけの20が持続していた。
その20から10を減らし、カバンを閉め、開けると20に回復した、といった感じだ。
(10+10=20。カバンの中で増殖することはありませんが、そこから消費すればその消費分回復するのですね。上限まで回復、と)
摩訶不思議なカバンになったものだ。
(野草は回復しましたが、例えば日本から持ってきたものはどうなるのでしょう?)
一度、カバンの中にある荷物をすべて取り出し、バックを閉じる。
全て取り出してもカバンが萎むことはなく、軽くなることもない。
重量もそのままのようだ。
カバンを開けると、始めに野草が目に映る。中身を漁ると元のまま存在した。が、硬い感触だけはない。
(異世界のもの、日本のものという区別はありませんでしたか。ですが、機械類は回復していません。この違いは一体……?)
何度カバンを開け閉めしても、PCやポケットWi-Fi、携帯電話など機械類が回復する様子はなかった。
この理由についてはわからない。ただ、”機械類”という共通点。ここに何かカギが――
そのとき、拠点の空間の中で携帯電話の通知音が静かに響いた。
普段からマナーモード設定でバイブレーションしかならないはずなのに鳴った携帯電話。異様な雰囲気を感じた。
すぐさま画面を覗くと画面には現在の日時以外に通知が1つ。
氏名の記載はされておらず、ただ、”神代 物集さんと共有しました。”という簡素な文のみ。
共有など一体、誰から? いや、氏名がないことがあるだろうか? そもそも共有するも何も私は許諾していない。まさか、端末の乗っ取りだろうか?
ここにきて、まさかの事態に心が波打つ。
貴重な連絡手段に手を付けられては困る、と焦りながらも一先ず深呼吸し、よくわからない共有通知をスライド選択して内容を覗き込んだ。
”神代 物集さんと共有しました。
URL:~.
Appleアプリ App Storeからインストールしてください。”
通知の正体は、共有されたアプリのインストールを促すものだった。
なんて怪しい共有か、やはり乗っ取りでは? これが第1印象。
少し唖然としてから、詐欺では? はたまた余計な宣伝か? と考えつく。
いずれにせよ、共有者不明に加え勝手に共有された来たものに警戒しない方が難しい。
こんなものは早々に削除を、と決め込もうとしたがホームボタンを押しても電源を切ろうとしてもびくともしない。
それはそうだ。共有だって勝手に操作されたもの。プログラミング自体にウイルス投入か遠隔操作をされているに違いない。
どうしたものかと考えるが、ずっとこのままというのもマップを見たり電話したりできないので困る。
PCから連絡する手段もあるが、毎回毎回連絡するたびに出し入れするのもどうだろう。
PCを使って携帯電話の異変の解析をしてみるべきだろうか?
熟考の末、苦渋の決断により共有されたサイトへとぶことにした。
どの程度の技術・PCスペックを利用した相手か不明である点、PCまでも起動できなくなると死活問題(仕事ができない)になる点を考慮した。
URLからApp Storeへ画面が展開する。すると、1つのアプリが提示される。
題名は”Arrangement Of a Bag(AOB)”。
直訳すると、カバンの整理?
イメージ画像は一切なく、今までレビューした人もいないアプリ。なんと、説明文も一切なし。しかもインストールするまで画面を閉じられない。
(粗末すぎませんか? 一体、今日は何があるというのですか。
職場が異世界になり、異常な大きさの木々・気でできている川と湖しかなく、携帯電話まで乗っ取られ。
実は、私の脳内が作り出した壮大な夢なのでは?)
もちろん頬をつねろうが額を叩こうが痛みはあるし、目が覚めるような気配など皆無。
ひたすらに画面を凝視しているだけで固まっている私を、乗っ取った張本人は携帯電話の内蔵カメラで見ていたのかもしれない。
ついには、タッチしてすらいないのに勝手にインストールされ、ホーム画面どころかよく使うアプリの欄に設定されたのだ。
設定されてからは、これまでのことが嘘のように携帯電話が使えるようになった。確かに、使えるようにはなった。何の問題もない。
このアプリ以外は。
後には、怪しいアプリと携帯電話を握りしめ半分意識が飛んでいる私だけが残された。
ここから徐々に世界観が広がっていきますよ~!
乞うご期待!