食べられる物を探りましょう。
少々遅れてしまいましたが、第6回目です。
どうぞ、良しなに。
新たな心配事(主に社長に対する家族の質疑応答等)も増えたが、ひとまず妻と連絡が取れて安心したので次の作業に取り掛かる。
この拠点を探していた際に見つけたいくつかの野草とキノコ。
見た目は日本に自生しているものと酷似しているが、果たして中身まで同じかどうか。
そもそも毒と言うのは見た目から判断できるものは少ない。例えば、キノコで言えばベニテングダケ、花で言えばスズランが毒を持っているとして有名だが、見た目が禍々しい色をしていなくとも毒を持つものもある。こういうものは私たちの祖先が身をもって毒の有る無しを経験し、データを積み重ねてきたからこそ分かっていることだ。
つまり、実験器具などない現状では食べて確認するほか……、ない。
また、植物だけでなく動物も同じことが言える。中でもアリやカエル、蜂、クラゲ、蜘蛛、蛇、毒貝などは致死性の毒を持つ者もいるので大変危険だ。
さらに、毒と一括りに言っても多くの種類が存在している。4大公害病の一つであるイタイイタイ病を引き起こす原因の重金属、カドミウム。
今はほとんど家庭には存在しないが昔使用されていた体温時計の中身に入っている、同じく重金属の水銀。
私たちが日ごろよく口にしている食材の中には、虫が付かないように農薬を使われているものもある。
これらすべてが人体に害を及ぼす毒となる。
農薬の場合は直に過剰摂取をしない限りは安全だ。しかし、重金属の場合は少量でも致死毒となり得る。
重金属に関してはこの世界がどの程度発展しているか分からないので、自然溢れるこの現状で存在するとは考えずらい。農薬も森の中には撒かないだろう。
存在すると大変ではあるが、今は森の中なのでその点、安全と言える。
反対に、動植物が一番ネックな問題だ。森の中なんて生き物たちの住み処だ。いつ遭遇してもおかしくない。
対処法は心得ているので多少はなんとかなるだろう。但し、地球の生命体と同じであれば。
なんて考えてはいるが、この世界に来てから動物の姿を見かけない。むしろこの自体こそが全くもっておかしい。森の中であるのに獣道すらないなんて。
されど、いないものの仮定の仮定を考えたところで意味はない。
できるだけ早くこの世界の動物を発見し、発見し次第捕獲しておきたいところだ。もちろん、毒なしの食用できる動物だ。タンパク質の摂取は必須。
万一、危険な生物ばかりであればマメ科の植物から摂取しなければ。
(考え始めると、きりがありません。時間も過ぎて行ってしまいますし、今は食べられるか否かを選出すべきとき。
はぁ、まさか一生食べるものか、と心に決めていた物をまた口にしなければいけない日が来るとは……)
私は幼少期、それも物心がつき始めたころぐらいから一般家庭ではありえない教育を施されてきている。その教育とは……。
少量の薄めた”毒”を料理に混ぜ、徐々に濃くしていき耐性をつける、というとても原始的で、危険な、おぞましい拷問のようなものだった。
私がその事実を知ったのは5才になるころ。
始まりは3歳ごろだったか。
そのあたりから、お腹を下したり熱を出したり、少し走っただけで動機や息切れ、眠るときには全身にチクチクと針を刺されているかのような痛みがあったりと身体に違和感を覚えていたので、何か重大な病気か、はたまた凄い病弱体質なのかと思っていた。両親や祖父母の接し方も優しかったので余計にそう思い込んでいた。
4歳になるころにはその症状も薄れ始め、5歳間近になるとほとんどなくなっておりとても安心したものだ。
身体が健康体になってくると小さなころに思うように動けなかった反動か、常に動き回っては悪戯をしたり、両親や祖父母、兄や姉の真似をして遊んでいた。
そんな時、また以前のような症状が出始めた。しかも前よりも症状が重くなっていたのだ。
せっかく元気だったところからまた原因不明の症状で、幼子心の中には”絶望”の一色のみ。
今度こそ両親に原因は何か聞いたが、悲しそうな辛そうな顔をするばかりで答えてはくれず、次第にその表情を見ることも苦痛になり、原因について聞かないようになった。
夜な夜な枕を濡らしては痛みに耐える日々を送っていると、夜中、母に起こされ居間に連れられた。
居間には父と祖父母が正座をして座っており、いつになく厳しい雰囲気だった。
原因不明の痛みやら痒みやらで夜中と言うこともあり、半分意識が飛んでいる中聞かされたのは――
(1年後には全ての耐性がつくだろう。そのころには物集も初等部に入学。ゴールデンエイジにも問題なく間に合う。
これからの1年、食事時の摂取毒はより多くなり死にそうなほど苦しいだろうが、乗り切りなさい、でしたかね)
そんな世間体から考えれば幼児虐待どころではない経験のおかげか、今、こうして毒を前にしても動じない。皮肉なものだ。
カバンから水の入ったペットボトルを取り出し、準備は整った。いざ、実食のとき。
(では……)
始めに手にしたのはウラベニガサ似のキノコ。
これが毒持ちであれば、味よりまず先に舌が麻痺するような痺れが生じるはずだ。
(……これは、大丈夫ですね。日本のキノコと同じものと言えるでしょう。この食べられるだけいいだろう、とでも言われているかのような微妙な味。
以前食べたときと同じです)
1つ目は日本と同じキノコのようだった。
以降、キクラゲ似のキノコ、ハタケシメジ似のキノコと食べ進め、日本と同じ種類のキノコであることが分かった。
まだ、遅効性の毒の可能性は否めないが味では変わりないように思う。
さらに野草も食べ進めるがこれまた同じく、つくしやヨモギを始めとする全12種を完食したが危惧していた危険はなく、杞憂に終わった。
(この様子なら、生態系については日本と同じような場所なのかもしれません。まだ時間はPM2:00になる約5分前。
もう少し違う種類の植物を採集し、今回食べられると判明した植物も採集しましょう。特にヨモギやヤブガラシなどは薬として使えますから、ストックしておけば役立つことでしょう。
同時並行で野生の動物を探し、見つけ次第捕獲。ここまでくれば食に関しては問題なくなりますね)
もう1度食べられそうな物を探しに行きますかね。
漢字を使うか平仮名を使うか迷う字、ありませんか?
この作品中にも字体が揃っていないところがままあります。
そういう点を少しずつ編集し、より読みやすく改善していきたいものです。
次回は偶数日に間に合うよう投稿したいので頑張ります。