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才人の才人による凡人のための処世術  作者: 西モコナ
第1回、異世界到達。それは森の中だった。
13/21

異世界で初の動物は兎でした。

 今回は第12回目です。

 どうぞ良しなに。

 そして、ブックマーク&お気に入り&評価・コメントをくださった方々、誠にありがとうございます!

 Twitterでもよくお声をかけてくださって……。(泣)西モコナは感動で心が震えております……!

 ほどなくして、Arrangeme(カバン整理)nt Of a Bag(AOB)も開いてみた。

Monster(魔物使い)Tamer(MT)と同じく、項目が並んでいた。もちろん後尾には(0)とある。中には(8)や(3)もあるが。

 ただし、テイムした〇〇という項目は存在しなかった。

 項目には、発見した草、発見したきのこ、発見した木などが記載されている。

 下までスライドさせていくと、”$%#からの持ち物”という項目が存在した。


(これは、一体……? 文字化け、でしょうか。まぁ、”からの”というからには、内容は予想できますね)

「プッ、プッ?」


 試しに、$%#からの持ち物をタップする。

 すると、予想通り日本から持ってきた物のリストが出てきた。

 ポケットWi-Fi、缶コーヒー、水(ペットボトル500ml)、着替え、ハンドタオル、お弁当箱、本、黒いコート、グレーのマフラーetc.

 全てしっかり確認したが、どれも間違いなく日本から持ってきた物だった。


(この文字化けは、この世界にはない国名ゆえでしょうか? いや、しかし。それだと、なぜこちらの世界の物は日本語表記なのでしょうか?

 アプリの題名は英語表記で、言語に全く統一感がありません。本当に誰が作ったアプリなのやら……、ん?

 この2つのアプリ、アプリストアからインストールされましたが、地球でも使えるのでしょうか? これも、報告書に記載しておきませんと)

「プ~ッ、プ~? プッ、プッ!」


 1度画面を戻り、発見した草の項目をタップ。

 次に表示された画面には新たな項目として、食用草や薬草、毒草、はたまた錬金術用草など。

 食用草をタップすると、草名がズラズラと記載されている。

(0)以外に、これまでとは桁違いに数が多いものもあった。それらは、昨日カバンの機能を調べる際に用いた草の量だろう。


(ふむ。2つのアプリの共通点は、勝手に共有・インストールされる点と共有者・作成者が不明な点。

 普通、アプリストアで作成者が不明なんてありえません。しかし、これらのアプリはそもそも無断共有や無音設定の携帯電話が勝手に鳴りだすなどの奇怪現象で溢れています。

 普通なんて言葉に当てはめることはできません。

 そして、アプリの題名は必ず英語表記で内容は日本語表記な点。今のところ日本から持ってきたものは文字化けしています。

 文字化け……。本当にただの文字化けなのでしょうか。こちらのものが日本語になるのであれば、地球のものは――)

「ブーーッ!」

「おっと!」


 突如、変な音を発した毛玉が右腕に跳躍してきた。

 すんでのところで、反射神経が働き避ける。

 毛玉は避けられると予想していなかったのか受け身も取らず地面にダイブしていった。

 これは、確実に痛い。


「キー……!」


 毛玉はその場から動かない。


 しゃがんで持ち上げると、微妙に振動している。どうやら、悶えているようだ。


「こら。いきなり飛んでくるからびっくりしてしまったではありませんか」

「……!」


 返事はない。まだ悶えている、ように見えるが先ほどより振動が大げさだ。

 毛玉のくせに、狸寝入りならぬ兎悶えをしている。

 これは例の奇怪現象アプリからすれば魔物らしいが、この世界の魔物の定義は、知性があることなのだろうか?


「……はぁ。もう演技はいいですから。いきなり飛んできて、何がしたかったのですか。

 いい加減にしないと、また地面に落ちることになりますよ」

「キッ!」


 震えは治まった。





 毛玉に知性があることが判明したので、もう1度観察してみる。


「プッ!」

「……」


 毛玉は何かを訴える。が、言葉は通じないので意味は不明だ。


「あ、そういえばこの兎、混合獣の項目に情報がありましたね。確か種族名はレプスでしたか。

 何の混合獣なのでしょう?」


 私はMTアプリを開き、情報が載っていないか確かめる。


「おや? 種族名の下にアイコンが」


 アイコンをタップ。画面が切り替わる。


「これは、概要でしょうか?

 『レプス:エント×シームルグの混合獣。新種。

     エント……長命で多くの知恵を持つと言われている木の精霊。

     シームルグ……神鳥。全ての鳥類の王であり、勇者に力を与える存在』と。

 このアプリ、内容はあっているのですか? どこからどう見ても」


 毛玉を確認する。


「けだ……、あ~、いや、兎ではありませんか。この世界の鳥は兎の姿なのでしょうか。それとも、新種ゆえの姿ですかね~?」


 もう1度毛玉を確認する。


「プッ!」


 なぜか誇らしげである。


「このアプリが正しいと仮定するなら、知性があるのはエントの血筋なのでしょうね。

 鳥かどうかはこの世界の鳥の定義が地球と同じか分かりませんので保留として、”神”とついていますから、一応尊い存在でしょう。きっと」


 さらに、毛玉を確認する。


「ププッ!」


 確実に鼻で笑われた。

 無性に腹が立ったが、所詮(しょせん)毛玉が揺れた程度、とぐっと堪えた。


 知性があるわけなので、とりあえずYes/Noクエスチョンを行うことにする。


「君。今からいくつか質問するので、答えてくれませんか?」

「プッ?」


 毛玉は顔を左右に振りだし、後ろを見る。

 Noか? と一瞬頭をよぎるが、仕草からして他の誰かを探しているように感じた。


「君。そこの白い貴方(あなた)ですよ」

「プッ?」


 毛玉はこちらに向き直り、首を傾げた。

 どうやら、自分に言っているのか、と聞いているようだ。



「えぇ。そうです。私は君に質問しているのですよ。そもそも、あなた以外に誰がいるというのですか。

 では、改めまして。

 君にいくつか質問をするので、答えてはくれませんか?」

「プッ? プ~。プッ!」


 再度首を傾げ、辺りを見渡すそぶりをする。

 さらに、何やら思考を始めたと思えば、急に納得したような声を上げ、首を縦に振った。


「? よろしいということでしょうか?」

「プッ!」


 質問に答えてくれるようだ。

 早速、携帯電話のメモアプリを起動する。





「まず、君はこの”始まりの森”の住人ということで合っていますか?」

「プッ!」

「なるほど、Yesと。では次に、君の種族はレプスですか?」

「プッ!」

「わかりました。次、君は魔物ですか?」

「ブーッ!」

「お?」


 これまでYesだった返事とは、異なった音だ。Noという意味だろうか。

 しかし、アプリでは確かに魔物図鑑と記載されていたのだが。


「ん~、では質問を変えましょう。

 この世界の魔物とは、主に害獣という意味でしょうか?」

「プッ!」


 即答。


「はは~。君は、あくまでも害獣ではない、と言うのですか?」

「プッ!」

「(確かに”神鳥”は邪神ないのなら、普通に偉い存在ですよね)では、君は妖精エントと神鳥シームルグの血をひいていますね?」

「プッ!」


 質問を続け、聞ける範囲のことを聞いく。

 質問は終盤に差し掛かる。


「はい、質問も残り2つです。今後、私の元から去るという選択肢はありますか?」

「ブッ!? ブ~~ッ!」

「わ! こら! いきなりどうしたのですか! 別に離れてほしいな~、とかいない方が楽だな~、なんて考えていませんから、足から離れなさいっ」

「……ブー……」

「はぁ。冗談ですよ、冗談。アメリカンジョークです。そんな、こいつ絶対思ってた、みたいな目で見ないでください。

 こんな利用価値のあ、う”ん、使いパシ、ゴホンッ。え~、愛くるしい兎を捨てようなんて良心が痛むでしょう」

「……」

「私自身、いきなりこんな森の中にいて、正直心細かったのですよ。

 一緒にいてくれる仲間がいるのはとても心強いですから、ね? そんな死んだ魚のような目をせずに」

「……」

「本心ですから。質問に答えてくださり、ありがとうございました」


 こうして、全ての質問は終了した。

 メモアプリへの記載もバッチリだ。




 時計を確認すると、丁度AM3:00と表示されていた。


 有意義な内容も聞けたことだし次の報告書を作成しようか、と思ったとき、バイブレーションと共にメールの通知が届く。

 急な胸騒ぎを覚えた。


 開いてみると、差出人は父方の祖父。

 このメールは、私だけでなく、家族・親族、はたまた表裏関係なくその世界では超有名な人達にも送られている。

 メールの本文は、意味の内容に見える羅列が書かれている。


「あ、暗号文ですか。まさか、社長関連ってことはありませんよね? ま、まさかね……?

 うちの家族もそこまでの厚顔無恥じゃぁ……」



 自身の異常なまでの解読術を呪った。


 冬晴つらら様に物集の挿絵を頂きました!

 シリーズに『きゃらいらすと集』として掲載許可を頂けたので、掲載させて頂きます!

 今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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