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才人の才人による凡人のための処世術  作者: 西モコナ
第1回、異世界到達。それは森の中だった。
12/21

襲撃を受けました!

 新年あけまして、おめでとうございます!

 新年初の投稿です。ここから、一層盛り上がって参ります。

 第11回目です。どうぞ良しなに。

 夜。かすかに何者かの気配を感じた。その瞬間、背筋が凍る。

 私は相手に悟られないよう薄っすらと瞼を開いた。


 携帯の仄暗いライトに照らされ、少々斜め上に何か白い塊がある。

 それは、どうやら仰向けに寝ている私の胸部上に乗っているようだ。


(――っ! いつから……? ずっと警戒していましたのに!)


 昨日、昼間には獣姿を一切目撃することはなかったが、もしや夜に活発になる生物もいるのではないかと考え、警戒しながら睡眠を取った。

 この手の技術に関して、幼少期の異常な教育で極めきっている。

 何の油断も慢心もなかった。



 しかし、現実はどうだ! 既にマウントポジションを取られ、危険な状態にあるではないか!


 重さを感じないことから、胸の上に乗っている白い生物は小型の生物であると予測される。

 さらに、雰囲気からふわっとした毛並みを持っているように思う。


 白い生物は、私の上から身じろぎすることなく鎮座している。

 いや。なにか上の部分が微妙に動いている……?



 相手からは敵意を一切感じないので、薄く開いていた瞼をゆっくり、ゆっくり開いていく。

 大きく開いた視界に映ったのは――


(白い……、兎?)


挿絵(By みてみん)



 目に映るのは白い毛の塊と、2つの耳。両耳とも折れている。あと、微妙に耳が動いている。

 それ以外の情報は全く得られない。


(うん? 耳がこちらに向いているので正面なのは確かなはずですけど)


 まず、毛が長すぎて瞳が見えない。

 さらに、毛が長すぎて鼻も見えない。

 しまいには、毛が長すぎて体のシルエットも見えない。


 総じて、毛の塊にしか見えない。


(油断は禁物。耳は兎のようですが、ここは異世界。危険な道の生物かもしれません)



 より詳細な資格情報を得るべく、毛の塊(以下、仮に兎とする)から目をそらさずに携帯電話を手繰り寄せる。

 携帯電話から発される微力なライトも近くから見れば眩しい。


 目をしょぼつかせながらもライトを兎にあてて見る。

 その間の兎の動きは耳以外、全くなし。


(ふむ。やはり、毛しか見えません。目立った動きもしませんし。もしや、眠っている……?)



 ~♪♫~~!


 急に携帯電話から着信音が鳴った。ここ最近に聞いたことのある着信音。しかも大音量だ!


(一体、何ですか!? この携帯電話は! これではっ)


 案の定、眠っているようだった兎がいきなり鳴った着信に驚き、飛び跳ねた!

 兎からは異様な雰囲気を感じる。どうやら怒らせてしまったらしい。


「キーッ! キーキーッ!」

「ッチ! 本当に忌々しい携帯電話ですね!」


 兎の跳ねた距離分は離れているが、私自身も飛び起きさらに距離を取る。

 携帯電話は、昼間とは異なり着信音のくせに絶え間なく流れ続けている。

 メロディーは昼間と同じ。画面にも”新道 物集さんと共有しました”の文が表示されている。



 兎はこちらの様子を伺いつつ、警戒心を解かない。むしろ、徐々に増していっている。

 兎と言えど異世界産の兎だ。何が起こるかは正に未知数。


 私は未知の生命体を前に十分な戦闘態勢を整えることにした。

 良くも悪くも大音量で鳴り続ける携帯電話が手元にある。

 耳の良い兎に、この音は毒に成り得る!


(目くらましならぬ、耳くらましです!)


 今にも飛びつきそうな兎に向かって、右手を振りかぶり――、投げたっ!

 投げられた携帯電話は、綺麗な線を描き兎へ向かう。


「キーーーーーーッ!」


 そのとき、兎も飛び跳ねたっ!

 回避されるか、と戦闘モードに入ろうとしたとき、違和感を抱いた。

 兎が飛び跳ねた、いや、飛びついた先にあるものは――


「え? あ、あぁ! 私の携帯電話が!」


 緊急事態であったが故、命の次に大切な携帯電話すら武器へと転換して見せた。

 だが、始めから私ではなく携帯電話に警戒を表していたのだとすると話は別なのだ!


「あっ!? こらっ! やめてくださいぃーー!」



 夜はまだ深まったばかりである。





 兎との手に汗握る死闘は果たされることなく、時間は過ぎる。

 兎の歯形がついてしまった携帯電話は、現在の時刻をAM1:38と表示している。




 兎が私ではなく携帯電話に飛びついてそれを(かじ)りだし、慌てて奪取してから10分弱。

 相手の警戒心は、携帯電話に噛みつき着信が止んだからか既に解かれている。

 ただ、私の右手に熱視線(瞳は全く見えない)がきているので、興味は津々といったところか。


 この10分弱の時間、ずっと警戒し観察していたが様子に変化はなかった。これでは、警戒損である。

 なんだか、この小さい毛玉に警戒することもばからしくなってしまった。



 兎が警戒する原因となった携帯電話だが、もとはと言えばあの着信音がいけなかったのだ。

 眠っているときに顔の近くから爆音が鳴れば、どんな動物だってそれこそ人間だって不快に思うことだろう。

 あまりに警戒し過ぎていたのかもしれない。



 今見ている画面には、先ほど見た共有の文字はなく、既に謎のアプリが増えているという結果だった。

 着信音が消えたのは、齧られたせいなのかインストールが完了したからなのか。


「はぁ~。また、アプリですか。今度は”Monster Tamer(MT)”。安直で訳せば、”怪物使い”となるわけですが……。

 この場合は、”魔物使い”でしょうか? 異世界ですし……。”Animal”ではない、ということですよね」


 未だ熱視線で訴えかけてくる白い毛玉を見た。

 動きに変化はないようだ。



 変な起き方をしたせいか眠気も飛んでしまったし、反対に眠かったとしても毛玉を放置して熟睡できやしない。

 よって、昨日に引き続き正体不明の共有が起きたので、原因の究明に取り掛かることにした。




 先にMTのアプリを起動してみる。

 これは、毛玉を観察している最中に共有された忌ま忌ましいアプリである。

 起動することで変な請求がくる、なんてこともなく普通に起動した。

 中を見てみると、様々な項目が存在している。


(なになに……。第1回異世界図鑑?

 項目は、発見した魔物、テイムした魔物、発見した妖精、テイムした妖精、発見した聖獣、テイムした聖獣etc.と。

 項目だけで50近くあります。どれも最後尾に(0)となっていますね。

 おや? 1つ(1)となっています。これはタッチすると開くのでしょうか?)


 発見した混合獣の項目の最後尾が(1)と表示されていた。

 ものは試しとタッチしてみる。


「おぉ!」

「ブッ!」

「えっ!?」

「ブー!」

「あ、あぁ。すみません」


 思わず口をついてしまった感嘆の声に、毛玉の不満げな声が飛んできた。

 毛玉は私の急な声に驚いたようだ。


(私も驚かされましたよ。この兎、やけに人なれした態度を取りますね。この世界の兎はみんな、こうなのでしょうか?)



 タッチすると新しい画面へと切り変わった。


(開きましたね)


 開いてみると、さらに項目がずらずらと並んでいる。

 生物の種族名や画像、分布地図、分布土地名、身長、体重、特性、寿命などプロフィールのようである。


(この毛玉、写真とそっくりですね。同じ生き物でしょうか。種族名はレプス。分布土地名は”始まりの森”? つまり、ここは始まりの森と言う場所なんですね)



 このアプリが一体何者から共有されたものなのか。携帯電話で調べても手掛かりは掴めなかった。

 しかし、ただのイタズラや乗っ取りではないことは確かであった。


 新キャラ①は兎です。が、今後の展開次第では……?

 異世界感がここから深くなって参ります!


 見てくださっている&待ってくださっている&ブックマーク・お気に入りをしてくださっている方々、誠にありがとうございます!

 今後も皆さまの応援を励みとし、日々精進して参りたい所存です!

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