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第1章
夕暮れの空に落ちる霞んだ太陽。
吸い込まれるように私は足を運ばせた。
浜辺の砂を踏みしめ歩く足は弱々しい。
気づけば濁った海は肢体を汚し、恍惚とした目は霧のかかった陽を見据える。
やがて、迫る海の波は足をすくわせた。
視界は遮られ、無尽蔵の闇へと落ち込んでいったその中で、私は視線を感じる。
暗澹とした大海の中で私を見据える者。
それは...
「ゲホッゲホッゲホッ」
「大丈夫あんた(笑)? この前も咳き込んでたわよ」
やけに明るい彼女と灯りは古汚い定食屋と彼女の醜態を露呈させた。
それからもキリキリとした彼女の声は鳴り止まず、空疎な会話は続けられた。
しばらくして飽きたのか、彼女から店を出ようと提案された。
私はそれを許諾し、いつの間にか自宅の前へと私は1人佇んでいた。