第1章 1
静かな夜だ。
目の前には明かりの切れたランプがぶら下っている。
私はどうやら仰向けに寝ているらしい。
ギギギと軋む身体を起こし辺りを見てみる。
光源がほぼ無い為、どうにか確認できる程度だが、
砕けた椅子、穴の開いた壁、埃のかぶった絨毯。
物凄い広い部屋だが、物が散らかり過ぎている。
例えるならそう、大きな爆発が起きた後の部屋の中といった具合だ。
不思議な部屋だ、なぜこんなところに俺がいるのか。
そういえば俺は一体何者なのか?
・・・全く思い出せない、が、特に不安がない。
普通記憶が無いのなら慌てふためくものだと思うが、あまりに落ち着いている。
理由はわからないが多分それが正しいのだと思うことにして、ギギと軋む身体で立ち上がる。
「ギギ?」
身体を見てみるとそこにあるのはボロボロのローブと、その袖からはみ出ている白い骨だ。
よく見たら身体中全てむき出しの骨で構成されていた。
-アンデッド-
自身がアンデッドだということは理解できた。
死して尚生きるものの総称であり、スケルトン系の魔物に属していることも。
「そうだったっけ・・?」
確かめようも無い答えはついぞ出ず、納得するしかないのだ。
とりあえず周りを散策しよう、何か記憶が戻る物もあるかもしれないし。
何より、仲間と会えるかもしれない。
大きな部屋を出るとこれまた大きな廊下があった。
「酷い有様だな・・・」
自分と同じような白骨死体が多くあったが、自分と同じように動き出すことはないと悟った。
自身がそうだからか、それが完全なる死体なのか、動き出すアンデッドなのかがわかるのだ。
間違いなくここは何か施設の戦場跡だろう。
ある程度歩き回ったがこの階は恐らく最上層だ。
なぜなら下り階段はあっても上り階段がないからだ。
特に見るべきものもないので、俺は階段を降りることにした。
主人公はアンデッドです