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けるびむ日記  作者: ける&てと
少年ユールとフィリアの街
6/7

第6話 ゴブリンの王

ショタって良いですよね

ん?私はショタコンではありませんよ、やだなぁ

第6話 ゴブリンの王


【ジギリタス大森林 ゴブリンの巣】


「うわっと!」


飛んでくる剣、矢、魔法を捌き、撃ち落とし、避けて体勢を整える


「いきなりは酷いじゃないか」


と言うも通じていないご様子

ならば…、とスキルショートカットからアイコンを2つ選択すると身体が赤色と紫色の2つの光に包まれた


赤い光はスキル『戦鬼顕現』のエフェクト、効果は『与えたダメージ分だけステータスが上昇する』

紫の光はスキル『双姫顕現』のエフェクト、効果は『スキル使用開始からダメージを受けるまでステータスが上昇し続ける』


この2つは装備スキル、つまり装備しているアイテムによって使用可能になるスキルである

前者は戦鬼シリーズの装備から、後者はローブの下に着込んでいる『武闘姫の戦装束』と『舞踏姫の装飾』からのスキルであり、一線級の装備だけあって性能は凄まじい


最後にもう1つ、スキルを発動する

『信仰結界』の白いベールが身体を覆う

効果は『一定時間、一定以下のダメージを無効化する』であり、『双姫顕現』との相性が抜群に良い


「おっと、忘れてた」


もう1つ、スキル『手加減』を発動する

…これは裏技というか、知っておけば得な事なのだが、ゴブリンの中で魔法攻撃を行うのはゴブリンマジシャンやその派生進化種のみなのだが、ダメージを負ったゴブリンが居るとゴブリンマジシャン達は回復に専念して魔法攻撃をあまり撃ってこなくなるのだ


確かにゲームとこちらでは勝手が違うかもしれないが、試してみる価値はあると思う


「じゃあいくぞ」


ミッションスタートだ

両の拳を打ち付け気を奮い立たせると、地面を一蹴り、ゴブリンの群れに突っ込んだ



………



side:幼きゴブリンの王


目の前で何が起こっているのか、我には理解ができなかった

堅固な、オークの石鎚であっても耐えてみせる城壁の一角が突如吹き飛び、そこから現れた1人の人間は、たったの1人で我らゴブリンを圧倒していた


その拳が、足が振るわれるたびに地面は裂け、木々が倒れ、そしてゴブリン達が数匹纏めて吹き飛ばされていく


ほんの少し前、偵察に出していた配下達の反応が突如消えた事から、他に偵察に出していたゴブリン達を全員呼び戻したことが災いした


このままでは我らの血が絶えてしまう

我の使命は何か?それは他種族への侵攻…などでは無く、血の存続にある…と考えている


とりあえず何人かを逃がそうと思うも、戦士達が全員地に沈む方が早そうである…


「くっ!」


脇に置いてあった剣、馬すら叩き切れそうな大剣を片手で掴み上げると王の証である仮面を被り


「我が相手だっ!」


暴虐の限りを尽くす人間に飛びかからんと戦場に躍り出る


この中で我が一番強い

魔物の王ってそういうものだ


一気に駆け寄り、大剣を振り下ろす!!



………



side:ケルビム


「我が相手だっ!」


聞こえてきた突然の流暢な人語に驚き、振り返ると


「っ!」


大剣が目の前まで迫ってきていた

反射的に大剣の側面に拳を叩き込み剣の軌道を上方に逸らす

その大剣にの重さに辟易としながら、その持ち主の方を見る


小柄な身体を薄汚いローブで覆い、その身体に見合わないバカでかい大剣

顔には狩猟民族とかが着けてそうな仮面

その顔に装着した仮面、確かあれは…

ゴブリンキングの着けていた仮面と似ている気がするな…


「お前さんが王かい?」


だが、確証は得られなかった

…だって、目の前にいるゴブリンは…小さすぎる


ゲームの中のゴブリンキングは普通のゴブリンより一回り二回り大きかったはずだ

…だが、目の前のゴブリンはノーマルの【ゴブリン】程でしか


しかし…


「いかにも、我が王だ!我がいる限りみんなに手は出させん!」


少し高めの、しかし覇気の込められた声で名乗りを上げたゴブリンは大剣を構え…


再度、突撃


その大剣にもろに当たれば『信仰結界』が破られ、『双姫顕現』の効果が切れることは必須

それだけの威力がその大剣、斬撃には込められていた


大剣に拳を当てやり過ごす


拳に纏った手甲と王の持つ大剣が交錯し、凄まじい音と衝撃を辺りに撒き散らす


その衝撃は周りのゴブリン達を吹き飛ばす程の強さであり…


「くっ!お前達は森に逃げろっ!」


ゴブリンキングは仲間を呼ぶどころか、仲間達を逃すことに専念し始めた


…やはり、ゲームとは違うようだ


このゴブリンキングは仲間思いであり…


「出来ませン!我らの替えは幾らでもおりまス!あなたの替えはおりませン!」


ゴブリン達の中から上位種らしきゴブリンが言い返すその言葉には、確かな忠誠心が込められていた


だが…非情かもしれないが…それは隙だぞ


『縮地法』を使い、一瞬でよそ見をしていたキングの懐に入り込むと手刀で大剣の柄を強打する


「なっ」


大剣が手からこぼれ落ち、それを拾い上げようとしたキングの胸ぐらを掴み上げ宙に浮かせ…

そのまま地面に叩きつけた


「かはっ!」


キングの背中が、地面に蜘蛛の巣状のひびを拵えた

動きを止めたキングを持ち上げる


直後、クンッと跳ね上がったキングの足が横薙ぎに私を襲う


自動迎撃(オートカウンター)』発動


次の瞬間、キングの足は空を蹴り、私の拳がキングの顔を射抜いた


確かな重みと共にキングは吹っ飛び、背中から木に激突、その根本に落ちる


「王よ!」


その言葉と共に周りのゴブリン達が襲いかかってくるが、無視する


この程度の攻撃では『信仰結界』を破れない、そう判断してのことだ


「…やめろ…」


か細く、しかし威厳に満ちた声

キングが背中を木に預け、こちらを、周りを囲むゴブリン達を見つめていた


「…お前達は逃げろ」

「しかしっ」

「逃げろと言っているっ!これは王命だ!!」


そして、こちらを見て


「強き者よ、命散らすのは我だけで勘弁してくれないか?」


それは懇願、弱々しく言われたそれを払いのける程私も鬼では…ない


「逃げる者に手は出さないよ」


そう言い、私はキングに近づいていく


「そうか…良かった…」


消え入るような声で呟くキング

後ろのゴブリン達は渋々、逃散することにしたようだ

やがて気配が無くなり、そこに居るのは私とキングだけになった


「見逃してくれてありがとう、と我が言うのはおかしいか?」


力なくそう言いながらこちらを仰ぎ見るキング…


その表情を…顔をみて私は言葉を失った


キングが着けていた仮面は先ほどの『自動迎撃(オートカウンター)』で粉砕したので、顔が見えるようになったわけだが…


髪の毛は木漏れ日を浴びて艶やかに光る銀色

肌はゴブリン達のようなくすみ黒ずんだ緑色ではなく、透明感のある綺麗な緑色だった


その表情は凛々しくもあり、まだ幼さを感じさせるもの


(キング)というより…王子(プリンス)だな…


あまりの美少年っぷりに、である


……いやいや、先程まで殺しあっていた相手だぞ!

だめだだめだ、同情なんて…


いきなり動きを止めたからだろう、不思議そうに私を見上げるキング…

…その髪はとても撫で心地が良さそうで…


気がつけばキングの頭の上に手を置いていた…というか撫でていた

どうやら私は我慢できなかったようだ


「え?」


突然の私の行動に驚いているキング


時間が止まる


……撫で撫で……


「な、な、な、撫でるなぁっ!」


突如、思い出したように私の腕を払いのけるキング


綺麗な緑色の肌を上気させ…恥ずかしがってる?


(やべぇ、可愛い)


と思ってしまったのも無理ないだろう

だって可愛いんだもの


さて、どうしようか、と考える

殺すのは論外


目の前で『あわわわゎ』と恥ずかしさからか、手を振り回してる美少年…いや、美ゴブリン?を見ているとそんな事出来るはずもないし、しようとも思わない


さりとて、見逃したところですぐにフィリアの街から討伐隊が来るだろう


この世界の人間がどれぐらい強いかはわからないが、50人近くの冒険者達の侵攻を止められるとは思えない


…配下は逃げ散ったし…

…城壁に風穴開けたし…


「どど、ど、どうした人間!早く殺せばいいだろっ!?」

「いや、それはしない」


キングの決意を粉砕する

というかキング、涙目である

私を萌え殺そうとする策略だろうか?


「何故だ!情けのつもりか!?」

「いや、情けも掛けない」

「じゃ、じゃあ何を望む!?」


そう、私が望む、一番の解決策は…


「お前さん、私の『使い(ペット)』にならないか?」

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