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けるびむ日記  作者: ける&てと
少年ユールとフィリアの街
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第5話 ユール君のお師匠さん

文才って大事ですよね(切実

第5話 ユール君のお師匠さん



【フィリアの街 冒険者ギルド】


「ユール、遅かったじゃねぇか」

「し、師匠っ」


冒険者ギルドの扉をくぐった先でだるそうなおっちゃんに声を掛けられた…って師匠!?


「…この人が僕の錬金術の師匠、オウスです…」


ユール君が目の前の男を紹介してくれた

どうやらこのおじさんがユール君の師匠さんらしい

…というかユール君、先生を呼び捨てに…


「おいバカ弟子、せめて『さん』ぐらいつけろよ…」


ですよね…どんまいです、オウスさん


「…ケルビムさん、下ろしてください」


と言われ、ユール君を地面に立たせる


「おっと」


ぐらりとユール君の身体が揺れたので後ろから肩を支えてあげたのだが


「ケルビムさん、もう大丈夫です」

「…そうかい?」


ユール君に言われ、しぶしぶ手を離す

ユール君は師匠、オウスさんを一瞬見上げ、びゅっ、と音が聞こえそうなぐらいの速度で頭を下げた


「師匠、言いつけを守らずに森に行っ『ゴッ』


鈍い音が建物内に響き渡る


「っーーーー!?」


ユール君が頭を押さえて膝をついた

…うわぁ、いったそ…


「バカ弟子、別に言いつけを破ったことなんざ怒っちゃいねぇ、俺なんか先生の言いつけを守ったことの方が少なねぇしな」


それはどうかと思うぞ、オウスさん


「だがな、自分の命を捨てる行為は一番阿保がやることだ…今後は控えろよ?」


あぁ、なんて素敵な師弟愛…


「けど!患者様の病気を治すには珍しい薬草が!」

「お前は採ってこれたのか?」

「っ…」

「そういうこった、身の丈に合わない仕事は自分を殺すだけで誰も救えねぇ…

それにな、俺だって馬鹿じゃねぇぞ?ストックぐらい置いてある」

「…けど師匠は無いって言ってましたよ?」


オウスさんが一瞬口ごもる


「…有ったんだよ」

「師匠、ストックの確認は欠かさずにって前言いましたよね?僕が」

「あ、ああ」

「また散らかしてて見つからなかったんですか?」


お、形勢逆転してないか、これ…


「あんだけ片付けてくださいと毎晩のように言ってますよね?」

「お、おぅ」


ユール君、もうやめたげて!オウスさんのライフはもうゼロよ!


「と、ところでそっちの白ローブは誰なんだ?」


オウスさんのあからさまな話題転換である


「こちらはケルビムさん、僕を助けてくれた人です」

「そうかそうか!いやケルビムさん、うちのバカ弟子がお世話になったな」

「いえ…」


オウスさんが手を差し出してきたので、こちらからも握り返す

こちらを見るオウスさんの目が一瞬光ったように感じたが…気のせいかな?


「師匠、片付けの話がまだ途中…」


「おいユール、他にもっと大事なことがあるだろう」


見かねて門番さん達が間に入ってきた


「あっ!」

「何だ何だ?何かあったのか?」


片付けとは違う話題に全力で乗っかろうとするオウスさん


「ゴブリンの王が現れたかもしれないんです!」


そのユール君の言葉にオウスさんは顎に手を当ててしばし考え込む様子を見せ、一言…


「………はぁ!?」



………



ギルドの中は50人ほどの冒険者で混み合っていた


話題の中心は勿論ゴブリンキングのこと


やはり、かなりの大問題らしく『下手すれば国が絡んでくるぞ!』と冒険者達は不安げな表情である


あの後、私とユール君は森であったこと(ゴブリンソルジャーの容姿、発言など)を根掘り葉掘り聞かれた


その後の詳しい話は私達にはわからず、部屋の隅で放置をくらっているのだが…


ユール君は先ほどの疲れからか、机に突っ伏し眠りこけていた


私は冒険者達の話を聞き流しつつポーチの中からあるアイテムを取り出す


(お、流石はオートマッピング)


取り出したアイテムはお馴染み『マップ』である

その紙上にはジギリタス大森林からフィリアの街までの道中だけが書き込まれていた

現在地のフィリアの街には青い光点も

オートマッピングはこっちでも健在のようだ


(これがあればジギリタス大森林に行けるな…)


今、私が考えていることはというと…ゴブリンキングのソロ討伐である


…え?バトルジャンキー?戦闘狂?


よせやい、そんなに褒めるな


…ただ、この身体のスペックを確かめたかったのだ…

その点ゴブリンキングなら相手にとって不足ではない…筈だ

私はそんなに血の気の多い女ではない…と思うのだが先ほどから無性に刃を…拳を交えたくて仕方がないのだ

きっとこのcherubim(ケルビム)の身体のせいかな?


と、1人で考察しつつ、気晴らしにユール君の寝顔を眺める


…ユール君の髪の毛はcherubim(ケルビム)と同じく金髪で、しかしふわふわとしていて柔らかいな…とユール君の頭を撫でながら評論する


…めっちゃ撫で心地いいな…


(…さて、行くか…)


名残惜しいがユール君の頭から手を離す

立ち上がり、ローブの裾を正すと


「ユール君、いってきます」


と声をかけ、私は冒険者ギルドを後にした



………



side:オウス


白ローブの女、ケルビムがギルドから出ていった

誰にも気づかれていない所を見ると、どうやら『隠密(ステルス)』系の技能(スキル)を使用していたのだろう


まぁ、俺の特殊技能(オリジナルスキル)『見通す(ファザム・アイ)』には意味無いんだが…


この技能(スキル)『見通す(ファザム・アイ)』の効果は『隠密系スキルの看破』『物の状態や成分がわかる』…それともう1つ、公言していない能力が『相手の位階(レベル)がわかる』の3つである


3個目は正直言うとかなりズルい能力である

位階(レベル)はそのまま強さに直結しているからである

普通は教会に行き神託を聞くか、その手のスキルを所持している人に聞かなければわからない情報がその場でわかる…

自分で言うのもなんだが…相当ズルい…


ま、まぁそれでケルビムのことも見てみたわけなんだが…


(…化け物…)


なんと、ケルビムの位階(レベル)は120だったのだ!


100を超えれば超越者と言われ、確認されている超越者はたったの4人(公言していない奴もいるだろうが…それでもそんなには居ないだろう)

最高位階(レベル)の『賢者』の婆さんが先月、107になったばかり…


あの若さで120は異常である…まぁ、フードが邪魔で顔を見れていないので実は老齢だったりするのかもしれないが


……とりあえず、見なかったことにしよう…

位階(レベル)が120?何のことかさっぱりわからんな、と記憶を追いやりゴブリンキングについて話していた冒険者達の方に意識を集中する


ヤバそうなことに関与しない、が俺のモットーだからな


…ん?ゴブリンキングはヤバくないのか、って?


位階(レベル)120よりかはマシだと思うぜ?



………


【ジギリタス大森林 深部】


side:ケルビム


ヤバい奴、もといケルビムは背中から翼を生やして森の上空を飛行していた


スキル『信仰の(ブレス・ウィング)』はMP(マジックポイント)がある限り空を飛行出来る素敵な魔法である


最初は普通に歩いてキングを捜索していたのだが、ゴブリン一匹見つからない所か、落とし穴に嵌る(しかも数回)という状況に堪忍袋の緒を切らし、とりあえず飛ぶことにしたのだ


スィーと空を滑ること数分、森の中に人工物的な壁、城壁らしき物が現れた

いや…話の通りだとすると…ゴブ工物か…


(話を聞き想像していた物より遥かに質が高いぞ…)

てっきり木の柵にテントの城かと思っていたのだが…

掘まで掘ってあり、なかなか見事な城壁っぷりである


とりあえずスキルを止め、地面に降り立つ

使用したMPは5%にも満たない程、すぐに自然回復で元通り、といった消費量である


(さてと…)


マップを取り出し城壁の位置にマーカーでチェックを入れる


そして

(『敵性感知(エネミーサーチ)』)

を行使すると、マップ上に赤い点が現れる


その赤い点は敵性魔物の位置を示すもので、今の場合だとまだマッピングが済んでいない、つまりは城壁の向こう側に固まっていた


(結構数が少ないな…)


見たところ、赤い点は百数個ぐらいだろうか?

ゲームでは倒すまでに数百匹は出てきたぞ…と思い出しながら城壁へと足を進める


そして、後城壁まで30メートル程か?といった所で足を止める

ここから先は木が少ないのでもし見張り役がいるとしたらバレてしまうだろう

そしてあんな城壁を造れるのだ、見張り役を立てない程、阿保ではないだろう

じゃあ『隠密(ステルス)』使えよ、って話なんだが…面倒くさいし…ここからお邪魔することにした


じゃあどうするのかって?

そりゃあもう


突っ込むしかないだろう?


スキルショートカットから『縮地法』を選択

地面を蹴る


直後、目の前にまで迫る城壁に拳を叩きつけた


破砕音 衝撃

城壁の一角が儚く崩れ落ちる


城壁に空いた、風通しの良い大穴から見えるのは唖然とした表情のゴブリン達


穴から中に侵入し、ゴブリン達に声を掛けた

「やぁ、諸君!君らの王様は何処だい?」、と…


返ってきた返事は刃と矢、魔法という物騒極まりない物だった


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