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けるびむ日記  作者: ける&てと
少年ユールとフィリアの街
3/7

第3話 …か、可愛いぞこいつめ…

文才ぇ…

第3話 …か、可愛いぞこいつめ…




【ジギリタス大森林:外縁部】



side:cherubim(ケルビム)



「や、やあ少年、ここがどこだか分かるかい?」


とりあえず、目の前の、未だに尻餅をついている少年に質問する


「こ、ここはジギリタス大森林です」


「んー…あー…なるほどね…」


ジギリタス森林ならゲームの中のエリアに存在したんだが…と周りを見渡すが、ジギリタス森林はここまで大きな巨樹が林立する場所ではなかったような気がする…

まぁ、ゲームのグラフィックの問題なので良くわからないが


「少年、近くに街はあるかい?」


再度、質問


「ぼ、僕は森近郊のフィリアから来ました」


「んー…なるほど…」


そんな街は知らん…

ゲームの中…と一瞬思ったのだが、どうなのだろう?


テンプレの『ゲーム世界からうん百年経ってます』的な感じだろうか?


「少年、」

「ユールです!」

「ん?」


「僕の名前、ユールって言います…少年じゃなくて…」


びくびくしながらもキッパリと言いきる少年…じゃなくてユール

その背伸びした感じが可愛い…ではなくて


「あぁ、すまなかった、ユール君

自己紹介もまだだったね…」


ぱっぱっと居住まいを正すと尻餅をついたユール君に手を差し出す


「私の名前は…ケルビム、よろしくね」


「ユ、ユールです、助けてくださってありがとうございました」


と手を取りながら応答してくるユール君…

しかし


「…いっ!」


と地面に倒れてしまう


「だ、大丈夫かい!?」

「すいません、足を挫いてしまっていて…」


と左足をさするユール君

我慢して強がっているようだが、涙目なところを見るとかなり痛がっていることが分かる


「ちょいとごめんよ」

「いたいっ!」


とユール君の靴を脱がせ、ズボンをたくし上げる

細っこくて骨ばった、白い足が晒け出される


おおぅ、見事に紫色に腫れ上がってらっしゃる…


足首の外側がぷくりと膨らみ、変色していた

先ほど靴を脱がせた時もさぞかし痛かったことだろう


か、回復魔法で治るかな?


と杖を取り出そうとして…


「メニューが無いからポーチが開けないぞ…」


…かなり重大な問題に気がつく


ポーチの中の膨大な量のアイテムは何処へ…


「ポ、ポーチ!」


叫ぶ


何も出ない


「アイテムボックス!」


叫ぶ


何も出ない


…ユール君の心配そうな顔が心にくるな…


がっくりと、うな垂れたその視界に見慣れぬ物体が入ってくる


腰にぶら下がった……ポーチ!


パチリとポーチを開けて、手を突っ込むと頭の中に取り出せるアイテムの一覧のようなリストが浮かぶ


「おぉ…えっと……これこれ」


頭の中で選択しズボッと目的の物を取り出した


白く長い柄に金色の装飾が施された杖


明らかにポーチより大きい杖が飛び出してきたことに驚きながらも、自分より更に驚きが大きい様子のユール君の顔を眺める


「足を見せてごらん」


と言うと、素直に足をこちらに差し出してくる


…スキルはどうやって使うんだ?と思っていると、スキルショートカット、いつもはパソコンの画面の端にあったソレが頭の中に浮かび上がってきた


その中から緑色の十字架が書かれたショートカットアイコンを選択、対象を少年の足にして発動させると、杖が突然、緑色の光を纏い、その光はユール君の身体全体に覆いかぶさる様に包み込んでいく


光が収まった頃にはユール君の左足首の腫れは完全に治っていた


「し、神官様でしたか?」


と、ユール君が驚いていたので


「バトルシスターだよ」


とりあえず、ゲーム中のケルビムの職業を教えておいた


「さっ、これで立てるかい?」


少年の身体を引き上げ、立たせたのだが…


「あ…」


少年の身体がぐらりと揺れ、倒れこみ、ぼふっ、と私の白ローブに突っ込んできた


「あ、あ、ご、ごめんなさい!」


と言いつつも動けない様で、とりあえず支えてやる


…これは…ゲームに当てはめると、HP回復してもスタミナは回復しない…という現象

少年のスタミナはおそらく枯渇しており、自力では動けない状態なのだろう


白ローブにしがみつきながら、今にも寝入りそうなユール君の頭を、柔らかい髪を梳きながら考える


ユール君無しで、その、フィリアの街とやらに辿り着けるか…答えは否、である


「よっと」

「!!!」


片手をユール君の膝裏に、もう片手を背中に差し入れ持ち上げる…いわゆるお姫様抱っこを敢行する


「け、け、ケ、ケルビムさん!」

「ユール君が1人で歩けるなら下ろしたげるよ?」

「うっ……」


顔を真っ赤にしながらもおし黙る

眠気は飛んでいったようで何よりである


「さ、街まで道案内してくれたまえよ」


「…はい……けど、何か道標がないと…」

「しっかり捕まっててね」

「?」


上に太い枝が無いことを確認すると、全力で地を蹴る

ぐんっ、と重力の枷に捕らわれる感覚を味わいながらの大跳躍


身体は木々や枝葉を突き抜け、中空へと躍り出る


「………!!!」


声すら出せずに、先程恥ずかしがっていたとは思えない程の強さでしがみついてくるユール君…


不謹慎にも

(か、可愛いぞこの子…)

と思っているのもつかの間、身体の上昇が止まり落下が始まる


しがみつく手の強さが少し強くなる


ユール君に枝葉が当たらないように自身の身体を下にしての落下、着地寸前に身体を振り、両足から着地


ユール君に衝撃を通さないように膝で衝撃を殺す


「……なんか見えた?」


カタカタ震えながら白ローブにしがみつくユール君に聞く


「……もっかい…飛ぶ?」


びっ、とユール君の腕が跳ね上がり、一方向を指す


「ふぃ、フィリアの街はあっちです!だからもう飛ばなくても平気です!」


「本当に?」

「本当です!」


ユール君が顔をぶんぶんと縦に振りながら肯定して来る


「分かったよ、もう飛ばないよ」


ユール君の指した方向に足を進める


「…飛ぶ前に『飛ぶよ?』ぐらい言ってくれても良いじゃないですか…」


(…か、可愛いぞこいつめ…)


と、不謹慎な事を考えながら森を後にした

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