第1話 プロローグ
書き始めました…駄作ですが、読んでくださいましたら恐悦至極にございまして頭が振り切れそうでございます…
第1話 プロローグ
【ある部屋】
……カシャカシャカシャ……
薄暗い部屋にキーボードを叩く音だけが響き渡る
部屋を薄っすらと照らすパソコンの画面
その中には巨大なボスを前に1人のキャラクターが走り回っている様子が映っていた
スキルが飛び交い、時折画面が眩しく光る
その画面を睨めつけながらキーボードを叩き続ける1人の女
短くバッサリと切った髪はボサボサに跳ね上がり、目の下には立派な隈がたくわえられている
右目には眼帯、左の前髪をピンでたくし上げどうにか視界を確保している
…女を捨ててるって?
うるさいな、私はこれでも人生エンジョイしてるから良いんだよ
ちゃんと仕事もしてるし
ぴかっ、と画面が光りボスの動きが止まる
別にパソコンがフリーズした訳ではない、ボス討伐時の演出だ
ごごごご、と音をたてながらボスが崩れていく
ファンファーレと同時に画面真ん中を『ミッションクリア!』と言う文字が占拠する
その下に小さく『04:23:14』と表示されていた
現在時刻…ではない
クリアする、つまりは討伐するために掛かった時間である
4時間半…午後11時にミッションを始め、今現在午前の3時半…長い攻防であった
ゲームの全体チャット欄(ゲームをプレイしている全てのプレイヤーに見えるチャット)には、システムメッセージの名の下に
『cherubimがレイドミッション【山に潜む異形:ザパンザ】をクリアしました(参加人数:1名)(生存者数1名)』
と表示されていた
すぐに全体チャットに
『おおぉ!ケルビムさんおめ!』
『1人かよ!ケルさん乙おめ!』
『ザパンザとか…この前踏み潰されたぞ…俺のギルド……ケルさん、おめでとう!』
などと書き込まれていく
その賞賛に満足しつつ
『運が良かっただけだから!そう褒めるな!落ちます!』
と書き込む
全体チャットの愉快な皆様に冷やかされつつ、ゲームからログアウトする
着けていたヘッドフォンをがっ、と外し、脇に置く
耳に戻る静寂
画面に目を戻すと次に画面に出てくるのはキャラクターセレクトの画面
その一番上に表示される『cherubim』の文字を見てにやつく
無課金ながら、寝る間を惜しみ、廃人、廃課金プレイヤーの助けを借り、作り上げたカンストキャラクターである
装備している武装も全てPMの一級品ばかり
当然ながら愛着がある
画面に表示されている『cherubim』の容姿を眺め、満足してゲームを終了しようとした、その時
画面のドット、ポリゴンの一粒がカッ、と輝く
そしてその光は面積をどんどん増していく
「なっ、なにこれ!?」
バグか!?ウイルスか!?データ消えたら敵わんぞ!!
と思いつつもゲームを終了させようと試みるが、操作は出来ず
やがて、光は全画面を覆い尽くし、突如、弾けるように光量を増す
私は目を開けることも叶わずに……
………
【ある部屋】
薄暗い部屋の中には画面がついたままのパソコンが一台、ポツリと佇んでいた
部屋の主の姿はどこにもなく、ただただつけっぱなしのゲームのBGMが地面に放られたヘッドフォンから小さく流れていた
キャラクターセレクトの画面には
『キャラクターデータが存在しません、新しくキャラクターを作成してください』
というメッセージが浮かんでいた