第四話 悲惨な事実
名前を呼ばれた気がして、振り返る。いつもの自室の光景に特に気にせずに顔を戻した。
学校が終わって帰宅し、いつものように家主のいない家で家事をこなした黎果は、自室で勉強をしていた。
そうして教材に集中しどれくらい経っただろうか。不意に、ベッドの方からバイブレーションの音がした。ヘッドボードが収納タイプになっており、その上に置かれたスマホが着信していたのだ。
仕方なく勉強を中断してスマホを確認すると、“黒雫さん”と表示されていた。
「もしもし?」
やや怪訝に思いながら電話に出ると、嫌に深刻な針乘の声が鼓膜を突いた。
「もっしー、黎果たん。突然で申し訳ないんだけど、どうやら急を要すると思うんだ。僕、何気なく未解決事件とかをネット検索したんだけどね? 君のお父上が教えてくれた名前の子っぽい子がさ、死んでるみたいなんだよ」
放たれたのは、心胆を寒からしめる言葉。一気に全身が強張り、スマホをきつく握り締めた。
「死ん、でるっ……?」
「まだ分かんないけど、URL送るから見てみて。取り敢えず僕はもう少し調べてみるけど……黎果たん、大丈夫?」
黎果は針乘の言葉に返事が出来なかった。黎果の寒心に堪えない様子を感じ取ってか、針乘ははっきりとした強い口調で口にする。
「……君は僕が死なせない。絶対に」
通話が切れ、直ぐに針乘からメッセージが届く。アドレスは複数あり、震える指で一番上に記載されているアドレスをタップすると、“高一男子轢断死亡事件”という見出しが飛び込んで来た。
それによると、被害者の男子生徒はいつも使う通学路でもある道路脇の草むらで死亡していたらしい。当初は遺体の状態から轢き逃げによる犯行と見たが、目撃情報が皆無な上に現場からは何一つ発見されなかったことで、“轢き逃げ事故”から“轢断死亡事件”に変更。男子生徒の遺体は、跳ね飛ばされて草むらに落ちた訳でも、別の場所で轢かれて草むらに遺棄された訳でもなかった。
衝突したような音を聞いた人もなく、急ブレーキの跡などもなく。遺体の周りも綺麗で、肉片や血痕なども遺体の下に付着したもの以外は皆無。遺体の損傷はかなり酷く、ミンチ状態と言われる有り様だったにも関わらず、だ。
まるで、全く別の場所で轢かれた遺体が、突然草むらの中に出現したようであったという。
次に書かれていたのは“高二女子轢断死亡事件”で、遺体の状態や現場の状況も先ほど見た男子生徒と兼ね同じだが、なんと女子生徒が発見されたのは自宅の自室だった。それも母親が自宅一階におり、夕飯の支度が出来たからと二階の部屋へ呼びに来てみたら轢断されたような状態で死亡していたというのだ。
他のアドレスの内二つは、日中に学校の廊下で亡くなった高二男子と、自宅の庭で亡くなった高二女子の同じような死亡記事だった。三人目の記事から、同一犯による連続殺人ではないかとする説も上がっている。
最後のアドレスは他の四つのアドレスのサイトとは違うニュースサイトのようで、事件は何れも荊茨県軌鹿市鳴鳥町で起きたものとなっていた。
ニュースサイト故にこれらの被害者の実名も載っており、最初の高一男子が農村小太郎。事件発生が二〇一一年三月下旬だったため学年が上がる前であり、他三人と同学年である。
次の高二女子は船井満里奈。同年の四月半ばに自宅二階の自室で死亡した子だ。
他、同年五月上旬に亡くなった長田冬馬、同年同月下旬に亡くなった土家久仁枝。
四人は仲がよかったということから、警察はこのグループに恨みのある人物の犯行として捜査を進める方針という内容。
当時の記事にはこのように書かれているが、これらの怪死はまだ未解決のままだった。
そう、未解決のままということはつまり……まだ続いているのだ。
書かれている日付を見る限り、彼らは三月下旬から五月下旬に掛けて順番に亡くなっている。そして今は、二〇一一年六月。だから針乘は、急を要すると言ったのだ。
(次は……私の、番…………?)
カチカチと歯が鳴る。恐怖に負けてしまいそうだったが、先ほどの針乘の言葉が脳裏に甦る。
――君は僕が死なせない。絶対に。
彼女の言葉を思い出すと、不思議と震えは最小限まで収まっていた。何故だか針乘の言葉には、魔力のようなものを感じる。任せればなんとかしてくれるだろうと、意思には関係なく思わせる力が。
(そう、だ……。ただ怖がっていても何もならない……。死にたくないのなら、余計に)
僕はもう少し調べてみる、と針乘が言っていたのを思い出す。黎果は取り敢えず、情報を整理することから始めることにした。
先ず、これらは極最近起きた事件。黎果は今回まじまじとネットで見て震撼したが、当然その前から報道されているのを見ていた。ただ、自分を含め順番に狙っているとは思わなかったため、他の多くのニュースと同様に流してしまい頭に残っていなかっただけである。
被害者は父がメールで送って来た、引っ越す前の黎果の“友達”の名前に一致する。たまたま同学年くらいの同姓同名がいる可能性もなくはないが、事件が全て軌鹿市鳴鳥町で起きたということ、四人もの偶然の一致があるかということを考慮しても、先ず呪いの犠牲になったと見て間違いないだろう。
そしてその死に方は、全て轢断。他殺しようにも自殺しようにも事故を起こすにも、轢断されるには車両がいるだろう。最初の農村は兎も角、母親が自宅にいて呼びに来てみたら死亡していた件も、他の人も沢山いるであろう日中に校内で死亡していた件も、そんな状況で轢断は物理的に不可能である。
更に“証拠が乏しい”ではなく、“証拠が皆無”との記載。いくらなんでも全くないというのは、明らかに人間業でないように思える。
実は轢断されたような状態になって死に至る病気だった――というオチであればそれはそれで怖いが、今回は恐らく非科学的な呪いであるのだ。根拠はないに等しいかも知れないが、強いて言えば黎果が見たあの灰色の世界だ。
実際、黎果も針乘が助けてくれなければあのダンプにミンチにされていただろう。その後、遺体はどうなっただろうか。そのまま置き去りであれば現実では失踪ということになるだろうが、有り得ない状況で轢断遺体と化した者もいることから、よもやあの空間で轢断された遺体は現実世界に放り出されるのではなかろうか。
もしそうなら、全ての説明がついてしまう。目撃者が皆無なのも、誰一人として悲鳴の一つも聞かなかったことも、証拠が全く残っていないことも、物理的に不可能な状況も。異空間での殺害ならば、現実で専門家がいくら調べようが分かるはずがない。
そこまで整理して、冷静になった頭でやっと思考が回る。父のメールに記載されていた名前は全部で六人。死亡記事は四人分のもので、あと二人いたはずだ。二人は果たして、生きているのだろうか。
黎果は直ぐにパソコンを立ち上げて、他の二人に関して同じ轢断死亡事件などが起きていないか検索を掛ける。針乘も調べているはずなので、見付からなければ生きているかも知れない。
そうして事件を見漁っている時、ふと思った。
(どうして……)
ズキン、と頭の奥が疼く。
(轢断なの……?)
先ほどより強い痛みが襲う。頭の内側から衝撃を与えられるような痛みに、顔を顰めた。
意味はないかも知れないが、四人を轢断で殺害し、黎果もダンプに轢かれそうになったことを思うと、殺し方にも拘りがあるのではなかろうか。そこに何か呪いのヒントがあるのではなかろうか。
だが、激しくなる頭の痛みに掻き消される。思い出すなという警告のようにも感じ、乗り越えて思い出せという試練のようにも感じた。
思わず頭を抱えて痛みに耐えるも、スマホの着信に顔を上げる。その瞬間、不思議と頭痛は消え失せた。
言うまでもなく針乘からの着信で、黎果は素早く電話に出る。
「どうしましたっ?」
「黎果たん見付かった! 見付かったよ!」
開口一番に言われ、何のことかと一瞬考えてしまったが、答えは直ぐに針乘の口から出た。
「生きてた人がいたわん! 玉中っていう男子! 明日、鳴鳥町に行こう! 彼に逢って直接、話を聞くのよん!」
どうやら、父のメールにあった玉中哲という男子はまだ存命らしい。
今はもう夜で、今日は金曜。明日は丁度、休みに当たる。針乘はどっち道、休みに現地に赴くと決めていたので、絶好のタイミングと言えるだろう。
「ただ、その玉中って男子、異様に怯えてる感じでねん。まぁ、無理もないけど。なーんか隠してる感じがするのよねん……。だから、少し警戒した方がいいかもねぇ」
「分かりました」
それを聞いて、改めて気を引き締める。その男子から何か聞き出せればいいが、無駄足に終われば彼も黎果もむざむざ殺されるだけだ。
今のところ彼らと黎果は、小さい頃に軌鹿市にいたという共通点以外はない。軌鹿市にいた同級生や先輩後輩なら他にも沢山いるのに、何故、黎果たちだけが呪いの対象なのか。はたまた、黎果たちが分かってないだけで他の子も呪いの対象になっているのか。分からないことだらけなのだから。
「その……色々、有難うございます……」
「いいのよん。僕は黎たんのためならなんでもするのよん!」
「でも、もしかして黒雫社長の力だったりします?」
「って、なんで分かったのよ!?」
「別に、使える権力を駆使するのはいいんじゃないでしょうか。私たち一般人と違って、使えるんですから」
「トゲがある!?」
いつもの冷たい話し方に、つまらない突っ込みを受け、黎果は言った。
「……黒雫さん」
「んん?」
「私……本当は、凄く怖いんです。明日……何か起きるんじゃないかって……」
死んでしまったら、この今直ぐゴミに出したくなるような針乘とのつまらない会話の数々でさえ、出来なくなる。
「正直……当事者でないのなら、逃げ出してしまいたい……。私……なんでこんな目に……遭ってるんだろ……」
既に四人も亡くなっているのにそう思ってしまうのは、人の醜い生存本能。自身の弱い心。赤裸々な本音だった。
言っても仕方ないことを言ってしまうのは、きっと針乘が相手だから。そんな甘えにも、針乘は優しい声で接する。
「君が安心出来るまで、何度だって言うよ」
型破りな針乘は、そう言った。
逸脱した針乘は、こう言った。
「君は僕が死なせないよ。何があっても、絶対に」
ああ、と思った。この言葉が聞きたかったのだと。この声が聞きたかったのだと。もう何度でも、聞きたかったのだと。
「……有難う。お休みなさい、黒雫さん」
これ以上甘えていたら泣いてしまうかも知れないので、黎果はそう告げて電話を切った。
それからもう少しだけ調べたが、もう一人の死亡記事らしきものは見当たらなかった。
もしかしたら今こうしている間に起きていて、明日明後日のニュースに載ったりして……など考えていると眠れなくなりそうなので、生きていると信じることにする。
(にしても、目が冴えちゃったな……)
こんな状況下では昂って眠れない。まだそこまで遅い時間ではないが、このままずるずると深夜、朝方まで眠れなかったら明日に支障が出てしまうかも知れない。
黎果は二階にある自室から一階のキッチンへ移動した。取り敢えず冷たいお茶でも飲んで、一息吐こうと思ったのだ。
今時の綺麗な広い家。誰もいない静まり返った室内で、冷蔵庫に冷やされた麦茶を飲んで小さく溜め息を吐く。
何気なく見回した室内で、父の寝室の扉が目に入った。二階にある黎果の部屋の扉には“Reika”と筆記体で彫られたお洒落なプレートが付いているが、その扉にも同じプレートが付いていた。“Father”と彫られたそのプレートを見て、黎果の表情が曇る。
(お父さん……ごめんなさい……)
黎果は明日、針乘と共に軌鹿市へ行く。何があっても行くなという、父との約束を破って。それも卑怯にも、父が海外にいて分からない間に黙って行くのだ。父の稼いだお金を交通費として使用して。最早、罪悪感しかない。
そんな風に胸を痛めていた刹那、思い至る。考え付いてしまう。父は何処かに、幼少時代の記録を残しているのではないかと。
駄目だと言い聞かせるも、懸かっているのは自分と折角まだ生きていた男子の命。
(……確かあっちに……)
あまり頻繁には使わないものなどを纏めて仕舞っている収納スペースがあったはずだと、そちらへ向かう。
足取りは重い。後ろめたさが募る。
だが暫く収納スペースのものを漁り、奥の方から数冊の古びたアルバムを見付けた時は何かに取り憑かれたように引っ張り出していた。
先ず樺色の外装のものを手に取ると、埃っぽい表紙には可愛い動物のキャラクターが描かれ、大きく“そつえんおめでとう”の文字がある。恐らく、黎果が軌鹿市で通っていた幼稚園のアルバムだろう。
中を開くと、一人一人の個人写真が飛び込んで来た。あとに“くん”か“ちゃん”が付いたフルネームがひらがなで載っている。
(ながたとうまくん……。これは、きっと長田くんのことね……)
写真を指で辿りながら、頭の中で名前を復唱する。農村小太郎、船井満里奈、土家久仁枝も見付けた。そして勿論、黎果の写真も。
黎果たちの共通点は、小さい頃に軌鹿市にいたのではなく、小さい頃に軌鹿市の同じ幼稚園にいたということだったのだろうか。
玉中哲ともう一人の子がいないが、恐らく学年違いなのだろう。
次のページを開けると、集合写真だった。卒園式の日に撮られたものらしく、園児たちは胸に造花を付けて綺麗な正装をしている。全員が並んで写る中、黎果の写真だけが右上に編集されて載っていた。
この時にはもう、引っ越していたのだろう。そして卒園アルバムは恐らく、後から郵送か何かで受け取ったとか。
黎果は卒園アルバムを閉じると、次に可愛らしい石竹色の外装のものを取った。
表紙には稀に見る麗筆で“黎果の成長記録”と書かれ、その下に“果弦・黎奈”と記してある。
(お母さん……!!)
果弦、そして黎奈。それは紛れもなく、黎果の両親の名前であった。
父と、殆ど記憶にない母が記した自分の成長記録。黎果は微かに震える手でそれを開いた。
写真はまだ短髪で笑顔を見せる赤ん坊の頃から、七五三の写真など様々だ。その全てに、父と母のコメントがそれぞれ書いてあった。
黎果は幼稚園くらいの頃の写真だけを見てみることにしたが、その中の一枚に目が止まる。
(これ…………この子っ……!)
幼い自分と共に写るその子供に、黎果は仰天した。
男児ものの服と靴に、ツンツンとした短髪。だが女の子と分かる可愛らしい顔立ちをした子供が、黎果と一緒にピースをしていた。
間違えようがない。灰色の異空間で出逢った、そして恐らく悪夢に出て来ている正体でもある、あの子供だ。
コメントには、“笑顔でピースの黎果と優季ちゃん”と記載されている。
(優季ちゃん……)
思わずスマホで父からのメールをもう一度確認すると、確かに優季と書かれている。この子こそ、書かれていた名前の最後の一人だ。
他にも写真がないか見ると、友達との写真はこの優季という子とばかり撮っているようだった。コメントもくまなくチェックしたが、“親友”と記載されているコメントもある。両親に親友と書かれるということは、幼稚園時代この子と一番仲がよかったことは疑いようもない。
だが、黎果は覚えていない。何故、一番仲のよかった親友を忘れるのだろうか。
(灰色の空間にいたってことは、多分この子は亡くなってて……。でも、子供の姿で出て来たってことは……この写真に載ってる年齢くらいの頃に……?)
先ほどからまた激しい頭痛も感じていたが、頭痛を押し退けるように思考を巡らす。
そして――思い出した。
この優季という女の子は……事故に遭って死んだのだ。一瞬だが今はっきりと、葬式に参加した時の光景が甦った。
優季は小さい時に事故で死亡し、そして今回の轢断死亡事件……。ぞわりと、背中が粟立った。
バラバラだったピースが、一つに繋がって行く感覚。だがそれは、まだ不完全なように思えた。
(どうして……私たちが標的にされる……? 自分だけ事故で死んだ無念……? 何か……何か引っ掛かる……)
漠然とした感覚だった。まるで、嵌まりそうな箇所はいくつもあるのに、持ったピースが何処にも嵌まらないような。
(兎に角、この子についてもう少し何か……)
少しだけ散らかしてしまった収納スペースを片付けた黎果は、釈然としない頭を擡げながら部屋に戻った。
そして片手で頭を抱えながら、片手でキーボードを操作する。
先ほどの検索で見付からなかったのは、最近の年代で探していたから。今度は昔の年代の事故の記録を探した。
「あった……!」
事故というと事件より情報が多く、その上昔のこととなると余計に見付かり難いが、なんとか見付かった。
見出しは“小学生女児、踏切内で電車に轢かれ死亡”。
(えっと……。午後二時十五分頃……荊茨県軌鹿市鳴鳥町の踏切で、近くの小学校に通う一年生、世星優季ちゃんが通過する電車に轢かれ、死亡した……? 踏切事故だったんだ……)
警察が防犯カメラを調べたところ、どうやら事故当時、優季の他にも何人か子供がいたらしい。彼らは踏切付近で遊んでいたらしく、優季が踏切内で転倒。頭を打ったのか倒れたまま起き上がれず、近くの子供たちに助けを求めるも、直後に遮断機が下りて電車に轢断されたという。
更に娘を溺愛していた優季の両親も、娘の死に強いショックを受けて自殺しているという記載も見付けた。
……なんとも悲惨な事故だった。倒れたまま起き上がれずとか、近くの子供たちに助けを求めるとか、そういった記載に一層悲惨さが増す。
(助け起こしていれば、優季ちゃんは……)
世星優季が轢断殺害を繰り返す理由は、これではなかろうか。事故当時いた子供たちが玉中たちであり、彼らが助けてくれなかったことを恨んでいるのではなかろうか。
(もし、そうなら……私は……責められない……)
黎果はパソコンをシャットダウンし、重い気持ちで床を見詰めた。
電車という脅威が迫り来る恐怖。周りにも子供たちがいるのに、自分だけ取り残された不条理。助けて貰えなかった無念。況して、まだ小学一年生だ。それらを考えると、誰が責められるだろうか。何を言えるというのだろうか。今の黎果ですら、道路に一人で動けずにダンプが迫って来たあの恐怖は、計り知れなかったのだ。
黎果は、針乘に助けられて生きた。
優季は、誰にも救われずに死んだ。
勿論、黎果だって仕方がないで死にたくなどない。それでも、こんな悲惨な事実を思い出せば死の恐怖より胸の痛みが上回ってしまう。
……これ以上、考えない方がいいかも知れない。
時間が遅くなっていたため、黎果は重い気持ちのまま床に就く。
(ごめんなさい……ごめんね……)
眠りに落ちるまで、黎果は頭の中でずっと世星優季への謝罪を繰り返していた。