ブレイカー
ひょんなことから俺はゴーストブレイカーなど訳の分からない仕事を引き受けちまった。俺はつくづく後悔している。あそこで死んでおけば楽になれた、つまらない人生からおさらば出来たのに。
「で・・・・なんでお前が普通にここに居るんだよ・・・・・」
「心配するな隣人には私の姿は見えん。しかも一人で暮らしておるのだからいいだろ」
あいつはすっかり俺の部屋に居座るようになった。あいつというやつは、俺にしか見えない人間、スペル。人間かは分からないけど。こいつのせいで俺はゴーストブレイカーになっちまった。
「あ~暇だな~」
「なら見回りだ。どこにゴーストがいるかわからんからな」
スペルはユウジの着ていた服の首元を掴みそのまま外へと連れて行かれた。
ユウジとスペルは町の見回りをした。だがこの日はゴーストが見つからず、歩きで消費した体力を回復するために公園で一休みしていた。この日は気温三十度の猛暑日、ユウジは日陰で休んでいた。
「なぁ・・・ゴーストって何なんだよ。俺に分かるように説明してくれないか?」
「ほう、ゴーストと戦うならゴーストの事を知っておかないとならないからな」
スペルはユウジの前に立ち、ゴーストの事について話始めた。
「ゴーストは、この世に二種類、存在している。一つは神が作りしゴーストと地獄が作りしゴーストの二種が存在する。元々ゴーストは、天と地で別れており、けして交わることは無い。だが、ある時を境に二種のゴーストが存在する扉が崩壊をした。はじめは、地獄との間で、ゴーストが暴れたりするだけだった。だが次第に人間の世界へ通じる扉までを破壊し始めたのだ。それを知った我々ゴーストブレイカーは人間界に身を寄せゴーストが人間界に現れたらそれを討伐する。それが私がここに来た理由だ」
ユウジはゴーストの事についていろいろ知った。スペルがなぜこの人間界に来た理由も知った。だがユウジは一つ腑に落ちない事に気がついた。
「でもさ、スペルがここに居るって事は、俺はゴーストをわざわざ倒さなくていいってことだよな?でもなんでスペルは自分じゃなくて俺に戦わせたんだ?」
ユウジの言っていることは正しかった。スペル自身が戦っていれば、もっと多くのゴーストを倒せるし、もっとも最近までごく普通の人間だったユウジがゴーストブレイカー成らなくて済んだはず。
「私は最初、一人でゴーストの討伐をしていた。人間に見られることなく人間に気付かれるこなくゴーストを討伐していた。だが二週間前に私は、何者かに襲われ、気を失っていた。気がつくと体に目立った外傷はなく疲労による幻覚を見たのだろうと思った。だが立ち上がって護身用の剣を出そうとしたとき私は気付いた。」
「どうした?」
「私はブレイカーの力を奪われていたのだ」
ユウジの中ですべてが繋がった。なぜゴーストがこの人間界に現れたか、なぜスペルは自分の力で戦おうとはしなかったのかを。
「私は人間界に来る前にあるリストを発見したんだ。それはユウジ、お前のスキルデータなのだ。」
スペルはユウジに本当の事を明かした。ユウジがゴーストブレイカーとなったかをスペルはユウジに話した。
「じゃあ今のお前は、ゴーストの力を奪われて、ブレイカーの拠点に戻れなくなっているってことか」
「まぁ簡潔に言うとそうなるな。私はお前と出会った時に力を使ってしまってほとんど残っておらんのだ」
「俺と会った時・・・・・って、あの剣をくれた時か」
ユウジは思い出しながら立ち上がり、スペルにこう告げた。
「力が戻るまでは俺の家にいればいい。でも、妙なまねだけはするなよ!いいな?」
「あれは、私のブレイカーの最後の力で出した剣だ。ブレイカーの力が戻るまではきっちり働いてもらうぞ」
へいへいとユウジはそう言うと自分の家まで戻ろうとした。だがその時・・・・
ドカーン!
大きな爆発音が町工場の方から聞こえてきた。ユウジとスペルは音のした町工場の方へと走って向かった。町工場に着くと、そこには光り輝くフェンリルのようなものがそこにはいた。
「あれは・・・天上界のゴースト?なぜこんなところに・・・」
「そんな事はどうでもいいから早く戦うぞ!」
ユウジは戦う体制に入り、腰に手をかけた。
「あれ?ない!剣がない!」
前回の戦闘で剣は光を吸収したあとスペルの腕に吸収されたのをユウジは見ていなかった。だからユウジは剣の出し方が分からなかったのだ。
「ユウジ!前に手をかざして叫ぶんだ!自分で思った事を叫ぶんだ!そうすればお前の思いに応えて剣は出てくる!」
「やってみる!」
ユウジは手をかざし叫んだ。
ユウジはゆっくりと目を閉じ、瞑想を始めた。体の神経を手に移すように瞑想を始めた。
「我が魂に宿りし剣よ 天地を切り裂く飛龍の如く 雷鳴を纏い 我の前に現れよ!」
ユウジがそう叫ぶとユウジの足下が光りそこから、龍が姿を現した。まさに天地を切り裂く雷龍が降臨したかのように。龍は天へと上がると稲妻となりユウジの手へと落ちていった。
「聖剣 雷魂剣」
「あれは・・・雷を纏った龍の魂が剣となって現れた・・・それが、雷魂剣・・・・」
ユウジの手には雷を帯びた龍の形をした剣を持っていた。ユウジは光りの閃光のようにすごいスピードでゴーストに一太刀浴びせた。その光景を見ていたスペルは空いた口が塞がらない状態だった。
「この速さは・・・・信じられん・・・まさかこんなにも早くブレイカーとしての覚醒が始まるなんて、計算外だ。私の見解では恐らく二、三週間かかると思っていたが・・・やはりあの情報は嘘ではなかったのか」
ユウジはゴーストが繰り出す技をすべて避け、一太刀また一太刀とどんどん攻撃を繰り返していくのだった。
「これで決める・・・!」
すると辺りは暗くなりユウジの周りが明るくなり始めた。
「神技 天覇雷龍脚!」
ユウジは目にも止まらぬ速さでゴーストを切りつけた。まるで龍の舞のように。ゴーストはまた光の粒へと変化していった。
「ゴーストよ 我が身の力となれ 霊技 夢想封印」
ユウジは剣を空へと投げ、剣は光の粒となり消えていった。
「これにて、一件落着だな!」
「ああ、言い忘れていたが今回出した剣は剣の名前を唱えるだけでその言葉に応え剣は出てくる。あと一つ、お前の覚醒にはもう少し時間がかかると思っていたが予想よりか早く覚醒が始まってしまってので力を制御出来ず暴走してしまう可能性がある。それは周りの人を巻き込むかもしれん。なので私が常にお前のことを監視する」
ユウジはぼーっとした顔でスペルの話を聞いていた。多分剣の出し方までは理解していると思うがその後の覚醒と力の暴走の事は何も理解してはいないだろう。
「監視ねーだけどよ、明日から始業式だし・・・・学校に来る度まとわり憑かれても困るから俺を監視するのは無理だな」
「そこは私がなんとかして対策を打っておこう。お前の監視は必ずやってみせる」
スペルはそう言うとそのまま真っ直ぐユウジの家へと帰っていった。
翌日の始業式・・・・
「これにて式を終わる。次は各クラスでのホームルームの時間です。生徒は速やかに自分のクラスに移動してください」
学校の三番目に偉そうなやつが指示すると全校生徒は自分のクラスへ移動を開始した。
二年三組
ここが俺のユウジの教室だ。クラスのメンバーは、ジャニヲタやアニヲタ、仮面ライダーヲタクなど色の濃いメンバーが集うクラスだ。まぁ中にはいいやつもいるがな・・・・・ 「ユ・ウ・ジ!」
ユウジに一人の女子生徒がユウジに話しかけてきた。
「ユ、ユキ!今日来てたのかよ・・・・」
彼女の名前は霧雨ユキ。一応俺の彼女でもある。
「あはは、ごめんね!昨日連絡しようと思ってたんだけど、寝ちゃって・・・」
ユキはかわいらしい反面ちょっと抜けているというかちょっと天然なところがある。
「さぁ、みんな席に着いてー!みんなに伝える事があるから!」
うちのクラスの担任は滅多に物事をみんなに発表することは無いが今日はなにかあったのではないだろうかとクラスみんなが思っていた。
「今日から、このクラスに転校生が来ます。喜べよ男子共ー女子だからな!」
クラスの中がなんだかざわついてきた。それはそうだろう。転校生が来るなんてそうそうあり得ない話だからな。
(そういえば、スペルのやついねぇな。あれだけ監視監視言ってたやつがいないなんて、まぁその方が楽なんだけどな)
俺はこの時スペルが学校に着いてきていないことをいいことにすごく浮かれていた。だがその時間はあっという間に終わりを告げるのであった。
「さぁ、入って」
扉が開いた瞬間俺は、驚きのあまり声が出なかった。まさかこんな事で新学期を迎える事になるとは思わなかった。
「初めまして。ヒース・スペルです。よろしくお願いします」
俺は初めて「開いた口が塞がらない」ということわざの意味が分かった気がする。転校生の正体。それはスペルだったんだ。スペルは一礼をすると俺の方を向きながらテレポートで俺に語りかけてきた。
(この姿で常にお前の事を監視してやる。貴様に監視から逃れる道など無い!)
スペルは俺の心にトゲを刺すように語りかけてきた。
「じゃあ、スペルさん。席は・・・・・ユウジくんの隣で!」
「初めまして、これからお願いしますね。ユ・ウ・ジ・く・ん?」
俺にはその挨拶は悪魔の挨拶にしか聞こえなかった。こうして俺の新学期は波乱の展開で幕を開けた。
第2話の投稿です!お気に入りに登録してくれた方もいらっしゃったので内心、ほっとしてます(笑
とりあえず次話は出来るだけ早めに投稿したいと思います!




