1/2
プロローグ
私の住んでいる街にはヒーローが居る。まぁ、子供騙しみたいなアレだ。長ったらしい変身シーンに、大人の事情やその他諸々が詰め込まれたピッチリタイツに滑稽な戦闘。現実世界にもご都合主義というものが持ち込まれ、悪の秘密結社なんてものまで存在している。お陰でこの街の建造物は数日おきに壊れるわ、大騒動が起こるわで迷惑極まりない。私たちが支払う税金は全て修理費へ消えてしまう。この不況でそんな所に金を湯水のように使えるわけもなく、煽りを食らってまさかの解雇通告。晴れてフリーターなるレッテルを張られた身としては非常に腹が立つわけで。あぁ、でも一つだけ朗報がある。次の仕事先が信じられない早さで決まった。給料は良いし、待遇も問題なし。文句なし……と言いたいところだが、まぁそこは現実だ。一つだけ問題があったりする。
安藤琴音、二十五歳。現在の仕事先は悪の秘密結社です。